海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックによる海洋汚染が、私たち人間にも悪影響があると懸念されるなか、一部では「影響なし」とする報告も公表されています。マイクロプラスチックが人体に影響がないというのは本当なのでしょうか。

マイクロプラスチックの影響

マイクロプラスチック 海洋生物

海や海岸沿いでは、レジ袋を食べるウミガメ、プラごみが絡まり命を落とすアザラシなどの海洋哺乳類、プラスチックを大量にお腹にためて死んだ海鳥などが多く見られます。

プラスチックごみは、こうした海洋生物への直接的な被害に加え、小さなマイクロプラスチックによる人体への悪影響も懸念されています。

マイクロプラスチックとは、大きさ5mm以下のプラスチック粒子のことです。

小さいことであらゆる海洋生物が体内にマイクロプラスチックを取り込み、食物連鎖によってやがて私たち体の中にもマイクロプラスチックが取り込まれていくと考えられています。

 

マイクロプラスチックの人体への影響

マイクロプラスチック 海洋生物

マイクロプラスチックの人体への影響が懸念されるなか、一部ではマイクロプラスチックは「人体に影響なし」とする研究結果があります。

2019年8月22日に世界保健機構(WHO)は、飲料水に含まれるマイクロプラスチックは体内で吸収されることなく排出されため「健康リスクなし」とする報告書を公表しています。

プラスチックが破壊されて細かくなった「マイクロプラスチック」による海洋汚染が世界中で問題になっている中、世界保健機関(WHO)は22日、「マイクロプラスチック」が混入した飲料水について、現状の検出レベルでは健康リスクはないとする報告書を公表した。
出典:BBC

WHOによれば、報告書は限られた情報に基づいたもので更なる調査が必要としていますが、はたして本当にマイクロプラスチックは人体に影響はないのでしょうか?

 

マイクロプラスチックの問題

マイクロプラスチック 海洋生物

マイクロプラスチックが体内に入り込むことで心配されるのは、その毒性です。

ひとつはプラスチックに含まれる添加剤の毒性で、加工するために使用される化学物質の中には、発がん性や環境ホルモンとして作用する疑いがあります。

もうひとつは、海中には毒性が高く、現在は使用が禁止されている殺虫剤のDDTやPCBs(ポリ塩化ビフェニール)などを含めた毒性のある物質が残り続けていることです。

プラスチックには、汚染物質を吸着しやすい性質があるので、こうした毒性の高い物質も取り込んでしまう可能性があるのです。

 

世界の海を漂うマイクロプラスチック

マイクロプラスチック 海洋生物

マイクロプラスチックは、砕けるたびに新しい表面が現れ、添加剤が溶けだす機会が増えます。

また、表面積が大きくなることで汚染物質を吸着しやすくなり、小さいゆえに海流に運ばれやすく、海のあらゆるところで拡散していきます。

つまり、マイクロプラスチックは汚染物質を海の隅々まで行き渡らせる運び屋の役割もあるのです。

マイクロプラスチックは北極や南極でも見つかっており、すでにプラスチックが見つからない海はどこにもないと考えられています。

 

プラスチックごみが魚の量を超える

マイクロプラスチック 海洋生物

プラスチックが問題なのは、分解して自然に還ることがなく、海に流れ出したプラごみはすべてがたまり続けていくことです。

国際機関である世界経済フォーラムによれば「2050年には海洋プラスチックごみの量が魚の量を超える」というショッキングな予測を発表しています。

世界のプラスチック年間生産量は約3億3500万トン(2016年) と試算されおり、現在のペースでプラスチックが生産されていけば、2050年までに累計330億トンのプラスチックが生産されると予測できます。

仮にそのうち3%のプラスチックが海に流入したとすると総量は10億トンとなり、魚が重さの総量が8億トンなので、プラスチックは魚の量を超えてしまう計算になります。

この数字に異議を唱える人もいますが、大量のプラスチックが海に流れ込んでいることは間違いないといえるでしょう。

 

北極圏にもマイクロプラスチック

マイクロプラスチック 海洋生物

ドイツとスイスの共同研究チームの調査で、とてもショッキングなことがわかりました。

北極圏で降る雪の中にマイクロプラスチックやゴム粒子が含まれていることが明らかになったというのです。

北極圏で小さなプラスチック片が雪に交じって降っていることが、最新の研究で明らかになった。1Lの雪から1万個以上のプラスチック片が発見されており、科学者はその数に衝撃を受けたと話している。
出典:BBC

マイクロプラスチックの汚染はもはや海だけでなく、地球全体に及んでいる可能性があるということです。

これでもなお、マイクロプラスチックは人体に影響がないといえるのでしょうか?

確かにWHOの報告書のように”現在”の検出量では、マイクロプラスチックが人体に及ぼす影響はないのかもしれません。

しかし、このままマイクロプラチックが増えていったら、私たちの健康にどのような影響を出るのかわかりません。

マイクロプラスチック問題は、私たちひとりひとりが真剣に向き合うべき環境問題なのではないでしょうか。

WHOの公表を知って「マイクロプラスチックは人体に影響なし」と考えている人がいるかもしれません。しかし、報告書はあくまで限定的な研究結果であって、将来も同じとは言い切れません。プラスチックごみ問題の現状を知って、今どんなアクションができるのかを考えていくことが大切ではないでしょうか。

ライター

Greenfield編集部

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