ジャンルを越えて活動の幅を広げたDAIGOさん。楽しそうなことにチャレンジするうちに、マルチなスキルを身につけます。ヒップホップのライブ感覚だと話す“MC”は、まさに天職。輝かしいポストに次々と抜擢される背景には、人を惹きつける吸引力がありました。

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ヒップホップと映像制作をがんばったら「スキーで飯を食えるようになった」【DAIGOインタビュー】
ヒップホップと映像制作をがんばったら「スキーで飯を食えるようになった」【DAIGOインタビュー】

「撮らされ」ることでスタートした映像クリエイターの仕事

DAIGOさんインタビュー

ー今でこそDAIGOさんの映像作品には、雪山の中のすばらしい景色が広がるものが多いと思いますが、映像クリエイターとなるまでバックカントリースキーには挑戦されていなかったとお聞きしました。

普通にゲレンデを滑って、ちょっとサイドカントリー(コース脇)に入るくらいでした。自分の会社「REALIVE FILMS」を設立した2008年頃は、カカトが上がるようなツアービンディングはなかった。

普通のアルペンビンディングに「トラッカー」という道具を付けて登っていたし、ブーツもバックカントリースキー専用のものではなく、普通のアルペンブーツでしたからね。全然手軽じゃなかったです。

ーでは、初めて撮影でバックカントリーシーンに入ったとき、相当苦労されたのではないでしょうか。

『SKI&SNOWBOARD DVD BUILD』を制作するにあたり、出演者としてプロスキーヤーの児玉毅さん(以下、タケさん)と出会いました。そしたら「俺を撮るなら、バックカントリーからやらなきゃな」って言われて。

最初、タケさんから道具を全部借りて撮影ポイントに向かったのですが、20m登るだけでめっちゃきつくて。こんなのやりたくないって思いました。

ー機材を背負っていますし、普通のスキーヤーより大変ですよね。

そのとき、タケさんに「こんなのバックカントリーじゃないからな」って言われたのがすごく印象的で。その後に、赤井川村エリアのBCポイントに連れて行ってもらったのですが、冗談抜きに死ぬかと思いました。でも、撮れる画が他とは全然違って「これこれ!」って感動したのを覚えています。

ー『SKI&SNOWBOARD DVD BUILD』はどのようなコンセプトの元、制作されているのでしょうか。

スキー・スノーボードといったジャンルに関係なく、ウィンタースポーツの楽しさや魅力を伝える、というのがおもなコンセプトです。

スキーヤー・スノーボーダーはもちろんですが、ウィンタースポーツをしない人が見てもワクワクするような、スキー・スノーボードをしたくなるような作品を目指しています。ここ数年制作できていませんでしたが、今新作の発売に向けて、撮影真っ最中です。

ー独学で技術を磨き、常にレベルアップし続けていても、山には二度と同じ条件はないので、現場合わせや求められるセンスや撮影レベルは高いですよね。

今思えば、最初の頃のバックカントリーの撮影では「撮らされ」ていました。最初の被写体になってくださったタケさんは、スキー界ではムービースターでありフォトスターです。どこで撮ればどういう画が撮れるか、すべてイメージができているんです。

撮りたいイメージを伝えるだけで、「OK、じゃ、あそこ行け」と。そこでカメラを構えていると、タケさんがピンポイントで完璧にフレームインしてくる。すごいんですよね。この世界って半端ねえと思いました。

ー偶然なのかもしれませんが、DAIGOさんは本当に人に恵まれていますよね。

日本のトップライダーを撮れるなんて、なかなかないですよね。それもすべて人のつながりなんですよね。

チャンスをつかんだラジオDJの経験からMCに

DAIGOインタビュー2

ー現在はMCの仕事もされていらっしゃいますが、それはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

『SKI&SNOWBOARD DVD BUILD』を世に送り出すときにいろいろな場所で試写会を行ったのですが、そこで今お世話になっているFMラジオ局のディレクターから「北海道の文化を発信する番組をやってみない?」と誘ってもらったのがキッカケです。

二つ返事で承諾して、2011年の1月からMCのきっかけとなったラジオDJとしての仕事がスタートしました。

ー番組は当初1か月で終わるかもと言われていたそうですが、気づけば15年目。すごいですね。音楽もやられていましたし、人前に出るのに慣れていらっしゃったので、余裕でしたか。

全然。超ムズイ。けど、ヒップホップアーティストにはラジオ文化があるので、番組を持てるのはうれしかったですね。

ーなぜ「ヒップホップ=ラジオ」だったのでしょうか。

今でこそテレビでヒップホップが普通に流れますが、当時は流れていたのはラジオくらい。なので、ヒップホップが好きな人はラジオを録音して聴いていたんです。自分の好きな音楽がたくさん流れますからね。

ーすぐにMCの仕事が舞い込んだわけではなく、スタートはラジオDJだったんですね。

初MCは、タケさんが2011年にスタートさせて今でも続いている「POWDER FREERIDE」というキロロリゾートで開催されているフリーライドスキーの大会です。第1回のときに「お前ラジオ番組やってるんだからMCできるよな」って言われ勢いで決まったんですが、意外といい感じにハマって(笑)。

