全国的に増えている竹林の荒廃。さまざまな問題が起きますが、放置された竹林を有効活用する方法があります。そのひとつが、副産物タケノコを食べること!タケノコといえば孟宗竹(モウソウチク)が一般的ですが、少し遅れて5月から梅雨の時期に収穫できるのが真竹(マダケ)です。その幼竹を使った純国産メンマの作り方を紹介します。おいしく食べるSDGsとして、おつまみやラーメンにぜひどうぞ。
荒廃する竹林問題と有効活用する方法
竹は非常に繁殖力が強く、地下茎(チカケイ)を伸ばして増えます。地下茎から地上に顔を出したものをタケノコとして食しますが、短期間で成長します。放置すると、近隣の田畑や住宅の敷地に侵入して地域問題に発展することも。この問題を解決するためにとられている対策について紹介します。
竹林を放置すると起こること
いったん荒れてしまった竹林や、傾斜地での竹林整備には多大な労力を伴います。所有者が高齢化し、整備ができなくなったり、山間地の所有者が不明確になったりすることで、年々、放置竹林は増え続けています。そして、竹林が荒廃すると以下のような弊害のおそれがあります。
- 近隣の土地に侵入し迷惑をかける
- イノシシなどの隠れ場所となり、近隣に獣害が起きる
- 枯れた竹が水路を塞ぎ、土石流の原因となる
- 地下茎は約30cmと浅く、急斜面で広範囲の崩壊の危険がある
このような問題に、全国でさまざまな対策がとられています。
おいしく食べて竹林整備
「おいしく食べて竹林整備」が合言葉の純国産メンマプロジェクト。増加する放置竹林の資源化を図るために作られた全国組織で、活動の輪が広がっています。荒れた竹林の間伐は大変ですが、いったん整備したあとは、収穫しやすい幼竹(ヨウチク)の状態で伐ることで、竹林管理が容易になります。
伸びた幼竹は、食用のタケノコとしての価値は下がりますが、収穫後は塩蔵して加工後、メンマとして収益化することで、持続可能な竹林整備の実現を目標とする団体もあります。
竹の有効活用で脱炭素化
マダケは、カゴやザルなど生活用品で広く使われていました。1960年代、マダケの開花・枯死が全国で一斉におこり、高度経済成長期とあいまって、プラスチック製品が普及するきっかけになったとの説もあります。
メンマでの消費や、旧来利用されていた建築資材や竹炭・日用品としての利用の見直しとともに、脱炭素化にむけて竹林の間伐材を利用したさまざまな製品の研究開発がすすめられています。一例を紹介しましょう。
- 洗剤
- 抗菌剤
- 繊維
- 地盤改良材
- 飼料
- バイオマス など
竹イノベーション研究会(代表:福岡大学 佐藤研一教授)では、企業・大学・地方公共団体・各地のNPO法人などの取組みを集約して、従来の竹材利用だけではなく、製品利用の研究開発・サプライチェーンの構築など、基礎研究から実用技術まで、竹の未来を考えるプロジェクトを推進しています。
竹林整備の副産物メンマでSDGs!
「メンマ」の名前の由来は、老舗の製造・販売会社である丸松物産株式会社の創業者が「ラーメンに乗せる麻竹(マチク)」から命名したといわれています。竹林再生とメンマにはどんな結びつきがあるのでしょう?
日本のメンマの自給率
日本で食べられているメンマでは、90%以上が中国南部や台湾原産の麻竹(マチク)が使われています。麻竹には糖類が多く含まれ、発酵と乾燥したのち、日本に輸入され加工されます。
日本において、麻竹はほとんど自生も栽培もされていません。日本で食用とされる竹の多くはモウソウチク・マダケ・淡竹(ハチク)になります。
今こそメンマ自給率を上げるチャンス?
食品の値上がりが続く昨今、ラーメン店においても食材や光熱費の高騰で、値上げを余儀なくされる店舗が増えています。メンマにおいても、円安・中国国内での需要増・麻竹生産農家の減少などの要因で、大幅な値上がりとなっています。
楽観的すぎるかもしれませんが、この機に純国産メンマの競争力がアップし、各地での生産量拡大、加工コストが下がり、自給率も上がる・・・というストーリーは描けないでしょうか?
