冬のレジャーの目的地として人気のスキー場では、気候変動の影響を大きく受けはじめています。そこで注目されているのが、「サステナブルなスキー場」です。この記事では、スキー場を守るための取り組みや私たちができることをわかりやすく紹介していきます。
スキー場が抱える問題とは?
現在スキー場が抱える環境問題として取り上げられるのが、気候変動による雪不足。気象庁の報告によると、年最深積雪量は、2076〜2095年に北海道の一部を除いて大きく減少すると予想されています。
雪を増やすためには人工造雪が必要ですが、1台の人工降雪機が1分間に数百リットルもの水を使用しており、水不足や生態系への影響が懸念されているのです。
また、スキー場の運営自体が環境に負荷を与えるともいわれています。リフト稼働やゲレンデ整備には大量のCO2を使わなければなりませんが、それが地球温暖化を進め、さらに雪不足を起こすという事態が起こっているのです。
持続可能なスキー場運営を目指す「サステナブル・リゾート・アライアンス」
未来のスキー場を守るには環境に優しい運営が必要となるため、持続可能なスキー場が注目されています。
日本では、気候危機から冬を守るために活動する環境団体POW JAPANが、持続可能なスキー場運営を目指す「サステナブル・リゾート・アライアンス」を2023年に始動。また、活動開始と同時に全国16か所のスキー場が加盟しました。
サステナブル・リゾート・アライアンスでは、スキー場とスキーヤー・スノーボーダーの両者の立場から持続可能性を考えて、スキー場経営に詳しい人や気候変動の知識をもつ人などを集めた専門チームをつくり、スキー場の脱炭素化を目指して行動しています。
日本や海外における持続可能なスキー場づくりの事例
日本や世界の持続可能なスキー場づくりの取り組みを見ていきましょう。
サッポロテイネスキー場(北海道)
北海道にあるサッポロテイネスキー場は、サステナブル・リゾート・アライアンスに所属するスキー場の一つ。
行っている取り組みとして、スキー学習や修学旅行を積極的に受け入れ、自然の中で学習する機会を設けています。これにより、スキー場への興味を持つ人を増やしているのです。
また、スキーやスノーボード用のフッ素入りワックスに含まれる成分が環境によくないといわれているため、環境保護のためにフッ素フリーのワックスのみ販売。ほかにも、レストランでは食品ロス削減のために、使う分だけ仕入れたり地産地消のメニューを提供したりするなど、持続可能なスキー場に向けた取り組みをしています。
白馬八方尾根スキー場(長野県)
サステナブル・リゾート・アライアンスに加盟している長野県の白馬八方尾根スキー場でも、環境保護に向けた取り組みを行っています。
まず、2020〜2021年シーズンにおいては、無駄のない人工降雪を行えるシステムを圧雪車に装備することで、電気量や燃料を削減。さらに、降雪機やレストランで使用する一部の電力も再生エネルギーへ換えることで、年間1,000トン以上のCO₂排出量削減を可能にしました。
白馬八方尾根スキー場ではほかにも、八方尾根の環境を考えるSDGsプログラムを設け、自然に触れながら環境問題に向き合う機会を設けています。
バルディゼール(フランス)
フランスを代表するスキーリゾートであるバルディゼールでは、20の持続可能な取り組みを行い、権威ある環境認証であるフロコン・ヴェールを獲得しました。
バルディゼールのリフトは2012年から100%グリーンエネルギーで運営されており、屋根に設置されたソーラーパネルから電力を供給しています。また、31台ある圧雪車の燃料は、使用済みの植物油脂から作られたバイオ燃料を使用しており、これによりCO2排出量を90%も削減しているのです。
ほかにもバルディゼールでは、リゾート内で走るバスの燃料をクリーンな軽油代替燃料に変えたり、電気バスの台数を増やしたりしています。
私たちが未来のスキー場を守るためにできること
未来のスキー場を守るためにできることを紹介します。
1.冬のアウトドアとしてスキーに親しむ
未来のスキー場を守るために、冬のアウトドアとしてスキーに親しむことが大切です。
スキー人口は年々減っており、スキー場の倒産も相次いでいる近年。冬のレジャーとしてスキー場へ向かうことがスキー場を助け、未来のスキー場を残すために貢献します。
普段からスキーをする人であれば、家族や友人などを誘ってスキーの魅力を広めていきましょう。より多くの人にスキーに触れてもらうことが大切です。
2.サステナブルなスキー場を選択する
次に、スキー場を選ぶ際は、サステナブルな取り組みを行うスキー場を意識的に選びましょう。
先ほど説明したように、国内では環境に配慮した施設運営を行うスキー場が増えています。たとえば、再生可能エネルギーを利用したり環境に優しいワックスを使ったりするスキー場を選択すれば、未来の環境保護に貢献できるのです。
私たちひとり一人の行動がスキー場を守ることにつながるので、ぜひ積極的にサステナブルなスキー場を利用しましょう。
3.環境問題を知る
最後のポイントは、スキー場で実施される環境教育プログラムなどに参加し、環境問題を知ることです。スキー場によっては、環境問題について学習できるプログラムやフィールドワークがあります。
スキー場を取り巻く環境問題を知れば、環境保護の重要性を理解でき、スキー場を利用する際の環境意識も高まるでしょう。未来の世代のスキー場を守るために、ぜひ積極的に参加してみてください。
ライター
エレナ
フリーランスライター。学生時代の海外ボランティアをきっかけにSDGsやエシカルに興味を持つ。主にSDGs、英語学習、留学、旅行について執筆。リフレッシュには自然の中でのんびり過ごすのが好き。