スイスでは、休暇は単なる休みではなく、人生を豊かにするために必要な時間と考えられています。日本とは少し異なるスイスの長期休暇の習慣や、子どもの教育への考え方を紹介します。そこには心地良く生きるためのヒントがあるかもしれません。

スイスの休暇文化の特徴

スイス流長期休暇の考え方と過ごし方

スイスでは、休暇は大人だけでなく、子どもにとっても重要なものと考えられ、家族全員で長期休暇を過ごすのが一般的。その考え方は社会全体に浸透しています。

休暇は必要なものという価値観

スイスでは、4週間以上の長期休暇を取る人が多くいます。休暇は必要なものと考えられているため、多くの企業が4〜5週間の有給休暇を提供しています。大人も子どもも長期間のバカンスを楽しむのが一般的なお国柄です。

家族旅行のために小学生の休学が認められるケースも多く、スイスの教育への価値観は、昭和生まれの私からすると少し驚いた部分でもあります。時代とともに「教育に対する考え方も変わってきたな」と実感しました。

長期休暇を前提とした働き方

スイスに住み始めて驚いたことは、企業が従業員の長期休暇を受け入れているということです。長期休暇でリフレッシュでき、生産性向上につながると理解されており、仕事と休暇のバランスが重視されています。

たとえば、私の同僚は毎年5週間の休暇を取得し、故郷のタイ・バンコクへ帰省します。彼女にとって、この休暇は家族と過ごす大切な時間であり、リフレッシュする貴重な機会なのです。

体験は教育の一部という考え方

スイス流長期休暇の考え方と過ごし方

スイスでは、子どもの「体験を通じた学び」を大切にしています。学校はその価値を認めていて、子どものお休みに柔軟に対応します。休暇を利用して海外旅行へ行くことも教育の一環と考えられ、休学が許可されるケースがあるのです。

海外旅行での体験は、教室では得られない特別な経験。異文化理解や国際感覚を実体験することで、子どもたちの視野が広がります。そして、外国語への興味が生まれることもあります。実際に現地で簡単な挨拶や会話をすることが、言語学習へのモチベーションにつながるのです。

海外旅行では、普段と違う環境で自分で考えて行動する場面が増えます。飛行機に乗ったり、宿泊先でのマナーを学んだり、現地の人と交流したり、アウェイでの経験を通じて、子どもたちの自己肯定感や主体性が育ちます。

スイス人の休暇の過ごし方

スイス流長期休暇の考え方と過ごし方

スイス人は、さまざまな過ごし方で休暇を満喫しています。たとえば、旅行・帰省・留学など、ライフスタイルに合った休暇の過ごし方を楽しんでいます。

周辺国からオセアニアまで!海外旅行

スイスはヨーロッパの中心に位置しており、フランス・イタリア・スペインなどの近隣国へ気軽に旅行できます。週末旅行として隣国を訪れる人は多く、長期休暇では遠くの国へ行く人もいます。

ヨーロッパが冬の時期には、オセアニアは夏。寒いスイスを離れ、温暖なオーストラリアやニュージーランドで過ごす休暇はとくに人気があります。

また、チューリッヒ州では2月に「スポーツ休暇」と呼ばれる2週間の休みがあります。この期間を利用して、オーストリアやイタリアへスキー旅行に出かける家族も多くみられます。

まるで海外旅行!な国内旅行

スイスは国内移動するだけでも、まるで海外旅をしているかのような気分になれるのが魅力。たとえば、イタリア文化が色濃く残るティチーノ州や、フランスの雰囲気を楽しめるジュネーブ州は、国内旅行の人気スポットです。

スイス屈指の山岳リゾートである、グラウビュンデン州も多くの人が訪れます。ここは世界的にも有名なウィンタースポーツの中心地であり、スキー休暇を楽しむ人で賑わいます。

移民が多い国ならではの帰省

スイスは移民文化を背景に持つ人が多く、国民の40%が移民にルーツをもつといわれています。そのため、家族が外国にいるという人も多く、長期休暇を利用して母国へ帰省することも少なくありません。

実際、私も日本へ帰省する際には、3〜4週間の休暇を利用します。

多言語国家だからこそ!語学留学

スイスでは語学留学が広く行われています。4つの公用語をもつスイスは、第2言語として英語を小学3年生ごろから学びます。

さらなる語学力向上を目指し、学生に留学先としてよく選ばれるのがイギリス・アメリカ・カナダです。第3言語も入ってくるので、フランスやドイツへ語学留学に行く人もいます。

私も長期休暇を取得してみました

スイス流長期休暇の考え方と過ごし方

スイスに住み始めた私も、長期で冬の休暇を申請してみました。1~2月のスイスは冬の真っ只中。そんな寒いスイスを抜け出そうと決めた目的地は、南半球のオセアニアです。

家族3人(スイス人の夫、11歳の息子、私)で、4週間のニュージーランド旅行を決めました。

夫は、職場の同僚や友人も長期休暇を取れる環境にあるため、休暇の申請も問題なく承認されました。一方、私は初めての申請でしたので、4週間の休暇を取れるのか心配でしたが、上司の許可がすぐにおり、無事に実現しました。

そして、最後は小学6年生の息子です。学校を長く休むことになるので、休学を受け入れてもらえるのか心配でしたが、そんな心配は無用でした。

「海外旅行も教育の一環」という考え方が浸透しているおかげで、無事にスポーツ休暇と2週間の休学を合わせて、4週間の海外旅行を計画することができました。

周囲の知人からも長期で休学申請した経験談をよく聞いていたので、スイスは教育に対してとても柔軟な対応を取っているのだなと、改めて実感しました。

旅行中の息子は、記録のためでもありますが、毎日日記を書くことにしました。ライティングの勉強になりますし、自分なりに旅行に対しての感想も記録できます。まさに「体験と通した学び」となりそうです。

スイス人は休暇制度を存分に活用して長期休暇を取り、旅行・帰省・留学など、それぞれの目的に合った過ごしかたでワークバランスを整えています。小学生の休学に対して柔軟な学校側の対応も、子どもにとって大きなプラスになると思います。「休暇を充実させることが、より豊かな生活につながる」という考え方が根付いているスイス。休暇に対する価値観は、日々忙殺されがちな人たちの参考になる部分もあるのではないでしょうか?

アルパガウス 真樹

ライター

アルパガウス 真樹

スイス在住の40代主婦。息子とスイスの自然を楽しみながら、さまざまなアクティビティに挑戦。夏は森の中でのBBQやハイキング。海のないスイスでは、湖水浴が定番なので、夏季は湖沿いで過ごしたりSUPを楽しんだりしています。現地からスイスの自然との触れ合いをお届けします。