晴れた週末、家族でふらっと森へ出かけるのが、スイス流の過ごし方。我が家もスイス人の夫を筆頭に、森で楽しむBBQ「Brötle(ブレートレ)」を体験しました。森までは、自宅から徒歩15分ほどです。スイス名物の食材も、BBQに取り入れるとひと味違うスタイルに!そんなイス式BBQ体験記をお届けします。

近所の森でスイス式BBQ「ブレートレ」してみた

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

「ブレートレ(Brötle)」とは、一般的に、直火または焚き火でパンやソーセージなどを焼いて楽しむBBQのことを指します。シンプルだけど心が満たされるアウトドアの過ごし方です。ほとんどのグリルスポットは予約不要で自由に使えますが、地域によっては町で管理していることもあります。

ブレートレのベストシーズンは春から秋にかけて。4月ごろから気候も安定し、週末には家族連れや友人グループが森で過ごす姿をよく見かけます。

私たちが住んでいるのは、スイス・チューリッヒ郊外の住宅街。そこから歩いて15分ほどですぐに緑深い森へと辿り着きます。目的地のグリルスポットは、森の小道を抜けた先の広々とした場所です。

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

小学校高学年の息子と一緒に、木漏れ日が差し込む小道を歩きながら、新緑に染まる木々をながめて、森に咲くラムソンの葉に目を向ける時間は、まるで小さな冒険のよう

途中で息子が、拾った鳥の羽を見て「大きな鳥の羽だね〜」と目を輝かせていたのも印象的でした。自然の中での発見が、子どもの五感を刺激し、豊かな感性を育んでいるように感じます。

目的地に到着すると、誰かがブレートレをした形跡の、火の跡や薪の残りなどがありました。こうした「使い捨てではない」自然との共存スタイルにスイスらしさを感じます。

今回、私たちが利用したのは、石で囲んだだけの焚き火スポットですが、多くの場所で金網つきのグリル台が設置されています。

自然の中にありながら、整備された安心感があるのもスイスらしいポイントです。また、使ったあとはしっかりと片付けするのが当たり前とされており、「使った人が次の人のことを考える」という文化が定着しています。

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

日本人の私が驚いたのは、スイスでは、ブレートレは特別なイベントではなく日常のひとつだということ。幼稚園や小学校の行事としても頻繁に行われています。

息子も、幼稚園に通っていたころは「森の日」があり、先生と一緒にソーセージを持って森へ遠足に出かけていました。実は、息子の方が私よりスイス流BBQの上級者といえるかもしれません。森での体験が、ごく当たり前に子どもの成長とともにある。これがスイスの自然教育の魅力です。

また、誕生日会を森で開く家庭も多く、自然と遊びと食の融合がとても自然な形で根付いているのを実感します。森の中での遊びが当たり前になることで、子どもの身体能力や想像力も育まれていくようです。

BBQ食材だってスイス感満載!

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

グリルスポットに到着したら、さっそく小枝集め。焚き火の準備が整ったら、いよいよ調理タイムです。ブレートレには「これを持っていかなくてはダメ」という決まりはありません。自由にアレンジできるのも魅力です。今回も、家族で楽しむために、いくつかスイスならではの食材を持参しました。

定番!国民的ソーセージ「Celvelat(セルヴェラ)」

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

スイス人にとって国民的ソーセージといえば、セルヴェラ。すでに火が通っているソーセージなので、外で調理するにはぴったりの食材です。

両端に「カニ切り」や「ワニ口切り」などの切れ込みを入れてから焼くと、こんがりと香ばしくなり、見た目にも楽しい仕上がり。子どもにも大人気で、いつもおかわり争奪戦になります。

ワイルドな棒パン「シュトックブロート」

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

パン生地を棒に巻きつけて火にかざして焼く「シュトックブロート」も、子どもが夢中になるメニューです。

生地は前日に仕込んでもいいですが、スーパーマーケットで売っているピザ生地を使えば簡単。クルクル巻いて焼くと、香ばしい即席パンが完成します。自分で焼いたパンは格別で、塩気のあるセルヴェラとの相性も抜群です。

これぞスイス!即席ラクレット

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

焚き火の熱でラクレットチーズを溶かし、パンにかければ、簡単にスイス風グルメが完成!森の中で即席「ラクレット」※が楽しめます。ピクニック感覚で楽しめるのに、スイス感満載のご馳走になりますよ。

※ラクレット…ラクレットチーズを溶かし、パンやじゃがいも、野菜などにのせて食べるスイス料理

万国共通?ホイル焼き

我が家では、刻んだ野菜と細切れ肉をアルミホイルで焼く「ホイル焼き」も定番です。

パプリカ・ズッキーニ・玉ねぎなど、火の通りやすい野菜とお肉を焼けば、栄養バランスも◎の一品です。味付けは、塩、こしょうや少しのオイルをかけるだけでOK。手軽にできるメニューですが、外で食べるからこそのおいしさがあります。

デザートはスイスチョコのスイーツ

食後の楽しみには、熱々の焼きバナナに差し込んだチョコレートがとろける「焼きバナナチョコ」や、マシュマロ・チョコ・クラッカーで作る「スイス風スモア」も外せません。

とろけたチョコとマシュマロの甘さに、息子のテンションも最高潮。自然の中で食べるスイーツは、家では味わえない特別感があります。

フルーツ感をプラスしたドリンクがスイス流

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

ブレートレをより楽しくするのが、現地ならではのドリンクです。焚き火を囲みながら、おいしくいただけるドリンクを紹介します。

りんごのフレッシュジュース「スースモスト」

スースモスト(Süssmost)は、りんごをしぼった100%のフレッシュジュース。やさしい甘さが子どもにも人気で、自然の恵みを感じながらいただけます。

スーパーマーケットでは、ペットボトルのスースモストも販売しているので、事前に購入して用意しておけば持ち運びに便利です。

超爽快!ビール+レモネード「パナシェ」

スイス流BBQ「Brötle(ブレートレ)」体験記

ビールをレモネードで割った「パナシェ(Panaché)」は、夏のスイスの定番飲料です。あぶり焼きしたソーセージとの相性も抜群!アルコール度数は低めなので、昼間のアウトドアでも気軽に楽しめます。爽やかなレモンの風味とほど良い苦味が、焚き火料理や焼き野菜によくあい、暑い季節にぴったりの一杯です。

スイスで「ブレートレ」を体験して感じたのは、ただのBBQではないということ。自然の中で火を囲み、一緒に食べて笑って、そんな時間で心も体もスッキリと整えられるように感じました。五感をフル活用することは、暮らしの質を高めるものだと思います。

アルパガウス 真樹

ライター

アルパガウス 真樹

スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。