太古の森と澄み切った海が織りなす神秘の島、屋久島。1993年に世界自然遺産に登録されたこの島は、山だけでなく海中も驚くほど豊かです。約950種もの水中生物が生息する日本有数のダイビングスポットとして、多くのダイバーを魅了し続けています。
屋久島ダイビングの特徴
屋久島の海の特徴は、なんといってもその多様性にあります。多くの固有種や希少種が生息する森から流れる豊富な栄養分が、豊かな海の生態系を支えています。もののけ姫の舞台として知られる神秘的な森の恵は、海にも及んでいるのです。
屋久島の海は温帯と亜熱帯の境界に位置する独特な環境でもあります。黒潮の影響を受けながらも、本州と沖縄の水中生物が共存する特異な生態系が形成されています。
水温は夏場でも28度前後と、沖縄ほどの温かさはありません。しかし、その分多様な生物との出合いが期待できます。ベストシーズンは7〜10月。黒潮の恩恵から水温が上昇するとともに、透視度も向上、魚影が濃くなります。
さらに特筆すべきは、各ダイビングスポットまでの近さです。多くのスポットは、港から10分もかからず、場所によってはボートで3分以内と驚くほどの近さ。利用者から、「ボートを出さなくてもいいから、ダイビング代を安くしてくれ」といった笑いまじりの意見を、よく聞きました。
この利便性は、屋久島ダイビングの大きな魅力の一つです。
おすすめダイビングスポット
屋久島には多くのダイビングスポットが点在しています。今回はぜひ潜ってほしい3エリアを紹介します。
永田(ながた)エリア
上級者向けの本格的なポイントとして知られる永田は、激しい流れの中でのドリフトダイビングが特徴です。イソマグロやロウニンアジなどの大物との遭遇が期待できます。
中性浮力(水中でのバランス)のスキルが不可欠で、ロープのない場所での水中集合や安全停止が求められます。
激しめなエリアのイメージが強い場所ですが、マクロ生物を楽しめるスポットも。ベニハナダイやアケボノハゼなどが観察でき、マクロ撮影好きにはいくら時間があっても足りないエリアといえます。
ドリフトでもマクロ撮影でも、基本的に水深が深いエリアのため、減圧症に注意が必要です。
減圧症についての詳しい記事はこちらを参照ください。
一湊(いっそう)エリア
屋久島を代表するダイビングスポットが集中するエリアです。
特に人気な場所が、旧日本軍の零戦の残骸が眠る「ゼロ戦」ポイント。この記事のトップ画像に載せている場所になります。
エンジン部分に群れ踊るキンメモドキの間から、筆者が“主”と呼んでいる30cm以上のアザハタが顔を覗かせる様子は、何度訪れてもダイバーを飽きさせない光景です。
また、「お宮前」と呼ばれる鳥居が見える場所からエントリーするダイビングスポットも人気。ヨスジフエダイ、ロクセンフエダイがどこまでも続く列車のように群れをなす光景は圧巻。これぞ屋久島の真骨頂といえます。
栗生(くりお)エリア
南西部に位置する栗生は、マクロ生物の宝庫として知られています。深場に生息するピグミーシーホースが、平均水深が浅いビーチダイビングで観察することができる、マクロ派ダイバーにはたまらないスポット。
もちろんマクロ生物だけでなく、海底に広がる真っ白な砂浜や、トンネル、水路などの変化に富んだ地形も魅力的です。
実践的なダイビング情報
屋久島でのダイビングスケジュールを、一番人気の一湊エリアを例として見ていきましょう。
朝8時頃にダイビングサービスが所有する船が停泊する港へ集合します。1日のダイビングは3本で、午前2本・午後1本、または午前1本・午後2本というスケジュールが一般的。夏場は海況がよければ、ナイトダイビングも可能です。
注意すべきは天候です。屋久島は日本で最も雨量が多い地域であり、夏場でもボートコートを持参することを強く推奨します。レンタル希望の場合は、事前にショップへ確認しましょう。
アクセスと滞在プラン
屋久島へのアクセスは飛行機か船です。飛行機での直行便は、大阪(伊丹)・福岡・鹿児島の3空港から運航されています。船は鹿児島からで、高速船が1日7〜9便(片道2〜3時間)、フェリーが1日1便(片道約4時間)運航しています。
宿泊は人気のダイビングスポットが集中する一湊区がおすすめです。一湊地区は島内一の漁師町といわれており、魚料理が絶品。島民の心温かい接客にも触れることができ、心も体も満たされる島時間を過ごせます。
プラスαの楽しみ方
ダイビング以外にも、屋久島にはさまざまな楽しみ方があります。縄文杉のトレッキングコースのように丸1日かかる登山だけでなく、気軽に登れる山や滝めぐり、カヤック、シュノーケリングなど、アクティビティは豊富です。
屋久島は世界有数のウミガメ産卵地でもあります。4〜8月にかけて、ウミガメの産卵を観察することが可能。ウミガメの産卵観察には厳重なルールがあります。できる限り観察会等に参加し、スタッフの案内に従ってウミガメに影響がないように観察しましょう。
温泉地も島内に点在しており、日帰り利用も可能。ダイビング後の疲れを癒すのに最適です。ちなみに、毎年7月中旬に一湊地区で「一湊浜まつり」という夏祭りが開催されています。神事や餅まき、地域特産物の販売などが行われており、なかでも大漁旗を一斉に掲げて行進する船団パレードは圧巻の光景です。
おすすめ羽田発着の屋久島ダイビングプラン
屋久島で快適なダイビング旅行を過ごすための、おすすめプランをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
1日目 8時前後羽田発→鹿児島経由→11時頃屋久島着 午後1Dive
2日目 終日3Dive
3日目 午前2Dive 午後島内観光
4日目 12時前後屋久島発→鹿児島経由→14時半頃羽田着
もし、山登りをスケジュールに入れる場合は、ダイビングの日程よりも先に入れましょう。ダイビング後に飛行機に乗ってはいけないことと同じで、減圧症にかかる可能性があるためです。上記のスケジュールだと、2日目に山登り、3日目にダイビングという流れが健全です。
参考資料:海の屋久島|屋久島町
ライター
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マリンスポーツのジャンルを得意としたwebライター。海遊びの楽しみ方やコツを初心者にも伝わるよう日々執筆活動中。スキューバダイビング歴約20年、マリンスポーツ専門量販店にて約13年勤務。海とお酒と九州を愛する博多女です。