夏のキャンプで気を付けたいのが熱中症。年々暑くなるなかで、熱中症対策を怠ると命の危険をともなうといっても過言ではありません。前回はライフセーバーの筆者が、経験を元に熱中症の原因などについて紹介しましたが、今回はキャンプで熱中症にならないための対策と、万が一なってしまったときの対処法について紹介します。夏キャンプの前に、必ずチェックしておきましょう!
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まずは未然防止!夏のキャンプでかかせない熱中症対策のポイント
暑い夏のキャンプ、思い切り楽しみたいけど熱中症対策も忘れてはいけません。以下に、キャンプなどのアウトドアシーンでの具体的な熱中症対策を紹介します。まずは、もっとも大切な「未然防止」の観点をしっかりとおさえましょう!
天気予報と暑さ指数を確認する
アウトドア計画を立てる際は、単なる天気予報だけでなく「暑さ指数(WBGT)」もチェックすることをおすすめします。暑さ指数とは、気温や湿度、日射・放射、風などの要素を考慮した指標で、熱中症の危険度をより正確に判断できるものです。
日本生気象学会などでは、WBGTが28℃以上で熱中症のリスクが高まる「厳重警戒」としています。なお、31℃以上では「外出をなるべく避ける」とする「危険」レベルとなるので、アウトドアを予定している場合は活動の内容や時間帯などの再検討も必要でしょう。
WBGTは、環境省や気象庁のウェブサイトで確認できるほか、専用のスマホアプリもあります。夏場のアウトドアの際には、こまめにチェックするクセをつけるようにしてみてください!
なるべく避暑地を選ぶ
夏場のキャンプは場所選びが重要です。夏場は少しでも標高の高い場所や、木陰が豊富な場所を選ぶと熱中症リスクを下げられます。キャンプ場選びの際は、サイトの日当たりや木陰の有無、川や湖の近さなども考慮するとよいでしょう。
逆に、夏場のアウトドアで場所選びに失敗すると熱中症のリスクも高まります。筆者は昔、8月の暑い日に、海近くの平野部の周りを垣根で完全に覆われたサイトでキャンプをして大変な思いをしたことがあります…。
この経験以降、夏場にキャンプをする際はなるべく標高の高い避暑地や、日陰の多い林間サイトを選ぶようにしています。なお、海辺のキャンプ場は海風が心地よく、比較的過ごしやすいことが多いですが、晴れた日中の照り返しには注意が必要です。
服装やギアを工夫する
熱中症を防ぐには服装の工夫も有効です。ただし、アウトドアではその内容や場所を考慮する必要があるでしょう。たとえば半袖や短パンは涼しい反面、直射日光による日焼けを起こします。一方で、長袖や長ズボンは日焼けを防げますが、熱がこもりやすくなります。
また、服装だけでなく服の「素材」にも注目してください。おすすめは、吸収性と速乾性に優れた綿や麻、ポリエステル素材などです。活動内容や場所によって、適宜調整できるように準備しておきましょう。
夏場のキャンプではテントやタープの選択にも注意が必要です。タープは遮光性の高いもの、テントは全方向から風が入るようなものを選ぶとよいでしょう。
体調を整える
キャンプの前日からの体調管理も熱中症予防には欠かせません。十分な睡眠と水分補給、バランスのよい食事で体調を整えておくことが大切です。また、出発前に体調不良を感じたら、無理をせず計画を変更する勇気もときには必要でしょう。
キャンプ中は、目の前の楽しさにとらわれすぎず、自分はもちろん周囲の人の体調管理にも努めましょう。とくに、体温調節機能の乏しい子どもや高齢者には注意が必要です。こまめに水分を補給させ、顔色や発汗状況なども観察するようにしてください。
筆者の経験上、海水浴で熱中症になる大人の多くが飲酒をしています。アルコールは利尿作用を促進させるため、脱水症状を引き起こしやすくなります。夏場のアウトドアで飲酒する際には、同量の水分も一緒にとることをおすすめします。
対策グッズを有効活用する
暑さが年々厳しくなるにともない、熱中症対策グッズも数多く発売されていますよね。帽子や冷感タオル、充電型のポーダブル扇風機など、キャンプではこれらの活用が非常に有効です。
筆者の場合、夏場のキャンプではクーラーボックスに保冷剤を多く入れるようにしています。飲み物を保冷するのはもちろん、万が一のときの応急処置にも役立つ保冷剤。余裕があれば小さいサイズでもよいので、いくつか入れておくとよいでしょう。
ほかにも熱中症対策用の塩分タブレットやスポーツドリンクなどを補給して、体内から予防することも非常に有効です。「備えあれば憂いなし」の言葉どおり、真夏のキャンプの前には万全の準備を整えましょう!
