温帯低気圧ってなに?
中緯度地域の暖かな空気が残留している場所に、寒気が入り込むことで発生した低気圧を「温帯低気圧」と呼びます。急激に発達した温帯低気圧は「爆弾低気圧」とも呼ばれ、爆弾低気圧が山にもたらす悪天候は命に関わるレベルです。
温帯低気圧は寒気が暖気の下に潜り込み、暖気の水分が冷やされることで水蒸気が発生し、雨を降らせます。温帯低気圧が発達すると、台風並みの強風が吹くこともあります。
秋冬は大陸から訪れる寒気と、残留している暖気がぶつかり合うため、温帯低気圧が発生しやすい季節です。温帯低気圧には「寒冷前線」と「温暖前線」があります。温暖前線側は気温が上昇し穏やかな雨を降らせ、寒冷前線側は気温が低下し短時間に強い雨が降ることが多いとされています。
秋冬登山の温帯低気圧による危険性
秋冬に訪れる温帯低気圧は発達しやすく天候が乱れやすいため、悪天候が予想されます。温帯低気圧による影響を受けやすい山では遭難事故も起こりやすくなるため注意が必要です。
温帯低気圧が訪れているときに注意したいのが、低体温症による凍死です。気象条件によって遭難することを「気象遭難」と呼び、雪が降りやすい秋冬登山では凍死などの危険性が高まります。
2009年に鳴沢岳で発生した遭難事故では、温帯低気圧(爆弾低気圧)によりベテラン登山家が疲労凍死しました。2016年10月の白馬岳でも、温帯低気圧による影響で登山者が命を落としています。
秋冬登山での温帯低気圧対策
秋冬登山をする際には、温帯低気圧の対策が大切です。命を守るためにも、ぜひ対策方法をチェックしてください。
登る前に天気図をチェックする
温帯低気圧が発生すると、台風に似た渦状の天気図となります。温帯低気圧が発生している、もしくは発生が予想される状況の場合、登山を中止するのがよいでしょう。
注意したいのが2つの低気圧が発生する「二つ玉低気圧」です。二つ玉低気圧は「疑似好天」と呼ばれる、少しだけ天候が回復する現象を起こします。この疑似好天にだまされて出発してしまうと、遭難してしまう危険性があるため注意しましょう。
身体をぬらさない工夫をする
秋冬登山の温帯低気圧は冷たい雨が降ります。一度体が濡れてしまうと、下山や山小屋に到着する以外に乾かす手段がありません。冷たい雨にぬれたまま登山をつづければ、低体温症の危険性が高まります。
対策としては身体を最初から濡らさないことです。雨が降りはじめた段階で、レインウェアを装備しましょう。日帰り低山であっても秋冬は気温が低いため、レインウェアは忘れずに持っていくようにしてください。
防寒対策を行う
寒気が強い秋冬の温帯低気圧は防寒対策もしっかり行いましょう。風速が1mで体感温度は1度下がるとされているため、強い風が吹く温帯低気圧では防風対策も大切です。
低体温症になると手足のふるえによって行動がしにくくなり、そのまま放置していると意識障害が起こる可能性があります。錯乱状態まで発展すると、極寒のなかにもかかわらず服を脱ぎだしてしまう人もいます。
手足にふるえを感じたら防寒装備を増やしたり、温かいものを食べたりするなど、身体を暖めるようにしてください。
秋冬登山におすすめの装備
防寒対策で重要なことは、身体を保温する装備を持っておくことです。荷物は増えてしまいますが、秋冬登山の大事なお守りとなります。おすすめ装備を紹介するので、登山をする前にそろえておきましょう。
レインウェア
冷たい雨から身体を守るのに重要なレインウェアは、登山の三種の神器のうちのひとつに数えられています。秋冬登山以外にも、オールシーズン活躍してくれるでしょう。
アウトドアブランドなどのレインウェアには防風性に優れた商品も多いため、強風時の保温として羽織るのもおすすめです。
ニット帽子
ニット帽子は毛糸を編み込んだ保温性の高い帽子です。夏用の帽子は強い日差しから頭を守ってくれますが、通気性に優れたものが多いため保温力が低い場合が多いです。秋冬登山をする際は、頭部の保温のためにニット帽子を持っていくようにしましょう。
ネックウォーマー
首には太い血管が通っているため、冷やしてしまうと全身が冷えてしまう可能性があります。普通のマフラーだと登山中にほどけてしまうこともあり危険なので、スポーツ用のネックウォーマーを持っておきましょう。
インナー
秋冬登山で見落としがちなのがインナーです。インナーの通気性が悪いと汗で体が濡れてしまい、汗冷えから低体温症につながってしまうおそれがあります。一番下に着るインナーは、吸汗性や通気性に優れたものを着用してください。
手袋
手先の冷えは行動に支障が出る可能性が高く、降雪時は凍傷のおそれもあります。秋冬登山の手袋は、保温能力以外にも、防風機能があるものを選びましょう。軍手などの速乾性が悪いものは、悪天候時に冷えの原因となる場合があるので注意してください。
ダウンジャケット
ダウンジャケットは保温能力が高く、休憩時など冷えやすいときに着用するのがおすすめです。FP(フィルパワー)と呼ばれる数値が高いものほど保温能力が高いため、購入時はチェックしましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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