国産タケノコでメンマ作り|収穫&塩蔵
メンマを手作り・・・まずは材料の収穫と下ごしらえから。マダケまたはモウソウチクのタケノコをメンマにするための準備です。
収穫するタケノコのサイズ
マダケのタケノコは、30~50cmくらいのものがおすすめです。メンマ用には120cmくらいのものまで、太いものならそれ以上も調理可能です。モウソウチクの場合、2m前後の幼竹を切り出します。
タケノコの塩蔵(えんぞう)方法
販売用のものは各部位ごとに分けられていることが多いですが、家庭で調理する場合、1回分、約1週間で食べきれる分の、穂先・中間部・元部を合わせて塩蔵すると便利です。
- 皮に縦の切れ目を入れてむきます。太いものやモウソウチクなら先に縦に割るとむきやすくなります。
- 元部(下の太い方)の節の下部がやや硬いので、包丁が入るくらいのところで切り離します。そのまま中間部まで、節を避けて輪切りに。
- 上部や穂先は節までやわらかいので輪切りにせず、縦半分に切り落とします。ラーメン用なら見栄えがよいので、この部分を長めに残しておきましょう。
- たっぷりのお湯でアク抜きをします。収穫したてなら米ぬかは不要。元部と中間部をこまめにアクをとりながら約30分茹で、穂先を入れ20~30分茹でます。
- 穂先の姫皮(ヒメカワ)をはずして、別どりしておきます。
- 火を止め、水切りをして、温かいうちに(40℃くらいで)全体に均一に塩をまぶし、ポリ袋に詰めて空気を抜きます。※ゆでタケノコに対し塩30%
- 漬物樽に重しを乗せて常温で塩蔵します。約1日で水が上がり全体が塩水に漬かる状態で安定し、1年以上保存が可能となります。塩蔵1ヶ月くらいからが食べごろです。
上記の塩蔵レシピは「純国産メンマプロジェクト標準作業手順書」に準拠し、家庭での作業に置き換えて紹介しました。同プロジェクトの各団体は販売用として法にもとづいた作業で製造しています。家庭で塩蔵する場合、容器等の消毒を徹底し、食べる前には十分な熱を加えるなど、衛生管理をお願いします。
おつまみやラーメンに!純国産メンマレシピ
塩蔵したタケノコをさまざまレシピで味付してみたなかから、やっぱりコレ!というレシピをご紹介します。タケノコの旬は短いですが、塩蔵さえしておけば、思い立った時に塩抜きして、さまざまなバリエーションで楽しめますよ。
下ごしらえ:塩蔵タケノコの塩抜き方法
料理に使う前に、まずは塩蔵したタケノコの塩抜きからスタートしましょう。
材料(2人前×2種)
- 塩蔵メンマ 200g(各部位混合)
- 水 適量
方法
- 塩蔵メンマを流水で洗う
- メンマの5倍の湯を約80℃で火を止め、メンマを浸す
- 30分ほど浸したら、湯を捨て同量の水に約1時間浸す
- 塩気が残っていたら、2と3を繰り返す
※やや塩味が残っていてもOK
ピリ辛おつまみメンマ
八角の甘み、ピリリと花椒(ホアジャオ)を効かせて、ビールのおともにいかがでしょうか?梅雨時の晩酌にうれしいおつまみです。
材料(2人分)
- 塩抜きしたメンマ元部 約100g
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 濃口しょう油 大さじ1
- 鶏ガラ出汁(顆粒) 小さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
- 八角 1コ
- 輪切り唐辛子 ひとつまみ
- 花椒 少々
つくり方
- メンマ元部を厚みに合わせて正四角柱にカットする
- スキレットに花椒以外の材料を入れ、水分がなくなるまで煮詰める
- 煮詰まってきたら花椒をかける
煮詰める際に焦がさないよう注意してください。熱いうちはとがった味でも、冷めると少しまろやかになります。
やっぱりラーメンに乗せたい!穂先メンマ
ラーメン屋さんのメンマが少なくなったように感じているのは筆者だけでしょうか?自分で作るなら思いきり乗せたいですね。お気に入りの店の味に近づけるよう調理してみました。
材料(2人分)
- 穂先メンマ 100g
- 水 150cc
- 酒 大さじ1.5
- 薄口しょう油 大さじ1.5
- みりん 大さじ1
- カツオ出汁(顆粒) 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
つくり方
- 鍋に材料をすべて入れ、沸騰する直前に火を落とし、弱火で15分煮る
- そのまま冷まして、粗熱がとれたら保存袋に入れ、冷蔵庫で約3時間保管する
ラーメン用に味付けする場合、スープの味を邪魔しない薄味がおすすめです。冷ましてから味見をして、味が足りないようなら再度煮詰めてください。
ライター
Maita
アウトドア大好きなフリーランスのフードコーディネーター(FCAJ認定/1級)&Webデザイナー。こだわって作った『つくりおき料理』で楽しいキャンプ飯を考案。また、日本各地の固定種・在来種の食材を使った料理を手掛け、地域の食文化の継承を模索している。一人でも家族でも仲間でも楽しめる、そして地球にやさしいレシピを提案していく。