道に迷わないための対策
遭難の理由のひとつに道迷いがあります。ルートの確認はリーダーに任せきりにせず、ひとりひとりが当事者意識をもつことが大切です。迷わないための対策を3つご紹介します。
ルートを下調べする
事前のルート計画は、同行者と入念に相談し、地形を確認しながら決めましょう。たとえば、雪崩が「起きそうな場所」「通る場所」「止まる場所」を知っておくと、いざというときも落ち着いて行動できます。滑走した斜面を登り返すようなルートは、選ばないようにしましょう。
自分の位置を把握する
自分の居場所を常に把握しておくのが、迷わないための重要な対策です。行動中は地図を見て、現在地をこまめにチェックしましょう。GPS端末や、スマホのアプリも有効です。
ルートを外れたらすぐに戻る
地図やGPSを参照し、おかしいと不安に感じたら、すぐに引き返しましょう。むやみに進まず、確実にわかるところまで戻ることで、遭難のリスクを軽減できます。
滑落・転落による遭難への対策
雪山での滑落や転落により、遭難するケースもあります。危険な場所を知ることや気付くことが、事故から命を守る方法です。滑落や転落のリスクを減らすための対策を3つご紹介します。
障害物を避ける
滑走ルートに障害物があると危険です。斜面の亀裂(クラック)や木のまわりにできたくぼみ(ツリーホール)には、近づいてはいけません。落ちたら自力で出ることは困難です。障害物がないか、常に注意しながら滑るようにしましょう。
沢を避ける
沢の付近では滑走しないようにしましょう。冬季は積もった雪に覆われて沢が見えにくく、転落しかねません。体が濡れると、極寒の雪山では体温が奪われてしまいます。地図やGPSを活用して、沢の近くの滑走は避けましょう。
崖に近づかない
崖からはある程度の距離をとり、近づかないことが鉄則です。崖には雪庇(せっぴ)が発生することがあります。雪庇とは、尾根から張り出した雪の塊のこと。つまり、下には地面がないのに雪が積もっているように見える状態です。
知らずに踏み入ってしまえば、転落します。崖の付近での滑走は危険なので、崖から離れたコースを選定しましょう。
気象遭難への対策
気象情報を把握することは、遭難対策に欠かせません。遭難を避けるために知っておきたい対策を2つご紹介します。
視界の悪い日を避ける
視界を遮られたなかでのバックカントリーは、とても危険です。周りが見えにくくなるのは、どんな気象条件なのでしょうか?
吹雪によるホワイトアウト
ホワイトアウトとは、降っている雪や舞い上がった雪で目の前が真っ白になることです。すさまじい状態になると、地面と空中の区別すらつかなくなってしまいます。降雪量に加え、風速にも注意です。
ガス・濃霧
雪山ではガス・霧が発生し、視界を遮ることがあります。濃霧で前方が見えない日は、無理をせず中止を決断しましょう。風がない日や、湖や河川の近くではとくに注意が必要です。
雪崩の起きやすい日を避ける
バックカントリーでは、雪崩に細心の注意を払う必要があります。どのような気象条件だと雪崩が起きやすいのでしょうか?それまでの積雪量も関係してくるため、当日だけでなく、前日までの気象情報も確認しておくことをおすすめします。
大雪のあと
大雪のあとは雪崩が発生するリスクが増大します。雪崩とは、降り積もった雪が滑り落ちる現象です。雪が積もれば、いつでも雪崩のリスクが生じるともいえますが、大量の雪が一気に降れば、その危険性はさらに増えます。
気温が急上昇する日
気温の急上昇にともなって、融雪量が増し、雪崩が発生しやすくなります。とくに春先など、気温の変化はよく確認しておくとよいですね。
吹雪や強風のとき
風によって雪崩の危険性が高まります。風速もチェックしましょう。積もった雪には、落下しようとする力と、雪同士が結合する力の2つが働きます。風でそのバランスが崩れると、雪崩が起きるかもしれません。
すみやかな遭難救助への備え
予期せぬ事故に備え、スムーズに救助を要請できる準備が必要です。その方法をお伝えします。
登山届・入山届を提出する
滑走の予定を決めたら、登山届を作成します。登山届とは、事前に作成した登山計画書のこと。スキー場窓口や登山口で提出します。正確なルートを記載し、その通りに行動することが、万一の際の素早い救助につながるでしょう。
Webで記入から提出までできる自治体もあるので、活用すると簡単に作成できますよ。
連絡手段を確保しておく
携帯電話はフル充電し、連絡手段を確保しておきましょう。予備バッテリーもお忘れなく。電波状況が悪いエリアでは、万が一のときの連絡手段として、衛星通信できるGPS機器が役に立ちます。
2人以上で行動する
基本的には、複数人で行動します。体調や天候の変化、道迷いなどの緊急時に対応しやすくなるためです。
ただし、全員で一斉に滑走してはいけません。雪崩や転落の際、救助できる人がいなくなります。とくに、スノーボードは両足が固定されているため、脱出がより困難です。一人ずつ順番に滑走しましょう。といって、グループからはぐれないよう、つかず離れずがベストです。
もしものために備えておくべきアイテム
遭難してしまったときのために、役に立つ道具を4つご紹介します。バックカントリーに出かけるときは常に携行しましょう。
ビーコン
機械そのものが位置情報を発信し、埋もれている人の位置を特定できます。早期の救助が期待できるので、準備しておくべきアイテムのひとつです。
ゾンデ(プローブ)
雪崩に埋没した人を捜索するためのツールです。長い棒のような形状で、雪に突き刺して使います。積雪量のチェックでも使えるので、雪山に行く人は用意しておきたい道具です。
スコップ
ひとたび雪に埋もれてしまうと、手でかき出すのは至難のわざ。掘り起こすときに使うのがスコップです。ビバークの際、雪洞作りにも活躍します。持ち手が分割できるものを選ぶと、持ち運びしやすく便利です。
ツェルト
緊急時の簡易テントになるツェルト。ビバーク時に雪洞の入り口にかぶせると、防風・防寒対策にもなります。いざというときのために準備しておきたい便利な道具です。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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