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冬でもマリンスポーツを楽しみたいという人はたくさんいます。冬のマリンスポーツを楽しむためには、水温に関する正しい知識と寒さ対策が必要。そこで今回は、冬の海で特に注意したい低体温症(ハイポサーミア)の原因や症状、適切な対策について紹介します。

体温と水温の関係

マリンスポーツ 低体温症

水は空気の20倍も熱伝導率が高いといわれています。つまり、水は空気の20倍も早く体温を奪っていくということです。

たとえば、ウエットスーツやドライスーツといった保温スーツを着用しないまま海に入ったとすると、水温が約4~5℃の環境では、わずか30分しか生存できません。

水温が約15~16℃でも約2時間で危険な状態に陥ってしまいます。人が水中で快適に過ごすには、水温が27℃以上は必要だといわれています。

ただし、保温スーツを着ていれば大丈夫というわけでもありません。極端に高い水温の場合を除けば、保温スーツを着ていても、気づかぬうちに体温はどんどん奪われています。

あくまで保温スーツは身体の熱が奪われるプロセスを遅らせるだけということを忘れないようにしましょう。

 

低体温症の原因と症状

マリンスポーツ 低体温症

身体が冷やされると、手、足、頭部の温度中枢が体温を維持しようと体内の血液循環を変化させます。まずは頭部をのぞいて手足の血管が収縮します。これは手足への血流を減らすことで、体の深層部の体温維持を優先させようとする反応です。

その結果、手足に「痺れ」を感じるようになります。それでも体温を十分に維持できないときは、体がガタガタと震えだします。これは筋肉を動かして代謝を促すことによって、熱を作り出そうとする体の反応の表れなのです。これは非常に危険な兆候です。

震えは体が作り出す熱よりも、失われる熱のほうが多いことを意味します。震えが始まったら限界が近づいているサインだと思ったほうが良いでしょう。

低体温症(ハイポサーミア)の兆候

体の震えを無視し、体からどんどん熱が奪われる状態が続くと、深層部の体温が下がり低体温症(ハイポサーミア)が生じます。低体温症は体温調整メカニズムがコントロールできなくなった状態なのです。

低体温症がさらに進行すると、それまでの震えと血管収縮がいったん止まります。すると皮膚に血流が戻ってくるので一時的に気分が良くなります。

実はこれがかなり深刻な状態。もはや体は寒さを感じなくなっているわけです。さらに、体温はコントロールできないスピードで失われ続けていきます。

すると、体温の低下とともにメンタルが低下していき、急激な眠気におそわれ意識消失が生じます。さらに、低体温症が進行すると意識損失から昏睡、最悪の場合は命を落とす事態が生じることになります。

【軽度の症状】
痺れ感、皮膚の斑点、顔面蒼白、手足が真っ青になる、ガタガタと震える

【重度の症状】
震えが止まらない、極度に寒いのに震えが起こらない、動作がぎこちない、錯乱、脱力、無感情、意識不明、心臓の不調、死亡

 

低体温症の対策

マリンスポーツ 低体温症

低体温症(ハイポサーミア)は緊急事態であり、医師による治療が必要な状態ということを覚えておきましょう。低体温症を予防するには、水温に適した保温スーツを着用するようにし、過剰な体温ロスを避けるようにします。

「震え」を感じたら、すぐに水から上がり「暖」をとることを最優先に考えましょう。軽症の場合は、ウエットスーツなどの保温スーツを脱いで体の水滴をしっかり拭きとり、乾いた服に着替えたら毛布などで体を温めます。

使い捨てカイロなどを脚の付け根、脇の下、頭や首周りにあてるなどして十分な暖をとりましょう。暖かい飲み物も効果的ですが、コーヒーなど体を冷やす飲み物は避けてください。アルコールは絶対にダメですよ。

重度の低体温症

震えが止まらないような重度の低体温症の場合は、患者の様子を注意深く観察しながら、すぐに緊急医療センター(119番)に連絡を取ってください。

症状によっては人工呼吸が必要な場合もあるので、周りに救命講習等を受講したことがある人がいないか探してみましょう。また、医療機関まで15分以上かかる場合は、患者を温めないほうが蘇生できる可能性が高くなる場合もあります。

自己判断できない場合は、必ず緊急医療センターの指示に従いましょう。

海上でのSOSに、電話による緊急番号

海上保安庁は、海上における事件・事故の緊急通報用電話番号として、警察の110番や消防の119番のように覚えやすい局番なし3桁電話番号「118番」の運用を2000年5月1日から開始しています。

次のような場合に通報してください。

海の「もしも」は118番
・ 海難人身事故に遭遇した、または目撃した。
・ 油の排出等を発見した。
・ 不審船を発見した。
・ 密航・密輸事犯等の情報を得た。

 

適切な保温スーツ

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低体温症の予防には適切な保温スーツを着ることが大事ですが、ウエットスーツやドライスーツは水温や環境に合わせて使い分ける必要があります。水温に適した保温スーツのタイプは以下の通りです。

  • 23℃以上…3mmフルスーツ、シーガル、スプリングなど
  • 20℃前後…5mmフルスーツまたはセミドライスーツ
  • 17℃以下…ドライスーツ

冷さに対する反応には個人差があります。脂肪の多い人のほうが体温のロスがゆっくり生じる傾向があり、痩せている人は冷やされるのが早くなります。

そのため、自分の体にもっとも適した保温スーツを選ぶようにしましょう。体温の70%以上は頭部から失われるため、とくに「寒がり」の人はフードやフートベストといったアクセサリーを併用することをおすすめします。

低体温症(ハイポサーミア)を予防するには、環境に適した正しい保温スーツを使用することがもっとも重要です。それでも体温は失われていくので、震えを感じたらすぐに水から上がり、暖をとるように心がけましょう。低体温症などの冬の海で起こりうるトラブルに対処できるように、正しい知識とスキルを身につけておくことが必要です。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。