低体温症はただ寒くて震えているだけなのか、それとも危険な状態なのか…どうやって判断するのでしょうか?ここでは、筆者がWMA野外災害救急法で学んだ低体温症の判断、いざというときにより迅速かつ、的確に対処するための方法を紹介します。

登山中の「間に合わない」を避けるために

登山 低体温症

私がWMA野外災害救急法を受講しようと思った理由のひとつに、万が一のとき「間に合わない・何もできない」 を少しでも避けたいという思いがありました。

ケガや病気によってトラブルがおきても、すぐに処置できれば助かることもあります。しかし登山中では「間に合わない」ケースが多くあります。低体温症もそのひとつです。

WMA野外災害救急法で学んだ低体温症について

登山 低体温症

低体温症は、体温が維持できなくなることでさまざまな問題が出てきますが、その場合は急いで保温します。

WMA野外災害救急法に学ぶ処置の仕方としては、熱を奪ってしまう4つの経路を断ち、カロリーを摂ること。冷たい外気にさらされないように保温しながら、体の内側からはカロリーを摂って熱生産させることが大切です。

熱を奪う4つの経路とは

命を守る4つのポイント

【底冷え】しないように地面と人との間にマットなどを敷く

【風】から守る。シートなど防風性のあるものはカラダの外側へ

【熱放射】でカラダの熱が逃げないように体温をこもらせる

【気化】濡れて体温を奪わないように可能であれば着替える

身体を冷やしてしまうのは、突然の雨や強風にさらされたり、汗をたくさんかくといった要素があります。安全な登山のために防水や防寒に備えるほか、保温するための手段も確認しておきましょう。

熱生産のためのカロリーを摂る

身体を温めるのと同じくらい大切なのがカロリーを摂ること。冷えた身体は、震えることで熱を生み出そうとします。そして、震えるためには、砂糖が多く含まれる飴やゼリーなどのカロリーがとても必要です。

カロリーを消費しきってしまうと震えることもできず、熱生産ができなくなって急激に体温も低下します。そのため、震えているうちにしっかりカロリーを摂ることが大切です。

万が一のための役立ちグッズ&ポイント

安全のためにいつも携帯していますが、WMA野外災害救急法では、より実践的な使い方を学びました。

エマージェンシーシート

エマージェンシーシートは、「上着の下に着る」といった使い方も。筆者は、シートを胴回りに巻くと身体の中心部が温かく感じました。また、シートを細くまとめて背中へ縦に挿入して、胴回りに沿って広げると上着を着たまま装着できます。

温かい飲み物

温かいとはいっても、お湯では熱生産することはできません。甘めのホットジンジャーなどはおすすめです。温かくて甘みのあるもなど、なるべくカロリーを摂れるものを選びましょう。

パッキング

グッズ以外にも万が一に備えておく大切なポイントがあります。それは「パッキング」です。一刻を争う際には、必要なものがすぐに取り出せるかどうかが生死の分かれ道になるかもしれません。

取り出したいものがザックの奥のほうに入っていると、暗い場所では取り出しに時間がかかり、雨天のときはほかの道具まで濡れてしまうことも。荷物をすぐに取り出せるようなパッキングを心掛けましょう。

例えば、ザックの中の収納位置を把握したり、ポーチを色別で分けるなどの工夫もよいでしょう。

講習を受けてわかった「予防処置」の大切さ

登山 低体温症

私はWMAの講習から、低体温症を防ぐには予防処置がとても大切だということに気づきました。

体温が維持できなくなると、徐々に脳の温度が下がり脳が冷えて機能しなくなります。そうすると、頭が朦朧として行動がおかしくなります。さらにその後、心拍や呼吸が弱くなり死に至ることもあります。

深刻な症状になっているか判断のひとつは、“脳の状態”がしっかりしているかということ。WMAのカリキュラムのなかでは、低体温症であるかどうかの重要な指針のひとつとして、”脳機能の低下”があることを学びます。

体温が目安になるとはいえ、計測できない野外で知っておくべき大切なことが2つあります。それは「頭(意識)がしっかりしているか」、「行動や言動に違和感はないか」というように、傷病者の様子をしっかりみてあげることです。

低体温症はほかのケガや病気に比べ、致命的な外傷がなく症状の判断が難しいです。そして保温できなければ、想像より早く確実に死に行く怖い症状だと感じました。

WMAの受講以降、防風対策はもちろん行動食の内容についても見直してます。好みの塩系のものやナッツばかりでしたが、甘いものも持っていくようになりました。緊急事態になったときのためでなく、予防のためにカロリーはまめに摂るようにしています。

なお、筆者がWMA野外・災害救急法を受けたときの内容については、以下の記事でご覧になれます。

登山 安全講習
もうオロオロしない!万が一に備えて参加した「登山の安全講習」から学んだこと

低体温症になってしまったときの症状を、体温別にわかりやすく紹介されているこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

登山 低体温症 対策
登山で気をつけたい低体温症の対策
登山中の緊急事態に「間に合わない」を少しでもなくすために「できる何か」を探すようになりました。WMA野外災害救急法では、救助が来るまでにできること、またそうならないために事前に何を準備するべきかを学ぶことができます。山での万が一では、冷静に行動できるよう、判断を迷わないための知識を持っておくことも大切です。登山時の低体温症について判断や対処の仕方を知り、これからも安全に登山を楽しみましょう。

ライター

kurumi

美容業界に25年在籍し、今はエステサロンを経営しています。登山歴は4年。山好きなメンバーでイベントを企画したりして、楽しく山に登っています。歳を取ってもずっと登れるカラダ作りをするのが好きです。