寒い冬を乗り切るために欠かせない防寒着。日本とスイスでは、その着方に大きな違いがあります。とくに注目なのが、スイス流のレイヤリングスタイル。フリースやダウン、ソフトシェルジャケットを中心に紹介していくので、参考にしてみてください。

フリース&ダウンはこう着るべし!スイスの防寒レイヤリング術

スイスの防寒レイヤリング術

スイスにはアルプス山脈があり、冬の寒さは日本以上に厳しいこともあります。そんな環境でも、スイス人は意外と厚着していません。その秘密は、フリース・ダウン・ソフトシェルジャケットの使い方にありました。

寒さが厳しいスイスの防寒スタイル

スイスでは3層のレイヤリングスタイル(ベース・ミドル・アウター)が定番です。ベースレイヤーは、汗を吸収して速乾性を保つことが重要。実は速乾性に優れ、軽くて動きやすいフリースが、ベースレイヤーとして使われることも多いのです。

ミドルレイヤーには、保温性を重視するために、ダウンジャケットがよく使われます。暖かさを保ちながら着膨れをしにくいので、薄手のダウンジャケットが重ね着にぴったりなのです。

アウターには、防水・防風性の高いソフトシェルジャケットで締めるのがスイスのスタイル。スイスでは小雨程度では傘を使わない人が多いため、こうした防水機能がとくに重宝されます。

中でもスイスの冬のレイヤリングでは、フリースが重宝されているのが特徴的です。厚さにより、ベースにもミドルにも、ときにはアウターとしても活躍するので、季節に合わせてフリースを使い分けるスタイルが定着してるのですね。

レイヤリングが基本なのは万国共通

レイヤリングの概念は日本でも広がっていますが、スイスのレイヤリングスタイルは少し違っています。

日本ではおなじみの吸湿発熱素材は、薄手で暖かく、とても人気があります。しかし、スイスでは室内の暖房設備が整っているので、建物内は暖かく、汗をかくこともしばしばです。そのため、吸湿速乾性が重視されます。暖かいうえに速乾性があり、肌触りのよいフリースがよく使われるのも納得ですね。

じつは厚着していない?

スイスの人は意外に薄着だな?と思ったことがあります。スイスでは「防寒=厚着」ではなく、上手にレイヤリングをします。その理由は、室内の暖房設備。寒さが厳しい国ゆえ、暖房設備が充実しており、建物内はとても暖かいのです。

自宅にも、セントラルヒーティングシステム(集中暖房)があり、家のなかを一定の暖かさに保つことができます。それゆえ、冬に厚着をする習慣がなく、必要に応じて衣類を重ね着して寒さに対応しているのです。

スイス人の冬服選び

スイスの防寒レイヤリング術

冬の服装選びは、寒さや天候の変化に対応するためレイヤリングが基本です。吸湿速乾性の高いベースレイヤーや、フリースの生みの親ともいわれているポーラテック素材は人気があります。

保温性を重視する

スイスの冬の服装選びでは、保温性が重視されます。なかでも人気なのがポーラテック。ポーラテックは、アメリカ生まれの高機能フリースです。種類もさまざまあり、通気性・保温性・軽量性に優れた特徴があります。

性質の異なるポーラテックを使い分けることで、日常使いだけでなく、雪山のような過酷な環境にも対応できるので、重ね着する際にも便利な素材です。

街でもアウトドアスタイルがおしゃれ

スイスの防寒レイヤリング術

スイスに住み始めて驚いたのは、街中でもアウトドアスタイルのファッションを楽しむ人が多いことです。日本のアウトドアファッションといえば、山登りやキャンプのイメージが強いですが、スイスでは日常のスタイルとしてすっかり浸透しています。

その背景には、スイスの生活スタイルが関係しているように感じます。たとえば、職場まで自転車で通勤する人が多いのも特徴のひとつ。街中には専用のサイクリングレーンが整備されています。そのような背景から、アウトドア向けの動きやすい服装が日常的に好まれているのかもしれません。

また、スイス人は散歩やハイキングを趣味とする人も多く、気軽に山や湖に出かける機会が豊富です。このような環境では、街からそのまま自然な場所に行けるような機能的で快適なスタイルが重宝されます。

スイスでは「実用性」と「おしゃれ」のバランスが絶妙に取れたアウトドアファッションが広く愛されており、それが街中でも自然な光景として溶け込んでいるのです。

スイス生まれのマムート(Mammut)で聞いた寒さ対策

スイスの防寒レイヤリング術

スイス・チューリッヒにある、スイスのアウトドアブランド「マムート」に直撃!実際にスイス人はどのようにレイヤリングを駆使して、寒さ対策をしているのか店員さんに聞いてみました。

フリースはほぼベースレイヤー?

スイスでは、やはりフリースがベースレイヤーとして便利なのだそう。速乾性があるので汗をかいても汗冷えしにくい、通気性が高く臭いがこもりにくい、といった利点があります。素材の肌触りもかなり進化していて、素肌でも着心地抜群です。

スイスの洗濯事情として、共同で使う大きめの洗濯部屋がアパートに設置されています。大きな乾燥機のある部屋に干しておけば、あっという間に乾く扱いやすさも、フリースが選ばれる理由のひとつなのでしょう。

ダウンは中に着るべし

ダウンジャケットは、薄手のものがスイスではよく使われてるとか。なぜなら、レイヤリングに便利だからです。暖かさを保てるうえ、重ね着しても着膨れしないため、アクティブなシーンでも快適に動けます。

日本では、ふわっとしたボリューム感のあるダウンジャケットが人気です。防寒具としての実用性に加え、冬らしいたっぷりとした存在感を楽しむファッションアイテムとして親しまれています。

いっぽう、スイスでは薄手のダウンがよく選ばれます。たとえば、通勤のために自転車を利用する人にとって、薄手のダウンは暖かさを保ちながら動きやすく、街中での移動を快適にするアイテムです。

さらに、スイスでは「軽さ」と「コンパクトさ」も重要視されるので、薄手のダウンジャケットは、小さく畳んでカバンに収納できる点もいいですね。

防水・防風ソフトシェルで仕上げ

スイスでは、アウターとして活躍するのが、防水・防風機能を備えたソフトシェルジャケット。一般的に、ダウンジャケットは保温性に優れているものの水には弱いため、雨や雪が降る日には、そのまま着るのは不向きです。

ソフトシェルジャケットは、ウィンドブレーカーのような役割も果たし、雨や風を防いでくれます。さらに、通気性も兼ね備えているため、激しく動いても蒸れにくく、スイスのような、突然の雪や雨に見舞われることの多い地域で快適さを保つのに役立ちます。

ソフトシェルジャケットは、薄手で動きやすいため、ハイキングやスキーといったアウトドア活動にも最適です。街と自然との距離が近いスイスのお国柄があらわれていますね。

今回お邪魔したマムートに代表されるように、ソフトシェルジャケットはシンプルで洗練されたデザインのものが多く、街中での普段使いにも活躍します。とても便利なアイテムなので、みなさんもスイス流に取り入れてみてはいかがでしょうか。

スイスの冬服は、「とにかく重ねる」レイヤリングが基本!フリースをベースレイヤーに、ダウンを中間着に、アウターはソフトシェルを着用する。日本の「寒い=厚着」とは違い、素材の機能性を生かして冬を乗り切っています。暖かさと動きやすさを両立するこのスタイル、ぜひ楽しんで挑戦してみてください。

ライター

アルパガウス 真樹

スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。