卵などを摂取するベジタリアンや完全菜食のヴィーガンは、コロナ禍以降、健康配慮の観点からも世界中で増加傾向にあります。SDGs達成度ランキングでトップ3を独占する北欧諸国は、持続可能な食文化も早くから浸透中。今回はそんな北欧のヴィーガン事情を、国別にご紹介します。

食の選択肢が豊富。ヴィーガンが暮らしやすい北欧諸国

ヴィーガン 北欧 マリメッコ社員食堂

北欧諸国は、環境先進国の代表ですが、その環境意識の高さからヴィーガンに優しい社会であり、ベジタリアンやオーガニック志向の人のための選択肢も含めて非常に豊富。

近年では若年層を中心にヴィーガンの選択肢は当たり前になっており、誰にとっても身近であり一つの選択肢として定着しています。

それぞれの国の状況などをご案内していきましょう。

学食や社食にも浸透!カジュアルにヴィーガンを楽しむ「フィンランド」

ヴィーガン 北欧 ヴーガンアイスクリーム

フィンランドのヴィーガン普及率は約3%と、世界的に見てもそれほど高くないにも関わらず、近年ヴィーガン商品やヴィーガンレストランなどが急増しています。もちろん、環境への配慮や動物の権利などといった基本的な思想による理由もあるのですが、健康への配慮やシンプルに「ヴィーガンの味を好む」という人も増えています。

スーパーやコンビニではヴィーガン商品がずらりと並び、ひとつの選択肢として用意されるようになりました。カフェでラテなどを注文すると「ミルクは何にする?」と当たり前のように聞いてくれます。

アイスクリームの消費量がヨーロッパで一番多いフィンランドらしく、売り場にはヴィーガンアイスの種類も豊富です。フィンランドを代表する人気ブランド「マリメッコ」の社員食堂でも、野菜中心のヘルシーなメニューが好評なのだとか。

ヴィーガンの広まりは、学生たちの間にも見られます。フィンランドの代表的な大学である「ヘルシンキ大学」や「アアルト大学」では、学生たちの要望によって学生食堂にヴィーガンメニューが取り入れられました。

ヘルシンキ大学の学食「UNI CAFE(ユニ・カフェ)」は市内に複数店舗あり、一般の人も利用できるカフェになっています。「UNI CAFE」は学生たちの意見が反映され、週に1回だったヴィーガンメニューが、現在は多い時で週3回まで増え、全メニューがヴィーガンメニューの店舗もあります。アアルト大学でも同じく、学生からの要望によって、学食「Kipsari(キプサリ)」は全メニューがヴィーガン食となりました。

フィンランドにおけるヴィーガンは、そこまで厳格な基準に従うというよりも健康や環境、動物などのために「やってみる」という選択肢として、身近に取り入れられています。もちろんストイックな方針に基づく人もいますが、それ以上に「誰もが気軽に取り入れている」という様子がうかがえます。

環境意識の高さや国策でヴィーガンが浸透する「スウェーデン・デンマーク」

スウェーデンはベジタリアンやヴィーガンの普及率が比較的高く、2020年頃の時点でベジタリアンが約12%、ヴィーガンが4%となっています。

フィンランドと同様に、スーパーやレストランでのヴィーガンの選択肢は非常に豊富なのですが、フィンランドとの違いはその「理由」にあります。スウェーデンでは健康面よりも、環境への配慮を理由にヴィーガンを選択をする人が多いという調査結果があるのです。

デンマークの場合は、2020年時点でベジタリアンの割合が2.5%とそこまで高くはありません。しかし、これまでに早い段階から国の策として「オーガニック食品の普及」に取り組んだ経緯があります。

学校教育にも取り入れられたことで、オーガニック食品の選択をする人が増えてきています。こうした背景から、デンマークでは18歳から34歳までの年代において、肉食を減らしたいと考えている人が75%にも上るという専門調査機関のデータがあります。

また北欧諸国と近い「バルト三国」においてもヴィーガンの普及は非常に進んでおり、環境にやさしい「サステナブルフードが注目を集めています。

まだヴィーガンが身近とはいえない「日本」

ヴィーガン 和食

一方で、日本の現状をみると、2023年時点でヴィーガン普及率が2.4%、ベジタリアンは5.9%となっています。割合的には世界的な標準に近いですが、国民全体における認知度・理解度という点では、筆者の周囲でも、北欧各国の状況とは異なる印象を感じます。

一般的には、「限られた特別な意識を持った人が取り組むもの」という印象が強く、知っているようで知らない人もまだまだ多いのが実情です。環境への意識よりも海外セレブや有名人の影響など、「流行」といった側面もあるでしょう。

また、ヴィーガンやベジタリアンメニューを取り扱うレストラン、植物由来の原材料を使用したプラントベースのヴィーガン食品も増えてはいるものの、まだまだ一般化しているとはいえません。レストランも日本人に向けた選択肢というよりも、外国人観光客をターゲットとしている場合が少なくありません。やはり、全体的にまだ「身近ではない」といえそうです。

しかし、世界的な流れに合わせて今後さらにヴィーガンメニューの選択肢は一般化されていくと想定でき、和食という文化を持つ日本ならではのヴィーガンスタイルが生まれる可能性も、充分期待できるでしょう。

気軽にヴィーガンに挑戦してみよう

北欧 ヴィーガン

フレキシタリアン」という言葉をご存じでしょうか。セミ・ベジタリアンのことであり、ベジタリアンをベースとしながら、週に1度は肉や魚も食べるなど、自分なりのやり方で行う「ゆるベジ」と呼ばれるスタイルです。

フレキシブルにベジタリアンやヴィーガンを取り入れるという、柔軟なこのスタイルなら挑戦しやすいですよ。

ヴィーガンチャレンジって知ってる?

ヴィーガンやベジタリアンというと、ストイックな印象をもたれ、「興味はあるが大変そう」「食材が限られているから料理が面倒」といったことをイメージする人もいるでしょう。

「ヴィーガンチャレンジ」は、動物性食品を摂取しないヴィーガン生活を体験してみるトライアルのような位置づけです。
やり方は自由。たとえば

  • 夕食だけヴィーガンにしてみる
  • 1週間だけヴィーガン生活にしてみる
  • 週に1度はヴィーガンにしてみる

など、無理なく取り入れてみることで、新しいライフスタイルを作ることもできるでしょう。

筆者のおすすめは、パンをライ麦パンなどに変えることです。トマトペーストを塗り、植物性マヨネーズを使ったポテトサラダをはさむと満腹感あるヴィーガンサンドに。ピーナッツバターを塗り、スライスしたバナナをのせれば、濃厚な味わいのヴィーガンデザートブレッドになります。

気持ちのハードルを下げ、日常に少しヴィーガンの要素を追加してみるだけでも、環境や身体にはプラスになりますよ。

参照元:
少しずつヴィーガンを体感することで、環境や身体に対する意識や知識が高まります。フィンランドのヴィーガンスタイルのように様々な選択肢のひとつとして、もっと気軽に、そして身近にヴィーガンを取り入れてみてはいかがでしょうか。
 

ライター

Konkori(コンコリ)

旅行業界や外資系企業で働き、現在はフリーランスのライターとして活動。北欧などの自然の多い国に魅せられ、数多く渡航経験もあり。

北欧のサステナブルなライフスタイルやサステナブル・ツーリズム、ヴィーガンを含む食文化などが得意分野。