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斜陽産業と言われてきたスキー場ですが、近年、さまざまな手法で再開発が進められています。新たなビジネスモデルにより、魅力あるスキー場に生まれ変わったケースも。スキー場経営が歩んできた歴史と、これからの可能性をマネジメントの観点から検証します。

リゾート開発が残した負の遺産

スノーリゾート ビジネスモデル

80年代後半から始まったバブル景気により、日本はさまざまな業界で建設、開発ブームが巻き起こりました。

当時、空前のスキーブームに便乗して、ゴルフ場や高級ホテルを併設したスキーリゾートが持て囃され、全国各地に次々開業することになります。

好景気を背景に、人々は挙ってスキーリゾートに押し寄せ、連日にぎわいを見せていました。

人気のゲレンデでは週末になると、リフトに乗るだけで1時間~2時間かかることも珍しくなく、リゾートホテルは予約も困難になるほどの時代です。

ウィンタースポーツに限らず、大型テーマパークをはじめとした、数々のリゾート開発が行われ、更なる地価の高騰を生み、関連する雇用も爆発的に増大していきました。

 

しかし、バブル経済が崩壊すると一転、ハイコスト、ハイリターンのリゾート施設は窮地に陥ります。

スキー場も1998年の約1,800万人をピークに減少の一途を辿り、高額なゴルフ会員権もその価値を暴落させていきます。

高級リゾートホテルも集客を見込めなくなり、次々と廃業に追い込まれていきます。

同様に、全国各地に合った大型テーマパークやリゾート施設も経営を悪化させ、失業者が年間320万人以上まで膨れ上がります。

現在でも、その影響を残したまま、年間失業者は約2000万人と、失業率は高い水準で経緯しています。

(参考:総務省統計局)

スノーリゾート ビジネスモデル

近年、バブル期に廃業したホテルやテーマパークが老朽化し荒廃した風景をバックに、廃墟マニアがコスプレをした写真をSNSに投稿するなど、なんとも皮肉な現象が起きています。

取り残された廃墟群は日本全国に点在し、崩壊の危険もあり立ち入ることには危険が伴いますので、奨められることではありません。

しかし、バブル期を知らない世代が、バブル期の遺産を、現在のソースであるSNSにアップする行為に時代の残酷さを感じます。

 

スキー・スノーボード人口と市場規模

公益財団法人日本生産性本部レジャー白書2017によるスノースポーツの分析結果によると、2016年のスキー、スノーボードの参加人数は約530万人とされています。

1998年スキー人口のピーク時は約1,800万人とされていますので、約30%程度まで減っているのがわかります。

スノーリゾート ビジネスモデル

また、年代別にみるとスキー、スノーボード参加者が最も多いのは20代で次いで10代、40代、70代の順となります。

バブル時のピーク当時スキーを楽しんでいた年代、現在の40代後半から50代の年代のスキー離れが著しい結果となりました。

20代、30代はスキーよりスノーボード派が、10代と40代以上の世代ではスキー派が多い結果になっていますが、10代では、スキー、スノーボード両方の参加者及び将来希望者が多く、今後の伸びしろが期待できる結果が表されています。

 

同じく「レジャー白書2017」発表では、2016 年の余暇市場は 70 兆 9,940 億円となり、前年と比べ約 2.0%減少しましたが、この5年では、ほぼ横ばい状態にあります。

余暇活動の首位は6年連続で国内旅行となり、2016年は5,330万人が参加したことになります。

このうちスキー、スノーボードの市場規模は、1991年約4,300億円をピークに減少をつづけ、2016年は約1,000億円弱まで落ち込みました。

しかし宿泊を伴う目的別国内旅行の傾向を見ると、男性の第一位目的はスキーとなっています。

また、子どもの多い世帯ほど、負担が高まる旅行費用ですが、スキーや遊園地はその逆の結果が現れており、スキーは子どもの数が多い世帯ほど参加率が高い傾向にあります。

このような分析結果は、今後のスキー業界の市場性を考えるヒントになるのではないでしょうか。

参考資料:公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2017」

 

経営改善の必要性

スノーリゾート ビジネスモデル

バブル時のスキー産業においては、潤沢な資金力をベースに、客を入れる箱を整備することが差別化であり、競争他社とのコンペティションでした。

高級志向の時代に合わせ、華美な内外装とマンパワーを駆使したサービスは、集客が減少していくなか、再建の足枷になっていきました。

スキー業界だけに限ったことではありませんが、日本経済はバブル崩壊まで、右肩上がりの経済成長を疑いもなく信じ、コストパフォーマンスなどの概念は存在していなかったのではないでしょうか。

 

バブル崩壊、リーマンショックといった長い不況の時代に入り、次々とスキー場が閉鎖、倒産に追い込まれていきました。

スキーブームの時代、スキー場経営はドル箱と目され、隣接するホテルなどの施設の他、ロッジ、駐車場、リフト運営から食堂やおみやげ屋などに至るまで、さまざまな企業、団体が利権を争い独立経営をしているケースが多くありました。

このため、トータル的なマネジメント思考が及ばず、集客減少に比例して経営悪化が連鎖してしまう悪循環を生み出しました。

平成不況もスキー客減少も、頭打ち感が現れ始めた近年、本来プランニングしなければならない観光マネジメントに立ち返ることが、今後のスキーリゾートの浮沈に不可欠ではないかと思われます。

