国内のみならず、世界にも活躍の舞台を移しているビッグマウンテンスキーヤー、山木匡浩さん。幼い頃、家族で始めたスキーにのめりこみ、いつしか目標は基礎スキー界のトップ選手、デモンストレーターへ。その後、バックカントリーシーンに転向したのはなぜなのでしょう。今回は、山木匡浩さんに、プロスキーヤーを目指したきっかけから、お話をうかがいました。

山木匡浩さんのプロフィール

山木匡浩 バックカントリー

1975年生まれ。出身は北海道帯広市。学生時代は基礎スキーに取り組み、滑りのベースを構築。その後、2000年のマッキンリー(現・デナリ)挑戦を機に、山岳スキーの世界へ。これまで世界各国の山々に挑み続け、アラスカ・グリーンランド・パキスタン・スロベニアなどに遠征。活動の幅はスキーシーンにとどまらず、スキーをきっかけとしたムーブメントを起こすべく、ブランド「新しいスキー様式」を立ち上げ、文化的発信にも力を入れている。

きっかけはファミリーで楽しんだスキー

ースキーをはじめたきっかけを教えてください。

3歳の頃に両親が連れて行ってくれた、ファミリースキーです。帯広市は北海道の東側にあり、雪はあまり降らない地域ですが、自分は比較的スキーに行ってるほうでした。周りの友達より、スキーができたんです。そこで、「俺、結構うまいかも」って勘違いして(笑)。それで「プロになろう」って考えました。

当時、テレビでスキー番組の「SKINOW」が放送されていて、影響を受けたのもきっかけですね。スキー雑誌も買って、熟読してたんですよ。

ー雪があまり降らない帯広だと、スキー場に行くのは大変だったのでは?

近場では、新嵐山スキー場(現・メムロスキー場)に行ってました。ちょっと遠くまで行くときは、狩勝高原スキー場(現・サホロリゾートスキー場)や、富良野スキー場ですかね。

当時は雪が降らない地域の周りにも、どんどんリゾートスキー場が増えてました。スキーシーンは盛り上がっていましたね。

ー当時、シーズン中は、どれくらいスキー場に通っていたのですか?

スキーに関して親がアクティブだったので、最低でも月1回以上は通ってました。時間があるときは、ナイターにも連れて行ってもらいました。当時、スキーはブームでしたからね。スキーショップがたくさんあったし、指導員資格をもっている方も多かったですね。

 

初挑戦の大会で結果を出し、スキー漬けの毎日に

ー現在はバックカントリーシーンで活躍されていますが、はじめは基礎スキーに挑戦されていたとか。

テレビ番組「SKINOW」で活躍してたのが、デモンストレーターと呼ばれる人たちだったんです。デモンストレーターというのは、スキーを指導するための高い技術がある選手たちのことです。

デモンストレーターたちは華やかだったし、「これになったら食えるんじゃないか」と思いました。そこで、プロスキーヤーになろう、スキーで稼ごうと考えたんです。

結果、最初に設定した目標は、「全日本スキー技術選手権大会(以下、技術選)に出場して、デモンストレーターになる」ことでした。

ー目標への第一歩は、どのように踏み出されたのでしょう?

小学校6年生のときの担任の先生が、きっかけをつくってくれました。ニセコで開催されていた、「北海道ジュニアスキー技術選手権大会」を教えてくれて、初めて大会に参加したんです。

大会ではすごい急斜面で、ほぼ暴走するような滑りでしたが、いきなり2番か3番になってしまって。そこでまた勘違いです(笑)。「俺、いけてるじゃん」って。

ー中学生の頃、帯広から引っ越しされていますよね?

はい、中学校3年生のはじめの頃ですね。母親にスキーを真剣にやりたいっていったら、札幌を選んでくれたんです。

札幌に引っ越して、初めてスキーメーカーのジュニアチームに所属しました。さらに深くスキーに打ち込んで、スキー漬けの毎日を送るようになったんです。

ー大会に向けた練習と、学業の両立は大変だったのでは?

18歳から大会への出場権が与えられていたので、そこに照準を合わせていました。大学受験をしていたら、冬にスキーができませんよね。なので、推薦で大学に行けるように、高校生活を送っていました。

でも、18歳で初出場した、技術選の北海道予選では、23位か24位だったんです。全日本大会への出場ラインが22位までだったので、ギリギリ行けませんでした。

ー惜しくも予選通過は叶わなかったんですね。その結果については、どのように感じましたか?

当時は悔しかったです。でも、今思えば、あれでよかったんだと思います。いきなり通過していれば、きっとさらに生意気になっていましたね。あのときに挫折を感じてよかったんです。

結局、全日本大会への初出場は、20歳のときでした。実は、18歳での全日本出場という、最年少記録を狙ってたんですけどね(笑)。

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この記事を書いた人

MORITAX

スキー専門誌にライター・編集者として在籍し、現場取材から選手スキー技術解説記事、ニューアイテム紹介まで幅広く担当。現在はライター・編集者として、スキーのみならずアウトドア関連の情報発信にも携わる。趣味はスキーヤーとキャンプで、スキー歴は30年以上。最近はカヌーでいろいろな湖に行くのが楽しみの一つ。