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全国的に増加している英語が学べる幼稚園・保育園のプリスクール。教育内容は園によって様々ですが、リアルタハラのようにスケートボードを取り入れているところは至極珍しいと言えます。今回は、そのスケートボード保育教育を掘り下げていきたいと思います。
 

スケートボードスクールとの相互関係

リアルタハラ スケートボード

ーリアルタハラの特徴のひとつとして、保育にスケートボードレッスンを取り入れていることが挙げられると思いますが、レッスン自体はプリスクール開園以前から行っていたのですか?

はい、もちろんです。豊橋にある高山スケートパークという屋内パークで、昔から月に一回スクールを定期的に行っています。なのでリアルタハラにもその経験は活きていますし、リアルタハラでの経験も高山スケートパークのスクールに活きています。

わかりやすいところで言うと受講生の顔ぶれですね。スクールに参加してくれたスケーターがプリスクールに通う園児の親族で、プリクールには入らなかったけど、話を聞いたらスケートボードがやりたくなっので受けにきましたという子もいます。

卒園生が小学校に入学して、そこでできた友達も来たりしています。だから毎回定員オーバーになるくらい多くの人が来てくれています。

ーでは教える内容にはどんな違いがありますか?

基本的にリアルタハラでは毎回同じ子に教えますが、高山スケートパークいつも教える人が入れ替わるので、まずそこで教え方は変わってきます。

自分の場合、教えるのは大半が初心者なので、受講者が入れ替わるとなると毎回基本中の基本である足を置く位置からスタートします。完全な初心者で本当に何も知らない子供に教えるとなると、そういうところから細かく丁寧に教えなくてはいけません。

何回かレッスンを受けているような子であれば、どれくらいのレベルにあるのかも理解していますし、次に何をやれば良いのかも頭に入っているので、それぞれレベルにあったレッスンを行っています。

 

次の目標が明確になるチャレンジシート

リアルタハラ スケートボード

ーだからリアルタハラではそこを明確化するためにチャレンジシートのようなものを作っているのですね!?

その通りです。リアルタハラではOllie Challengeというタイトルで、足をしっかりした位置に置けるかという基本中の基本から、オーリーでスケートデッキを飛び越えられるのかまでを13段階に分けてリスト化しているんです。

練習をしてある程度できるようになって、次のレベルに行きたいと思ったらテストを行って、3トライ以内にメイクすればクリアという課題を与えて、常に次の目標が見えるようなシステムを構築しました。

また園児たちには、可能な限り楽しみながらなるべく早く上達してもらいたいので、レッスンをレベル別にA・B・Cの3チームに分けることも行っています。

Cは自分で移動してターンまでできるようになったら、BはドロップインとF/SとB/Sの両方のターンができてトリックの練習に入っていたら認定、Aはそれら以外の技が増えてきていろいろなところにかけられるようになったら認定という形です。それにチーム認定まで至らない初心者を加えた合計4グループが、別々になってそれぞれ近いレベルの子達とレッスンすることで、お互いの仲間意識や競争意識を育み、目標を持って上のチームを目指そうという意識付けをしています。

リアルタハラ スケートボード

幼児の認識力に合わせた教え方

リアルタハラ スケートボード

ーただ同じ子供に教える場合でも、相手が幼児なのか小学生なのか、それも低学年なのか高学年なのかで違いは出てきませんか? その場合に意識していることや大変なこと、注意点があれば教えてください。

もちろんいろいろな違いがあります。そのひとつが幼児だとレギュラーなのかグーフィーなのかスタンスを覚えるのが大変だということです。

そもそも幼児にはスタンスという概念そのものがないので、この前はレギュラーでやっていたけど、今日はグーフィーでやっていたり、フェイキーになっていたいうことはよくあるんです。

だから自分は園児の写真に、やり始めた当初のスタンスや最もスムーズだった際のスタンスが、レギュラーなのかグーフィーなのかわかるように2種類のステッカーを貼って見分けるようにしています。

そうすればレッスンの時に個人に合わせて、まずはこの足の置き方を覚えてねと教えることができるので、とても大切なことだと思っています。

 

スタンスを覚えることの意味

リアルタハラ スケートボード

ーなぜ最初にそこまでスタンスを覚えることにこだわるのですか?