 

ブームに左右されないマネジメント

スノーリゾート ビジネスモデル

「女子サッカーをブームではなく文化にしたい」とは、2015年女子サッカーなでしこジャパンの宮間選手が言った言葉ですが、いつの時代もさまざまなブームがやってきます。

ブームの時は、何をやってもうまくいきます。

経済的にも、プロモーションやマネジメントなど考えなくても集客があり、潤うものです。

しかしブームは所詮一過性のものであり、永遠に続くものではありません。

 

日本は上質な雪質とアクセスの便利なスキー場が、全国にたくさん存在し、最近では海外からもスキー、スノボーを目当てに観光客が来るほど恵まれた観光資源を持ちます。

前出の「レジャー白書2017」でも、10代、20代の潜在意識の高さや、スキー離れしている埋没された有効市場に見られるように、スキー産業は一概に斜陽産業とは言えない可能性を秘めています。

「スキー・スノーボードを文化に」するために出来ることはまだまだたくさんあるのではないでしょうか。

実際、海外のリゾート産業が、低迷している日本のスキー場とM&Aを進めたり、スキー場再生を目指し起業したりする若い経営者も現れています。

 

【企業紹介】

株式会社マックアース
https://www.macearthgroup.jp/

日本スキー場開発株式会社
http://www.nippon-ski.jp/index.html

株式会社P&C尾瀬
http://www.ozetokura.co.jp/

 

地域経済との共存

スノーリゾート ビジネスモデル

スキー場の多くは、過疎化が進む地方地域に存在します。

スキーブームの時代は、関連する産業、それぞれに働き口がありましたが、衰退したスキー場では雇用も無くなり、過疎化が進行する要因にもなっています。

平成28年4月1日現在で797(274市398町125村)であり、全国の市町村総数に占める割合は46.4%に及びます。

また、過疎地域の人口はこの50年減少を続けていて、平成22年では、全国1億2,806万人に対し過疎地域1,136万人、8.9%まで減少しました。

参考資料:総務省

 

スキー場の再開発は、こうした過疎地域に雇用を生み出し、税務収入も増やすことができます。

過疎化が高齢化に拍車をかけ、医療費や介護費用などの増加により財政を圧迫されている地方治自体も少なくありません。

スキー場開発は、観光資源を有効活用して雇用を増やす、地域発展の大きなキーワードになる可能性があります。

 

過疎地域における入込観光客数は、昭和60年の271百万人から徐々に増加し、平成15年以降は500百万人を超え、平成26年では584百万人となっている。
また、過疎地域を訪れた観光客のうち延宿泊者数をみると、昭和60年の52百万人から昭和63年には60百万人台に達し、平成26年は74百万人となっている

引用: 総務省

 

戦略マネジメントという視点

 

スノーリゾート ビジネスモデル

スキーブームの時代は、とくに宣伝に力を入れなくてもスキー場に人が溢れていました。

集客のための戦略よりも、訪れるユーザーにどう対応するかに重点が置かれていたと思われます。

しかしながら、今の時代は如何にスキー場に人を呼ぶかが焦点となるはずです。

近年、戦略的な経営システムの構築に力を注ぐスキー場も増えてきました。

また、外部から顧問を招聘して、経営マネジメントの専任者を置いているケースも見られます。

青森県の大鰐温泉スキー場では、弘前大学に経営戦略を依頼し、バランス・スコアカード(BCS)の概念から、スキー場経営の経営改善を図っています。

バランス・スコアカード(BCS)とは、財務、顧客、プロセス、未来の4つの視点から、業績評価と改善点を分析する手法で、目標達成のための代表的なマネジメント手法です。

参考:弘前大学 「大鰐町におけるスキー場の経営効率化に関する研究」

スノーリゾート ビジネスモデル

国内には、雪質やコース設定、施設規模やアクセス事情など、実にさまざまなスキー場が全国に点在します。

そのひとつひとつにそれぞれ合った集客方法があり、ターゲットになる客層もさまざまなはずです。

趣味嗜好が多様化する現在、ターゲットを絞った独自性を打ち出さなければ、スキー場の魅力も半減してしまいます。

一口にスキー場といっても、そのコンテンツは多種多様カテゴリーに分けられます。

プロ指向、ファミリー指向、ナイター営業、メンテナンス、安全対策、料金体制、スキー、スノボーの棲み分け、リフトの利便性、アクセス、夏季運営、宿泊設備、飲食店、体験学習、スクールなど、挙げていくと際限がありません。

それぞれのスキー場経営に見合った選択と戦略は、スキー場経営には必要不可欠であり、これは全てのビジネスに共通することでもあります。

一過性のブームが過ぎ去った今だからこそ、健全な経営体制が望まれるのではないでしょうか。

日本は四季があり、山、海など自然に恵まれた美しい国です。雪山はかけがえのない観光資源でもあり、潜在能力は計り知れません。ブームが過ぎ去った今だからこそ、スキー場が持つ可能性は見直されるべきではないでしょうか。近年、変貌を遂げた新しいスタイルのスキー場も多くなりました。何年もスキー場に行っていない人も多いことでしょう。今一度スキー場に足を向け、未来のスキー産業の息吹きを感じてみてはいかがでしょうか。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。