キャンプで熱中症になってしまったら?もしものときの対処法
もし熱中症になってしまった場合には、的確な処置をいかに迅速に行うかが大切になってきます。はじめは軽度であっても、処置が遅ければ重症化してしまうかもしれません。ここからは、熱中症の重症度別にアウトドアでも役に立つ対処法について紹介していきます。
Ⅰ度(軽症)
めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、足がつる など
比較的軽い症状で、脱水が原因となることがほとんどです。現場での対応も可能なので、基本的には受診の必要はないでしょう。ただし、油断は禁物。ここで正しい対処をしなければ、重症化してしまうかもしれせません。
Ⅰ度の症状が見られた際は、まずは涼しい場所に移動して安静にしましょう。風通しよい日陰や冷房の効いた建物のなかがベター。水辺のアウトドアであれば、一度水に入って体を濡らすことも有効です。
安静にできる場所に移動したら、水分と塩分をしっかりと補給してください。理想は、これらのバランスのとれたスポーツドリンクですが、麦茶や水でもOK。ただし、その際は別途、少量の食塩も補うように心がけましょう。
コーヒーやアルコールは利尿作用があり、水分を体内から排出してします。キャンプなどで飲むコーヒーやビールがおいしいのはとてもわかりますが、量や飲み方に注意しましょう。
Ⅱ度(中等症)
頭痛、おう吐、体のだるさ、力が入らない など
意識はあるけど、今ひとつはっきりしないような状態です。意識があるので「大丈夫だろう」と思われがちですが、判断を誤ると命にかかわる危険性もあります。できる限りの応急処置をしたうえで、医療機関で診察を受けてください。Ⅱ度以上になると自分自身で対処することも難しくなるため、周囲の人の協力が必要になるでしょう。
応急処置としては、Ⅰ度の対処と同様に涼しい場所への移動や水分・塩分補給のほか、衣服を緩めたり首筋や脇、足の付け根などの太い血管が通っている部位を冷やして、効率的に体を冷却させるようにしましょう。
氷枕や保冷剤があると便利ですが、ない場合には濡れたタオルなどで体を適度に湿らせてから、うちわなどで仰いでください。濡れた体で風を受けると寒く感じますよね。それと同じ原理で、体の熱を効率的に放射できます。
Ⅲ度(重症)
意識障害、普段と異なる言動、けいれん、汗が止まる、体温上昇 など
意識がない、もしくは「もうろう」とした状態です。Ⅲ度になると脳が正常に働かないため、体温調節がうまく機能しなくなります。この場合は、まずはなによりも早急に救急車を要請することが大切です。
救急車を待っている間にもできる限りの応急処置はしましょう。基本的には、Ⅰ度・Ⅱ度で紹介した処置と同様ですが、水分補給には注意が必要です。意識障害がある場合、無理に飲ませようとすると水分が気道に流れ込む可能性があります。こうした場合は、水分補給以外の処置をしたうえで救急車の到着を待つようにちましょう。
応急処置ではありませんが、「搬送」も救急車到着までにできる重要な対処のひとつです。たとえば砂浜や河原など。こうした場所は救急車が入ってこれません。
もちろん救急隊はプロなので、こうした状況でも対応してくれるでしょう。しかし、一秒でも早く医療機関へつなぐためには、できる限り救急車が到着する近くまで移動しておくべきです。「必ず」ではありませんが、周囲の状況や協力者の有無などを考慮して、総合的に判断してください。
Ⅳ度(最重症)
Ⅲ度以上の異常な体温上昇(深部体温40℃以上など)
「最重度」の言葉どおり、脳や体にもっとも重大な影響を及ぼす状態であり、一刻も早い医療的な処置が必要です。「超緊急事態」といっても過言ではないでしょう。命に関わるのはもちろん、回復したとしても後遺症が残りかねない危険な状態ですので、迷わず救急車を要請してください。
ただし、このⅣ度はもともとはⅢ度と同じ分類となっていたものを、2024年に改定した「熱中症診療ガイドライン2024」で追加したものです。つまり、救急車が来るまでの応急処置については、基本的にⅢ度で行うべき処置とおおよそ変わりません。
Ⅲ度とⅣ度、どちらにあたるかは医療従事者でない人たちにとっては判断が難しい分類です。どちらにせよ、早急に119番に通報して救急隊の判断を仰ぐようにしてください。
ライター
SUGURU
キャンプ歴11年。アウトドアと家族を愛するパパキャンパー。ともに暮らす妻と2人の娘はインドア派。家族の機嫌をうかがいながら週末キャンプ・ギア収集を楽しんでいる。最近は、気軽に楽しめる「おうちキャンプ」で一味違った新たなキャンプスタイルを模索中。2019年には庭の物置をDIYでキャンプガレージに改装。お気に入りのギアに囲まれて過ごす「ガレージキャンプ」という新たな試みも行っている。