バックカントリースキーのバックパックを準備しよう
バックパックには、雪崩・ハイク・スキー・予期せぬ場面に備えるアイテムを入れます。行程や技術レベルに合わせて、バックパックのサイズやアイテムを選択しましょう。
バックパックのサイズの選び方
日帰りの行程であれば、だいたい35L~45Lがおすすめ。いろいろなアイテムを詰め込んでしまうと、大きなバックパックが必要となるだけでなく、重量が重くなり、移動中の負担も大きくなります。
行程や内容(単独なのかツアー参加なのか)に合わせて持ち物をセレクトし、それに合ったサイズのバックパックを使用しましょう。
出発前にバックパックの中身を点検しよう
電池残量や機器の破損、必要アイテムが入っているかどうかを確認しましょう。未確認のままだと、現地で必要なときに使用できず、場合によっては命の危険にも繋がります。
とくに、雪崩に巻き込まれてしまった際に使用するアバランチビーコンは、乾電池で動くモデルがほとんど。現地でスイッチを入れたら「動かない!」ということがないよう、必ず確認しましょう。
バックカントリースキーの三種の神器【アバランチギア】
「アバランチギア」と呼ばれる、雪崩の際に雪に埋まった人を捜索するための重要装備があります。ビーコン・スコップ・プローブは「三種の神器」と呼ばれているので覚えておきましょう。それぞれについて、紹介していきます。
アバランチギア①アバランチビーコン
雪崩に巻き込まれてしまった人の位置を特定する際に使用するアイテム。雪崩に巻き込まれたスキーヤーから発信される電波を受信して捜索します。
近年は性能が向上し、機器から発信される信号を受信するためのアンテナが、縦・横・上下に走る「デジタル三本アンテナ」が主流なので覚えておきましょう。
アバランチビーコンは、精度の高い捜索を行うために、最新モデルがおすすめです。「操作がシンプルか」「稼働時間は適切か」「携帯性は高いか」といったポイントに注目して選択しましょう。
アバランチギア②スコップ
雪を掘る際に使用します。バックカントリー用のスコップは、軽量かつ、コンパクトになるモデルが多いです。バックパックの容量に合わせて選びましょう。
アバランチギア③プローブ
雪崩に遭遇し、雪に埋まってしまった人を捜索する際に、雪面に突き刺して使用します。コンパクトに折り畳め、バックパックに収納できるサイズが基本で、最低でも2m以上のものを選びましょう。
素材や長さによって重さが異なりますので、実際に手に取って選ぶのがおすすめです。
登りをより確実に、楽に行うために重要な【ハイク用アイテム】
バックカントリースキーでは、滑るために必ずハイクがあります。ここで体力を消耗しないよう、登りをスムーズに行なうためのアイテムを常備しましょう。
ハイク用アイテム①シール
ハイクの際に、スキー滑走面に取りつけて、後ろに滑らないようにするアイテム。毛の種類はさまざまですが、主に使われているのは「ナイロン」や「モヘア」という素材です。モヘアはアンゴラウサギの毛を指しますが、現在はこれに似せて人工的に作られたものが採用されています。
ハイクに慣れていないスキーヤーは、スキーの乗る位置が定まらず、ハイクの際に後ろに下がる傾向があります。シールを選ぶ際は、グリップ性能を重視したもので、素材はナイロン製、毛は長いもので密度が高いものを選びましょう。
ハイク用アイテム②シール用ワックス
シールに水が入りづらくするためのアイテム。水分量が多く、ベタ雪になりがちな春スキーでは、シール表面が水を含み、スキー滑走面のグリップ力が落ちてしまいます。
ワックスを、シールの毛の部分に直接塗り込み、毛の中に水が染み込みづらくなるようにしましょう。
雪山のコンディションによっては、大きな雪玉がシールの毛の部分につき、ハイクが困難になる場面も。シール用ワックスには、これを防ぐ効果もあります。
スキーヤーを万が一の事故から守る【滑走用アイテム】
