海のゴミがもたらす環境破壊
海のゴミ問題は、沿岸部の地域だけの問題にとどまらず、地球規模の環境問題として、世界中で問題視されています。
浜辺に押し寄せられるゴミは、陸地や河川から流れだす国内ものと、海流を漂い外国からも流れ着いているものもあります。
2011年東北大震災時の漂流物が、アメリカ西海岸に流れ着いたニュースは記憶にあることと思います。
日常生活から捨てられる心無い個人のゴミや、途上国の無秩序の産業ゴミなどが、世界中の海を汚し、景観の悪化だけではなく、生態系の変化や、漁業、水産資源への悪影響を及ぼします。
また、医療廃棄物をはじめとする薬物や危険物などにより、人体にも影響を及ぼす被害も引き起こしています。
人間が捨てたゴミにより死んでいく生物
海に漂流しているゴミは海洋生物に甚大な影響を与えています。海のゴミのほとんどがプラスチックゴミだと言われていますが、レジ袋やペットボトルなどのゴミは半永久的に無くなりません。
そのようなゴミを誤飲してしまい、死んでゆく海洋生物が後を絶ちません。海鳥などはプラスチックゴミが原因で、絶滅の危機に追い込まれているものもいます。
また、魚やプランクトンなどがプラスチックに含まれる有害物質を摂取することで、それを捕食する海洋生物や人間にも健康被害が広がっています。
海中に放出、廃棄された漁具によって、偶発的に捕獲された海洋生物が、そのまま死んでしまうことで資源や生態系に影響を与えてしまうゴーストフィッシングも問題視されています。
漁具は耐久性が高く、廃棄されても長い年月その効力が続き、甚大な量の被害が発生しているとみられています。
海のゴミにはどんなものがあるのか
海のゴミは、存在場所により分類すると海面に漂う「漂流ゴミ」、海底に溜まる「海底ゴミ」、海岸に漂着する「漂着ゴミ」に分けられます。
漂着ゴミのほとんどはプラスチックゴミで、ペットボトルやポリタンクなどのプラスチック製品や発泡スチロール、プラスチック製品を作る時に用いるレジンペレットなどが目立ちます。また、注射器や薬瓶などの医療廃棄物が漂着するケースもあります。
プラスチックゴミのなかでも注目されているのが、マイクロプラスチックと言われる5mm以下のプラスチック粒子です。
マイクロプラスチックは、工業用研磨材、洗顔料、化粧品などに含まれているマイクロビーズともいわれる原料で、廃棄されたゴミや生活排水から海に流れ出たものと予測されています。
また、海に捨てられたプラスチック製品が波や太陽の紫外線などにより破壊され、細かい粒子に分解されたものも存在します。
このマイクロプラスチックを摂取してしまうプランクトンや魚などの海洋生物と、それら海洋生物を捕食する人間も含む動物への健康被害が問題視されています。
改善への取り組み
日本でも高度経済成長期の負の遺産として公害問題が取り上げられるようになってから、海のゴミ問題も取り上げられるようになってきました。
それから長い年月をかけて海の浄化は叫ばれていますが、年々海洋ゴミは増える一方です。改善に向けてどのような取り組みが必要なのでしょうか。
問題提起と意識改革
海を汚しているゴミのほとんどは、企業や途上国の産業廃棄物よりも個人が捨てているプラスチック製品です。人口的に作られたプラスチックは自然に帰ることはなく半永久的に存在し続けます。
ペットボトルやプラスチック容器、プラスチック製のスプーンやフォークなど、ほんの些細な気持ちで捨てられたゴミが、世界的な規模で考えると尋常ではない量となって海に流れ着いています。
海洋ゴミの問題解決に向けて、世界中で調査や新技術の開発などが行われていますが、捨てる人間を減らさないことには、いつまでたっても問題解決にはなりません。
軽い気持ちで捨てられた小さなゴミが積み重なって、海洋生物を殺し生態系を壊し、ひいては人間の健康被害をも生み出すことを、もっと声を高く啓発、拡散していくことが必要です。
このままでは次世代の子どもたちが大人になった時、ゴミだらけで人が近づけない海になり、むかし海は青く、人は海で泳ぐことができたのだと言っている時代が来るかもしれません。
清掃とリサイクル
既に捨てられているゴミは取り除くしかありませんが、深海に沈んでいるものや、車両や船の近づけない岸壁など、物理的に難しい場所も存在します。
世界中の研究者や環境団体が、このような難所での清掃活動ができるように、新たな技術の開発を行っていますので、人が汚した海を自らの叡智で解決できる日を待つしかありません。
砂浜などの人が近づける海岸線では、今も様々な環境団体や地方自治体、地元の有志などが募ってビーチクリーンを展開しています。
海水浴場やサーフポイントなどでは頻繁に清掃活動が行われていますが、毎月片づけても毎月ゴミがたまっているのが現実です。
ビーチクリーンなどの清掃活動は、清掃するだけではなくゴミを捨てない啓発活動にもなっていますので、多くの人の参加が望まれています。
海に捨てられるプラスチック製品は、海水や紫外線にさらされる前ならリサイクルが可能です。これ以上、ゴミを捨てられないようにするためには、企業や国、地方自治体がさらなるリサイクル制度の整備が不可欠です。
リサイクル事業は予算もかかり、多くの税金が投入されることから、なかなか進んでいない治自体も多いようですが、ゴミとなってしまい、その後の環境汚染や清掃にかかる莫大な被害を考えれば、早急に整備しなくてはならない仕組みなのではないでしょうか。
環境破壊製品の是正
マイクロビーズなどをはじめとするマイクロプラスチックは、生活排水などから気付かぬうちに海に流れ出しているケースがあります。
洗濯洗剤やスクラブ系洗顔剤、研磨剤入り歯磨き粉など、日常品の中にはマイクロビーズが含まれる製品があります。
このような製品を作らない、使わないという消費システムの見直しも考えなければならないことです。
また、既にインドやフランス、アメリカの一部の州では使い捨てプラスチック製品の全面禁止に踏み切っています。
レジ袋やストロー、食器など、捨てることを前提に作られたプラスチック製品が、海や自然環境を破壊していることに、世界規模の対策が始まっています。
日本は環境問題や人権問題などの対応は、世界的には遅い国です。法令や制度化はまだ先になるかもしれませんが、企業や消費者レベルから行動指針を変えていく必要があるのではないでしょうか。
一人の意識から変わるサーフワンハンド
サーフィンをして帰る時は、片手にひとつゴミを持ち帰る運動を「サーフワンハンド」「ワンハンドビーチクリーン」などと呼び、世界中のサーファーが実践しています。
世界中の大きな大会や国内で開かれている大会でも、選手たちがヒート終了後、海から上がる時に片手のゴミを持って上がってくる姿を見ることができます。
サーファーは海と共存している意識があり、海からゴミを拾うことは、自分の家や部屋を片付けているのと同じであたりまえの感覚なのだそうです。
サーフィンだけに関わらず、海を愛する人たちが、自然に生かされていることに感謝して、同じ人類が汚してしまった海を、少しでもきれいにしたいと願う姿勢が連鎖していけば、海のゴミ問題を含めた環境問題にも解決の糸口が見えてくるのではないかと思います。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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