箒(ほうき)は「昔の掃除道具」というイメージを持っている人もいるかもしれません。けれど、電気を使わず、手に取るだけですぐに始められる箒掃除は、いまの暮らしにも自然に馴染み、無理なく続けられるサステナブルな掃除方法です。この記事では、著者の体験をもとに、箒掃除の取り入れやすさや暮らしの中で感じた変化、負担にならない掃除習慣についても紹介します。

掃除機が壊れた日、箒のある暮らしが始まりました

箒 掃除

以前の私は、掃除道具に掃除機以外の選択肢があるなんて、考えてもいませんでした。ある日、購入して間もない掃除機が壊れ、「またすぐに新しい掃除機を購入したくない」という思いから、他に良い掃除方法はないか、探し始めました。

そのとき思い浮かんだのが、家の中を丁寧に箒で掃く祖母の姿です。もしかしたら、自分にも箒掃除で十分なのでは。そう感じ、好奇心で箒掃除を始めてみることにしました。

とはいえ、これまでの掃除習慣を大きく変えることに、不安がなかったわけではありません。最初の一歩を軽くするため、リビングの見える位置に箒を置き、思ったときにすぐ手に取れるよう、動線を整えました。

ワンアクションで始められる箒掃除の身軽さは、思った以上に好感触。当初の心配はよそに、箒掃除は少しずつ暮らしの中に馴染んでいきました。インテリアとしても存在感のある箒は、ふと目に入るたびに自然素材ならではの美しさを感じさせ、日々の暮らしをさりげなく彩ってくれる存在にもなっています。

私が選んだしゅろ箒。手仕事を感じる美しさ

箒 掃除

「箒」とひと口にいっても、その種類はさまざまです。日本では古くから、棕櫚(しゅろ)や竹、箒草(ほうきぎ)などの素材が使われてきました。数ある箒の中で、私が迎えたのは、しゅろ箒です。

しゅろ箒とは、ヤシ科の植物「棕櫚」の繊維を使って作られた箒のこと。繊維には適度なコシとしなやかさがあり、床を傷つけにくいのが特徴です。日本では昔から、畳や木の床の掃除道具として親しまれてきました。

ある日、立ち寄った生活雑貨店で目にしたしゅろ箒は、一本一本の繊維が丁寧に束ねられ、職人の手仕事がそのまま伝わってくるようでした。見た目の美しさはもちろん、しっかりとしたつくりで、長く使える道具であることがわかりました。

実際に床を掃いてみると、地面に沿うように繊維が広がり、力を入れなくてもゴミが集まっていく感触があります。使い心地はもちろん、使い込めば使い込むほど、箒の先の繊維が少しずつ艶を帯びていく姿も美しく、手仕事の道具を使う喜びを、日々の掃除の中で感じさせてくれます。

実際にやってみて気づいた、箒掃除の心地よさ

箒 掃除

箒掃除を続けるうちに、掃除に対する印象が少しずつ変わっていきました。ここでは、実際に使ってみて感じた、箒掃除だからこそ得られる心地よさをお伝えします。

音がない、掃き清める感覚を楽しむ

箒掃除を始めて、まず驚いたのは音の静けさでした。掃除機のモーター音がないだけで、作業そのものが驚くほど落ち着いた空間の中で進みます。無心で箒を動かしていると、自然と気持ちもすっきりしていきます。在宅ワークの日は、仕事を始める前にひと掃きするのが、いつの間にか習慣になっていました。

また、音を立てずに掃除ができるため、早朝や深夜、子どもの昼寝中でも、気になったタイミングで気兼ねなく使えるのも、箒掃除ならではのメリットです。

手に取った瞬間から始められる

箒掃除は、準備がほとんどいりません。やりたいと思ったときに、箒を手に取るだけですぐに掃除を始められます。掃除機の場合、形状によって充電残量を確認したり、コンセントを探したりと、使う前に少し準備が必要でした。掃除後も、フィルターやノズルの手入れなど、気にかけることが意外と多かったように思います。

その点、箒掃除は終わったあとも、繊維に絡んだゴミをさっと取り除くだけ。手入れに手間がかからない分、「掃除しよう」と思うまでのハードルが、自然と下がっていきました。

使うほどに、箒が馴染んでいく

私が愛用するしゅろ箒は、使い続けるうちに少しずつ風合いが変わっていきます。繊維に艶が出て、手に持ったときの柄の感触も滑らかになり、自分の手に馴染んでいくようです。

劣化ではなく、変化を楽しめることは、天然素材ならではの魅力。これからどのように質感が変わっていくのかを想像するのも、楽しみのひとつになっています。

箒が教えてくれた、サステナブルな掃除のかたち

箒 掃除

箒掃除を続けてきて感じたのは、無理をしなくても、暮らしの中で自然と環境への負担を減らせているということでした。ここでは、箒掃除を続ける中でみえてきた、未来につながるこれからの掃除のかたちについて触れていきます。

電気を使わずに、部屋をきれいに保つ

箒掃除には、電気が必要ありません。一方で、毎日の掃除で当たり前のように使っていた掃除機は、1回に使用する電力はさほど大きくないものの、積み重ねれば少なくない電力を消費しています。それがゼロになるということは、数字以上に、大きな変化をもたらしてくれるように感じました。

掃除機を使わなくても、埃やペットの毛まできちんと集められるのも、箒掃除の頼もしさです。特別な機能があるわけではありませんが、床に沿って掃けば、ゴミは自然と手元に集まります。そのシンプルな仕組みは、長く使うほどに信頼できるものだと感じています。

また、箒掃除は、子どもにも気軽にお願いしやすい点も魅力でした。重たい機械を扱う心配がなく、「ここを掃いてくれる?」と声をかけると、遊び感覚で手伝ってくれることもあります。掃除が特別な作業ではなく、暮らしの中の自然な一コマとして共有できるようになりました。

「壊れて、処分して、買い替える」からの卒業

掃除機は、数年使えば不具合が出たり、修理より買い替えを選ぶ場面も少なくありません。壊れたら処分し、新しいものに替えるというサイクルを何度も繰り返す必要があります。一方で、箒は手入れをしながら使えば、何十年と使い続けられる道具です。買い替えを前提としない暮らしは、結果的にゴミを減らし、ものとの付き合い方を見直すきっかけにもなるでしょう。

まさに「一生もの」ともいえる箒。汎用性が高く、これがあれば大丈夫、と思える頼もしさがあります。ひとつだけを大切に使うのも、場所に合わせていくつかを使い分けるのも、その人の暮らし方次第です。「箒は昔の掃除道具」というイメージは確かにありますが、実は現代の暮らしにも、無理なく取り入れられる掃除の形なのだと感じています。

私は大型の掃除機は手放したものの、ハンディタイプの小さなものは、車内の清掃など、どうしても箒では対応できない場面用に残しています。無理にひとつに絞らず、場面に応じて使い分けることが、結果的に掃除を続けやすくしてくれました。まずは掃除機と併用しながら、玄関や部屋の一角など、ひとつの場所から。無理なく心地よく続けられる道具として、箒という選択肢を加えれば、掃除の幅はぐっと広がるかもしれません。

AYA

ライター

AYA

静岡県出身。海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ち、結婚後に、タイ・バンコクへ移住。病気がきっかけで、ヴィーガンのライフスタイルに目覚める。現在は、2児の母として子育てに奮闘しながら、人と環境にやさしいサステナブルな暮らしを実践中。自身の経験をもとに、ヴィーガン、環境問題、SDGsについて情報を発信している。