登山中、誰もが一度はヒヤッとした経験があるのではないでしょうか。「登山の安全講習」は、もしものときに備えて、受講しておきたいもの。ここでは4年間の登山経験がある私が実際に参加してよかった安全講習と、緊急時の対応力を高めるために学んだ知識やスキルを紹介します。
登山する中で身近に感じた危険
先日下山中に転倒してしまい、大したケガはなかったものの5分ほど様子を見て座っていました。こういうときにいつも思うことがあります。もし動けないくらいのケガをしてしまったら…。日没までどれくらい?
登山はしっかり備えて登りますが、それでも下山中の転倒や急な腹痛、視界が遮られるほどの豪雨など身動きできないトラブルは何度か経験しました。
山中で動けないとなると数分でも不安になります。見つけてもらえないとどうなるのか、見つけてもらうまで待つしかないのか…。これが登山の安全講習を受けてみようと思ったきっかけでした。
登山中にケガや病気で動けなくなったら?
登山にはケガのリスクが潜んでいます。どんなに準備していても転倒することはあるし突然の体調悪化もあるかもしれません。
そんなとき皆さんはどう判断し、行動しますか?
「これから先もずっと登山を楽しみたい」。そんな思いのある方へ、次では実際に受講してよかった登山の安全講習を紹介します。
自分と大切な人を守る安全講習
私が最も知りたいことはケガをしたときの応急処置でした。
泥だらけの傷を洗い流す水がなければ、沢の水で代用できるのか?止血のやり方は?などなど。すぐに病院へ行けるのであれば気にならない程度のケガでも、長時間の登山となるとまた別の話です。
豊富に開催されている“登山のための安全講習”の中でも、受講して印象に残ったものは以下3種類の講習です。
WMA野外・災害救急法
ケガをしたとき、病院到着まで長時間を要する場合の応急処置や救助が来るまでにできることを学べます。座学はもちろん実技を通じてカラダで覚える学習スタイルです。
知識を学ぶ
例えば登山中に症状としてよく聞く“低体温症”についてはこのセミナーで学びました。低体温症の特徴のひとつとしてあるのが、体温が低下したことによる脳機能の異常です。例えば、寒いはずなのに「暑い」といって上着を脱いでしまうといった見当識障害の症状が出る可能性があります。
病気の知識がなくても山仲間や家族、大切な人の普段聞かない言葉やおかしな態度にはすぐに気付きますよね。山中の極限状態では、それが症状のサインかもしれないということを知り、早めに気付くことが大切です。
スキルを体験する
登山中に起こる可能性のある傷病を学んだあとは対処、応急処置の体験です。「止血方法を知りたい」と思うだけの私には少々レベルの高い内容でしたが、緊急時の対応力を高めるためのスキルを学べました。
愛好家から医療従事者向けの豊富なコースから選択できる
参加者はキャンプ好きな飲食店経営の方やキャンプ場に転職したい看護師さんなど職種はさまざま。医療従事者でない私でもわかりやすく学ぶことができました。
参加者に共通しているのは“山が好き”ということ。初心者からプロまで目的に合ったコースが選択可能で、共通点をもって楽しく受講できます。
地元消防主催の安全講習
AEDの活用方法や心肺蘇生法を確認する消防主催の安全講習は定期的に開催されています。登山をテーマとした安全講習開催の際、ヘリ救助に関する時間や費用を消防隊員の方に聞いてみました。
近郊の山々に出動した事例をお話しいただけました。もちろん遭難、事故のケースによりますが、
・消防が一報を受けて入山するまでの時間
・山の大きさによって異なる捜索にかかった時間
・使ったルートやヘリまたは歩きによる時間
など、過去事例を聞くだけで参考になりました。
費用については消防が救助にあたる場合はかかりません。ただし民間のヘリの場合は費用がかかります。過去の事例から私の住む九州の片田舎は消防の出動件数が多いように感じましたが、民間が出動されるケースが多い地域もあるようです。
YAMAPアプリを活用した安全講習
佐賀県“多良岳を愛する会”を通して「登山安全講習講演会」に、“太良町観光協会×YAMAP”のコラボ企画があったので参加してきました。
この講習では登山での緊急時に欠かせない位置情報の特定、GPSやYAMAPユーザーとすれ違うことで現在地を探すシステムをわかりやすく解説。地図、コンパスが苦手な方には山アプリがおすすめです。
その後の登山活動への影響
安全講習を受けてまず取り組んだことは、持ち物と服装の見直し。そして意識が少し変わりました。持ち物のファーストエイドキットは自分が使えるものに見直し、ワントーン気味な服装には目立つ色を取り入れました。
もし緊急時に遭遇したら、怖くて動けないかもしれないし、学んだことをすぐ実践できるかもわかりません。でも、大切な家族や山の仲間を前に懸命に学んだことを思い起こし集中することによって、何もできずにオロオロするだけの時間が減る気がします。
登山中の事故はまだ経験していませんが、交通事故現場に遭遇した際に“冷静でしたね”という言葉をいただいたのはきっとこの安全講習のおかげですね。
安全に登山を楽しもう
安全講習を受けてみることで山中、ケガや病気で動けなくなったときにできることがきっと見つかります。
これから先も登山をより楽しむために安全対策が企画されている登山イベントや講習会に参加してみてはいかがですか?
ライター
kurumi
美容業界に25年在籍し、今はエステサロンを経営しています。登山歴は4年。山好きなメンバーでイベントを企画したりして、楽しく山に登っています。歳を取ってもずっと登れるカラダ作りをするのが好きです。