より安全にスキーを楽しむために「ゴーグル」「ヘルメット」は必須アイテムです。また、ゴーグルの状態を万全にするためにも、ゴーグルとサングラスはセットで考えましょう。
滑走用アイテム①ゴーグル&サングラス
雪からの照り返しや、枝や木との衝突から目を保護するためにゴーグル、サングラスは大切です。
雪山では、ゴーグルのレンズが割れたり、レンズが曇って使用できなくなったりと、予期せぬことが起こります。ゲレンデであればすぐに代わりのものを用意できますが、バックカントリースキーの場面では、すぐに車などには戻れないため、ゴーグルの予備を持ちましょう。
天候にもよりますが、滑走時以外にゴーグルを使用していると、体の熱気でレンズが曇りやすくなります。ハイクの際は、ゴーグルがくもることを避けるために、サングラスを使用しましょう。
滑走用アイテム②ヘルメット
転倒による衝撃から頭を守るためにヘルメットを装着しましょう。ゲレンデで滑る際も、ヘルメットの使用が一般的になりつつあります。
立ち木が多く、ゲレンデ以上に危険な箇所が多いバックカントリースキーでは、ヘルメットの着用がさらに重要です。実際に被って、しっかりと頭にフィットするものを選びましょう。
バックパックに入れておくと役立つアイテム【番外編】
雪山のなかではどんなことが起こるかわからないため、予期せぬトラブルに対応できる準備が大切です。可能な限りコンパクトに持ち運べ、ひとつでさまざまな用途に使用できるものをリストアップしましょう。
ここでは、あるとよいものを4つ厳選して紹介します。
①テンションストラップ
バックパックにスキーを固定するときや、シールがスキー滑走面に接着しない場合に、スキーとシールを止めるための応急処置として使用します。
そのほかにも、ビンディングのブレーキ部分が凍りつき、上がりきらなかった場合の固定にも使用できるので覚えておきましょう。
両スキーのシール粘着が効かなくなることも想定し、スキーの前後を固定するために最低でも4本は必要です。
②刷毛&スクレーパー
スキーについた雪や氷を取り除くために、刷毛やスクレーパーは持っておきましょう。雪が多い場面が想定されるバックカントリースキーでは、ビンディングに雪がつきやすくなります。スキー装着時の妨げになるので、刷毛で取り除きましょう。
スクレーパーとは、プラスチックの板で、スキーのエッジ部分の氷の除去に必要です。エッジに氷がつくと、ターンをするときにエッジが効かない現象が発生するだけでなく、シールが板に張りつかないといった支障が出てきます。
③ツエルト
低山の日帰り行程でも、雪山では何が起こるかわからないため、非常用簡易テント「ツエルト」を携帯しましょう。緊急時のテントとしての使用はもちろん、急な天候の変化で待機場所として掘る、雪洞(雪の穴)の入口の冷気遮断にも使えます。
④ナルゲンボトル&サーモボトル
プラスチック製のナルゲンボトルは、水分補給用の容器としてだけでなく、行動食の保管にも最適。行動食は、袋や口が閉まるジップロックに入れがちですが、どうしても中で食料が割れてしまいます。ナルゲンボトルに入れれば、そのような心配もなくなるでしょう。
厳しい条件下での使用を想定して開発された「サーモボトル」も欠かせません。特徴は、軽いもので300g以下という軽さと、6時間後でも70℃以上をキープできる高い保温力です。
ボトルの中身はお湯がおすすめ。粉末タイプの飲料を入れれば温かい飲み物が飲めますし、万が一ギアが凍りついた際も、お湯をかければ溶かせます。
取材協力:アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 札幌発寒店
ライター
MORITAX
スキー専門誌にライター・編集者として在籍し、現場取材から選手スキー技術解説記事、ニューアイテム紹介まで幅広く担当。現在はライター・編集者として、スキーのみならずアウトドア関連の情報発信にも携わる。趣味はスキーヤーとキャンプで、スキー歴は30年以上。最近はカヌーでいろいろな湖に行くのが楽しみの一つ。