コロナ禍での葛藤
ーコロナ禍の影響で、なかなか意思決定しづらい場面があったと思います。大会が開催となった背景には、なにかあったのでしょうか?
一昨年(2020)については、残念ながら、だいぶ早い段階で大会開催の中止を選択しました。
昨年(2021)に関していうと、幸いタイミング的にはよかったんです。まん延防止等重点措置も、緊急事態宣言も出ていなかったので、開催できました。屋外で行う競技なので、きちんと対策をすれば、そんなに弱気にならなくてもよいのではと。
そういう考えで、今回の2022年の冬も無事開催に至りました。とはいえ、屋内系のイベントは、コロナ対策に関する判断が、今も慎重に行われています。
アライリゾートの魅力とは?
ーFWTを開催するうえで、大きなメリットはどのようなところでしょうか?
メリットは、なんといってもブランディング的な意味合いが一番大きいと思っています。
フリーライドという部門のなかで、聖地じゃないですけど、大会が行われているスキーリゾートになれる。僕自身も「アライリゾートでやらずに、どこでやるんだ」というふうに自信をもっています。
ーFWTを開催するまでに、大変なこともあったのでは?
そうですね。昨年6月くらいの時点では、「今期はやらない」となっていたんです。
でも、プロジェクトマネージャー的な立ち位置としては、やはり開催したい。できるようにするにはどうしたらいいか、いろいろ考えました。
後藤さんと相談しながら、2か月かけて夏の間につくり込んだんですよ。とにかくいろいろなメリットを盛り込んで。たとえば、選手向けの宿泊プラン、リフト券の優待、ガイディングプログラム、セーフティーワークショップなどです。
難しいのは、なかなか費用対効果を出しづらいところです。というのも、大会参加者の方々は、普段からアライリゾートにきてくださるお客様なんですね。春にアルペンスキーの強化の大会もやりますが、アルペンの選手って普段なかなかこない方たちなので、すごく効果測定しやすいんです。
ーFWQの場合、いつもきている方たちが参加者なのですね。
そうなんですよ。つまり、FWQの大会をやることで、「こういう新しい売り上げが生まれました」というのを説明するのが難しいんです。
そこで、宿泊プランなどの商品づくりを今年初めてやってみました。そして、「黒字化を目指せるイベントにできる」というプレゼンを社内へ行ったんです。
結果、社内からの理解を得て、開催できました。そのときは後藤さんにも現地まできていただいたんですよ。
ー黒字化を目指すためには、さまざまなニーズを満たす必要があるのではないでしょうか?
そうですね。まず、2つのニーズがあります。ひとつは、アクティビティがメインのインバウンドやファミリー層。そして、バックカントリースキーやスノーボードを行うハードコア層。それぞれのニーズに応えるためには、一筋縄ではいかないところがありました。
ー大会が終わった今、結果の手ごたえはいかがでしょう?
参加人数としては、おそらくロッテアライリゾートの大会の出場者が一番多いと思います。ジュニアまで入れると、今年110名になりましたし。
また、しっかり数字を追い求めていくと、赤字なイベントではない形になったんですよ。リフトの優待や宿泊などの収支を拾い上げていくと、そんなに悪い形じゃない。こういうリゾートが展開するイベントで、黒字化できるものって、なかなかレアだと思っています。
ー大会の内容がレベルアップしてきている感じでしょうか?
それは感じます。最初は、やることだけに意義を感じて、開催していたところもありました。今は数字的な満足度も含めて、大会の内容がレベルアップしてきている。あれだけの斜面であれだけの装飾をして運営ができるのって、ほかにはないと思いますし。
パトロールスタッフも協力的で、「常駐2名でよいですよ」というところに、常に4~5人いてくれます。選手の応援をすごくしてくれたりとか。チームワークの厚みがあるんですよ。
ーアライリゾートの魅力は、どのようなところにあるのでしょうか?
リフトでアクセスできて、3*(スリースター※大会レベルのこと)を開催できるところですね。たぶん世界的に見ても、まれなのではないでしょうか。
「2*(ツースター)が3*(スリースター)になった」といっても、一般的には伝わらないところかもしれません。でも、僕らにとっては「評価されている」という意味になるので、そこは誇りに思っています。
「国内のゲレンデで、スリースターを開催している」ということは、価値のわかる方には本当に理解してもらえる。選手が一番応えてくれています。
とくにスキーの男子など、かなりレベルが上がってきているんですね。選手のレベルアップを見ているとうれしくて、昨日は僕も運営そっちのけで、はしゃぎっぱなしでした。本当に、続けてきてよかったなと思います。
去年の夏、こんな無理をしないで開催中止の決定をしていれば、今この時期は全然楽なんですけど。ちょっとプライドが許さなかったんです(笑)。
この記事を書いた人
Yoco
山岳部出身の父のもとに生まれ、自然を相手に楽しむ事が日常的な幼少期を過ごす。学生時代は雪なし県ザウス育ちの環境で競技スキーに没頭し、気がつけばアウトドアスポーツ業界での勤務歴は20年程に。ギアやカルチャーに対する興味は尽きることなくスキー&スノーボード、バックカントリー、登山、SUP、キャンプなど野外での活動がライフワークとなりマルチに活躍中。最近ではスケートボードや映像制作にも奮闘中。