子どもに思いきり自然体験をさせたい。そんな思いを持つ人に田植え体験はぴったりなイベントでしょう。苗を植えながら、泥の感触を全身で味わえたり、小さな生きものたちと出合ったり、非日常の発見がいっぱいです。この記事では、田植え体験の魅力とともに、初めてでも安心して参加できるよう、持ち物や準備のポイントもわかりやすく紹介します。

田植え体験の魅力

田植え体験の魅力は、非日常を楽しめることです。まず、思いっきり泥んこになれること。全身で直接泥の感触を味わう機会は日常ではなかなかなく、大人も子どもも五感が刺激されます。

また、田んぼならではの生きものと出合えるのも大きな魅力です。田んぼの中を歩くだけでも、泥の中から生きものたちが出てきます。田んぼにすむイモリ・カエル・ケラ・タイコウチ・タガメ・ミズカマキリなどの生きものは、ほかの場所ではなかなか見つけられません。

生息に適した環境が減っていることで、絶滅危惧種になっている種もあるほどです。しかし田植えでは、彼らのすみかである田んぼの中に足を踏み入れるので、泥の中で逃げようとしているのを発見して簡単に手に取ることができます。

田植え 泥んこ 生きもの 稲作り

モリアオガエルの卵塊

さらに、水路や田の水位は浅い場合が多く、田植えの指導をしてくれる人に見守られながら行うので、小さい子どもがいても安心して体験することが可能です。力を合わせて広い面積に苗を植えることで、労働のあとの達成感も味わえます。

このようなわくわくする体験を通して、家に帰ってからも農作物の大切さや田んぼの価値について親子で考えるよい機会にできれば理想的です。これは、田植え体験を提供している側のねらいでもあるでしょう。

初めてでも安心!田植え体験に必要な持ち物

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田植えのための持ち物を考えるとき、一番のポイントは泥対策です。水が張られている田んぼの底は、外からは見えにくいですが泥の層なので普通の長靴では歩けません。

泥の層の深さによっては、一歩ごとに足が泥に埋まっていく感覚です。子どもと一緒に参加した大人が泥に足を取られて身動きできなくなり、初めから戦力外に…ということも起こり得ます。

また、田植えが終わったあとに全身泥だらけのところから、どのように帰り支度をするのかも気になるところでしょう。ここでは、安心して田植え体験に参加するための装備や持ち物について説明します。

田植え体験の装備

まず足回りがとても重要です。普通の長靴は足に密着しないので、大人の場合はそのまま長靴が抜けなくなり、前にも後ろにも動けなくなることがあります。

大人には、ホームセンターなどで購入できる地下足袋や農作業用の長靴が最適です。しかし、子どもサイズのものを見つけるのは難しく、サイズアウトを考えれば、わざわざ購入する必要はないでしょう。

ビーチサンダルはもちろん、マリンシューズや運動靴も泥の中では脱げてしまい役に立ちません。かといって裸足では、泥の中の虫に刺されたり、硬い物を踏んだりする可能性があります。

そこで、一番のお勧めは長めの古靴下です。素足の上に古靴下を履いて泥の中に入れば、足を保護でき、泥に埋まって動けなくなるのを防げます。

服装は、いつものアウトドアと同じく長袖長ズボンがよいでしょう。ただし、洗濯で泥んこを完全に落とせるとは限らないので、捨ててもよいものを選んでください。なお、水着のような生地の服は、泥が落ちやすいので便利です。

また、素手で苗を持ち、力加減しながら植え付けていくので、軍手や手袋は必要ありません。

田植え体験の持ち物

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持ち物には、田植え体験のためのものと、体験後のためのものがあり、前者は装備のところで説明したとおりです。田植え体験のあとについては、泥を落として着替えるために必要なものとなります。

近くに水道や水路がある場合はそこで洗えますが、水道などがない場合にはポリ容器などに水を汲んで用意していくと安心です。いずれにしてもタオルは必須となります。

外で着替えることになるかもしれないので、レジャーシートとラップタオルがあるとよいでしょう。子どもは下着まで汚れることを覚悟して、すべての着替えが必要です。車の中で着替える場合にも、レジャーシートを使えば車内が汚れるのを防げるため便利です。

泥んこになった服などを持ち帰るためには大きめの袋がいります。そして、天気によっては熱中症が心配な季節なので、飲み物は多めに準備してください。また、お腹が空いて子どもが不機嫌になるのを防ぐためには、おやつが必要かもしれません。

子どもの持ち物をまとめると、次のとおりです。

  • 長袖長ズボン
  • 古靴下または地下足袋
  • タオル・ラップタオル
  • 着替え(下着も)
  • レジャーシート
  • 汚れものを入れる大きめの袋
  • 必要に応じてポリ容器
  • 飲み物
  • おやつ

以上をそろえて準備万端、田植え体験に出かけましょう。

田植え体験で後悔しないためのポイント

田植え 泥んこ 生きもの 稲作り

タイコウチ

田植えの本来の目的は、間隔をあけて苗を植えることです。よって指導する方の話をよく聞いて、心を込めて植えましょう。ほかの参加者と横一列になって、張られた紐の目印を手がかりに植え、後ろへ後ろへと進んでいきます。周りの人にも気遣いながら参加してください。

また、なかには田んぼに足を踏み入れるのを嫌がるお子さんもいます。見ただけでは泥の深さがどのくらいか判断できないので、このまま頭まで沈んでしまうのか?と怖くなっても無理はありません。

そんなときは、ほかの人たちが楽しそうに参加しているのを見て、やってみたい気持ちが湧いてくるまで待ってあげましょう。

順番を後のほうにしてもらえば、ほかの参加者の体験の様子を見ることができ、子どもでも怖くないし楽しそうという気持ちの準備ができるかもしれません。

田植え 泥んこ 生きもの 稲作り

ケラ

そして、田んぼの生きものを捕まえた場合は、帰る前に戻してあげてください。田んぼの生きものは、田んぼの生態系の中でこそ生きていけるものばかりです。

なかには生息数を減らしているものもあるので、地域の生物多様性を守るためにも持ち帰ったりしないようにしましょう。その分、田んぼでじっくり観察したり触れ合ったりできるといいですね。

田植え体験は、泥んこになって遊びながら、五感が刺激される貴重な機会です。田んぼの生きものとの出合いや、苗を植える達成感は子どもにも大人にも特別な体験となります。服装や持ち物などについてぜひ参考にしていただき、存分に楽しんでください。

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三児の母。