それは最初にスタンスを覚えないとすぐに行き詰まって、壁にぶつかって次のレベルに進めないからです。

仮にスケートボードに乗って移動ができるようになったとしましょう。そうなったら誰もが次のレベルに進みたいと思いますよね?

その時に毎回置く足の位置が違って、逆に置いたりフェイキーになってしまったりすると、移動はできてもその次の段階のトリックに発展させることができなくなってしまいます。

ターンをしようとしても、そもそもスタンスが整っていないことにはどうしようもありません。

だから、小さい子にはいつもデッキを足で跨いだ状態で前足から先に置くように伝えています。

それが左足ならレギュラースタンスですし、右足ならグーフィースタンスになりますが、毎回合っているのかをしっかり確認するようにして、正しい乗り方を身につけてもらうようにしているんです。

ーそのような跨いだ状態から足を置くことが、自分のスタンスを見つけるには最も適した方法だということなのでしょうか?

はい。跨いだ状態から前足を置いて、それを見て、考えて乗ることでスタンスは決まってきます。

だから自分は目の前にデッキを置いて立った状態で乗ることは禁止にしています。小さい子と本当に初めての初心者は今まで数多く見てきましたが、これは間違いのない事実です。

ある程度の年齢になると理解力が増してスタンスの概念もわかるようになりますけど、小さい子にはそれがありません。なので概念を覚えてもらうことから始めることが、今後の上達を考えてもすごく重要なんです。

大人からしたらすごく簡単に理解できる当たり前のことが、当たり前ではないのが幼児なので。そういった事まで大人が理解してあげて、ひとつひとつのことを丁寧に伝えて、どう覚えてもらうかがすごく大切なんです。

 

ヒザの使い方の重要性

リアルタハラ スケートボード

ーなるほど。ではその他にスケートボードにおける幼児教育で意識していることはありますか?

足を”意識して”曲げるようにする練習ですかね。小さい子は脚力がないのもあって、足を伸ばしてしまいがちで、ヒザがうまく使えないことが多いんです。

デッキに乗ったら両足を真っ直ぐにしてぴーんと立つ子がほとんどですね。ただそれだと当然進行方向には進めないので、立った状態で足を曲げるところから始めるようにしています。

こういうところも、大きくなるにつれて理解力が増して原理が理解できるので、「もうちょっとしゃがんでー!」っていうと「わかったー!」と、すぐにできたりします。

しかし、小さい子の場合はこちらから一緒にしゃがんであげて、細かいところまで見せてあげることがすごく大切なんです。

あとは当たり前のことですが、プロテクターは絶対につけています。小さな子は思いがけないところで急に転ぶので絶対に必要ですね。

2~3歳は、スケートボードをする以前に日常生活でもうまくできないことが多い年齢です。

例えば階段の登り下りにしても、左右の足で一歩ずつ上がって行くのが普通ですけど、その概念すらなくて片足ずつゆっくり上ることしかできないという子も多いです。

だからそこに至るまでの一番最初の基準を、こと細かく丁寧に教えてあげる事が本当に大切になってきます。

 

保護者のスケートボードに対する理解

リアルタハラ スケートボード

ー幼児達の用具類はどのようにして調達しているのですか?

基本的にはプリスクール内にあるfocus skateboard shopで買ってもらうようにしています。

特にここで買わなければいけないとはしていませんが、仮に他で買ってしまって、それが用途に合わないものだとこっちも困ってしまうので、そこはこっちからしっかり説明して、納得してもらった上での購入を勧めていますね。

実際にスケートボードのことを何も知らない親御さんだと、ブレイブボードとの違いもわからない人がいて、それを知らずに購入してしまう人もいます。

仮にスケートボードがどんなものかは理解していても、ペニーのようなプラスチック製のクルーザーとの違いがわからない親御さんも当然のようにいらっしゃいます。

なので、そこは自分が丁寧にアドバイスをして、間違いのないもの購入してもらうようにしています。なのでfocus skateboard shopは、幼児向けのギアは常に豊富にストックするようにしています。

ーいろいろな教育方針がある中で、預かる幼児の親御さんはスケートボードを楽しむ方ばかりではないと思いますが、スケートボード(スポーツ)を通じて、スケートボード特有の文化によるご両親への影響はどのようなものがありましたか?