それから、雪まつり会場である大通り公園で開催されていたイベント「白い恋人PARK AIR」モーグルショーの仕事が舞い込んできて、そこでMCとしての知名度が一気に上がったのかなと思います。

ーラジオDJの難しさはどのような点にあるのでしょうか。

聞き出す、という作業は通常のインタビューと同じなのですが、プラスα時間の制限が加わります。決められた時間内に起承転結をつけて話をまとめるのは難しいですね。また、ゲストがメインなので、聞き手に回る必要がありポジション取りが難しいです。

ー今でもダメ出しってあるんですか。

めちゃくちゃありますよ。「今の聞き方どうなの?」「お前のしゃべりは日本語になっていない」って、ディレクターに突っ込まれます。

ーMCではそういったことはないのでしょうか。

DAIGOさんインタビュー

MCは感覚的にライブなんです。ビートの上でラップするのか、目の前で繰り広げられるライダーのトリックを自分の言葉でフリースタイルで話すのか、の違い。しかも、MCでは自分の好きなビートを流していることが多いので、楽しいですね。

ースキージャンプの大会でMCを担当されているのをテレビで拝見しますが、選手の情報収集などにも時間がかかるのでしょうか。

有名選手であれば覚えていることも多いのですが、出場選手はたくさんいるので、いろいろな映像を観たりネットで調べたり、とにかく選手情報を頭に入れて望んでいます。

MCとして感じたウィンタースポーツへの思い

DAIGOさんインタビュー

ーDAIGOさんがMCを担当されるようになって、さまざまなウィンタースポーツ大会の雰囲気も変わりましたよね。

札幌市が冬季オリンピック招致を表明した段階で、自分もウィンタースポーツを盛り上げたいと感じていました。海外から選手や観客が来札したときに「札幌のウィンタースポーツはやばい!」って思ってもらいたくて、自分が携わる大会ではDJと一緒に会場をクラブ状態にすることもあります。

もちろんこれは大きな変化なので、賛否両論、厳しい意見もありました。しかし、今やプロバスケットボールやプロ野球は、試合だけではなく、ショービジネスとしても成り立つように取り組んでいます。ウィンタースポーツもあの領域にいかないと、これからの発展は難しいのではと思っています。

ーウィンタースポーツ関連以外にはどのような場所でMCをされているのでしょうか。

夏はサマージャンプ、フリースタイルモトクロス、BMX、マウンテンバイク、ロードバイク、ストリートダンスなどなど。ランニングやトレラン大会も経験しました。自分のラジオ番組にゲストで出てくださるアスリートや大会関係者とも繋がれるので、そこからの依頼も多いですね。

ースキー・音楽・映像・ラジオDJ・MCとマルチに取り組まれていらっしゃいますが、すべてつながっていますね。どれもDAIGOさんには必要という感じがします。

今、音楽には思うように取り組めていなのですが、最近また創作意欲が湧いてきました。これまでは、いろいろ吸収したものをアウトプットするものが映像やMCだったのですが、これからは音楽なのかもしれません。そのとき、自分が一番やりたいものをやる。これはずっと変わらないスタイルですね。

ーDAIGOさんの活動のベースにはどのような思いがあるのでしょうか。

カッコよく生きたいですね。そのために、その時々で一番自分らしくいられる場所を探して、そこでアウトプット、最高のパフォーマンスをしていきたいです。将来のことを考え始めた高校生くらいからずっとその気持ちは変わらないです。

ーひとつのことをとことん極めるスタイルもありますが、そうではないんですね。

職人として技術を伝承し、自分なりの工夫を施していくのは確かにカッコいいと思いますが、自分にはできない。「あれ絶対楽しい」「これもいいじゃん」って誘惑が多すぎるんです。

いつも人生のターニングポイントでは、自分がこれだと感じたことに取り組んできましたが、今振り返っても間違っていなかったと思っています。

▼DAIGOインタビュー続きはコチラ

「夏に稼ぎ、冬は大好きなスキーだけしたい」。マルチプレーヤーの理想の姿とは【DAIGOインタビューVol.3】
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ラジオDJがきっかけで、MCとしての活動もスタートさせたDAIGOさん。大好きなウィンタースポーツが今以上に認知されるように、大会やイベントを盛り上げるべく試行錯誤を続けています。次回のインタビューでは、雪山で映像を撮る際のコツや、今後の展望についてご紹介します。

MORITAX

ライター

MORITAX

スキー専門誌にライター・編集者として在籍し、現場取材から選手スキー技術解説記事、ニューアイテム紹介まで幅広く担当。現在はライター・編集者として、スキーのみならずアウトドア関連の情報発信にも携わる。趣味はスキーヤーとキャンプで、スキー歴は30年以上。最近はカヌーでいろいろな湖に行くのが楽しみの一つ。