確かにリアルタハラに通う園児の親御さんはスケートボードをやらない人達の方が圧倒的に多く、実際にやっている方は数人しかいません。

過去には本当はインターナショナルスクールだけで入れたい、スケートボードはどうでもいい。でもやっているのは知ってるし理解はするけど、無理にはやらせないで! と言われたことも当然のようにあります。

でも今は地域に認めてもらえるようになってきたのもあって、「スケートボードってカッコいいですね! ウチの子供もできたら良いなぁ」といった声や、「スケートボードのことは全然わからないけど、子どもがトリックしているところを想像するだけでワクワクします! 」といった声の方が圧倒的に多くなりました。

入園理由にしても、ピーターっていうスケボーを教えてくれる先生がいて、しかも「プリスクールで保育の一環でできるって聞いたから入れたいです」っていう親御さんも増えましたし、皆と同じようにやらせてくださいという方がほとんどですね。

それに僕がプリスクールを運営している田原市は、伊良湖岬もあってエリア的にサーフィンが楽しめる地域でもあるんです。

土地柄このようなアーバンスポーツカルチャーに理解のある親御さんが多いというのもあるのかもしれません。

最近はオリンピック競技になったこともあって市をあげてサーフタウンだというので推していますし、市の職員もそういった街づくりに興味を持ってくれています。

それならスケートパークも造ろうかという話も実際に街の議題に上がっているので、そういったところでも地域に尽力いきたいですね。

 

スケートボード保育をして良かったこと

リアルタハラ スケートボード

ー保育にスケートボードを取り入れて良かったなと思うことはありますか?

もちろんたくさんありますよ。そのひとつに過去に心臓病の子が自分のスクールに入った事があったんですが、その子は水泳やランニングはできなかったのにも関わらず、スケートボードはできたんです。

そこまで心臓へ負担をかけずに遊べるという点が、親御さんにとってはものすごく心強いといっていました。

「私はバスケが大好きだったんですけど、子どもにやらせることはできませんでした。でもスケボーは病気を持っていてもできたので、やらせて本当によかったです!」という言葉を聞いた時は、本当に保育に取り入れてよかったなと思いました。

あとは、スケートボードを始めたことで各地へトリップする機会が増えて、子どもだけではなく親御さんの視野も広くなったことですかね。

そもそも基本的にリアルタハラがある田原は農業の町なので、土地柄作物のことを考えなくてはならず地元からなかなか出ないっていう人が多いんです。

だからおのずと子どもたちの行動範囲も狭くなりがちでした。

実際にリアルタハラに通う子どもたちも、隣の豊橋市にあるスケートパークですら行った事がないという子ばかりで、ウチのスケートパーク以外は全くといっていいほど知らなかったんです。

それがスケートボードを始めたことで、わざわざ三重県にあるB7というスケートパークのハロウィン大会に行くようになったり、いろいろな土地へ赴いていろいろな経験をしてくれるようになりました。

大会に出るとかそういう事がきっかけで両親を含めて旅をするようになると、必然的に子どもの行動範囲が広がりますし視野や世界観も広くなっていくので、それはとても良いことだと思いますし、本当にやってよかったなと思ったことのひとつですね。

リアルタハラ スケートボード

 

【選択型プリスクール取材記④】幼児期の英語教育 × スケートボードから見えるもの ~リアルタハラプリスクール~

スケートボードを保育プログラムに取り入れるという取り組みは、現状では前例がほとんどないと言えるほど珍しいケースです。何事も新しいことを始めるには批判はつきものですが、過去の非常識が現代の常識になっているケースも数多くあります。このようなプリスクールやスケートボード教育が未来のスタンダードになってくれることを願ってやみません。ラストとなるパート4では、ラストとなるパート4では、リアルタハラが所有するDI.Y.スケートパークを深掘りしていきます。

ライター

吉田 佳央

1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。