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近年、幼少期からの自然体験の価値は認識されるようになりましたが、自然学校の設立当時は「なぜ自然の中で遊ぶことにお金を払わなくてはいけないのか」など理解されず苦労されたそう。荒波を乗り越え設立30年を経過した老舗の自然学校を3つご紹介します。

人・自然・地域の共生を目指す「ホールアース自然学校」(静岡)

「ホールアース自然学校」は、子どもから大人まで、誰にでも大自然を思いきり体験してほしいという思いから、1982年に動物農場としてスタートしました。

現在は、富士山麓の本拠地のほか、全国6か所の拠点(沖縄校福島校柏崎・夢の森公園田貫湖ふれあい自然塾富士市立少年自然の家/丸火自然公園)でそれぞれユニークな事業を展開しています。

1983年からは、富士山麓の樹海をフィールドにした教育旅行向けの自然体験プログラム(洞窟樹海探検、富士山麓トレッキングなど)を開発し、現在の参加者は年間3万人にものぼります。

ホールアースの活動は、「家畜動物とのかかわり」と「自然体験」の場の提供がメインで、食農や暮らしを扱うプログラムを大切にしています。2011年には農業生産法人「ホールアース農場」を設立、無農薬・無化学肥料の稲や野菜を栽培しています。

子どもから大人まで「食農」のプログラムを体験できるほか、キャンプなどの食事ではホールアース農場が生産する食材を使用するという、食に対する意識の高さがうかがえます。

 

近年では、荒廃する里山を利用しながら保全していく目的で、「竹・木・ケモノ」の分野にも着手しています。

ケモノ=獣(鹿・猪)の分野では、スタッフが自ら狩猟免許を取って獣を捕獲し、ジビエ料理や鹿革クラフトを実践するなどワークショップも行っています。

ホールアースでは、自然案内人(インタープリター)となるスタッフの質にもこだわっており、様々なバックグラウンドを持つ人材が全国から集まり、ホールアースの仕事の「幅」と「深さ」を支えています。ホールアース自然学校」は、設立から30年以上経っても、常に新しいことにチャレンジし続け、進化している自然学校の事例と言えるでしょう。

 

体験型の野外教育といえば「国際自然大学校」(東京)

1983年に設立された「NPO法人国際自然大学校」は東京を拠点に、山梨、京都、福岡、沖縄に分校を持ち、全国展開している自然学校です。

設立当初から「アウトフィッター(自然や人とのかかわりの中で、人生を前向きに生きている人)」の育成をテーマに、環境教育や野外教育をベースにした自然体験活動を行っています。

国際自然大学校の名前には、事業の軸となる教育(心の教育)・環境(持続可能な社会)・地域振興・健康・国際と、5つのキーワードが込められています。

国際自然大学校と言えば、子ども向けキャンプの質の高さに定評があります。個性豊かなキャンプディレクターが、学生などのキャンプスタッフを束ね、幼児から中高生まで様々な参加者に対して、海・山・川・島あるいは海外で、年間を通じてキャンプを行っています。

英語でアウトドアを楽しむイングリッシュ・キャンプも人気です。

 

NPO法人国際自然大学校」は、川崎市黒川青少年野外活動センター埼玉県立名栗げんきプラザ神奈川県立愛川ふれあいの村 など、公の野外教育施設の管理運営も行っています。

野外活動の研修をつんだスタッフがノウハウを活かし、施設が利用者に提供する自然体験を、より豊かなものにしています。

 

自然を感じ、学び、癒される「キープ協会」(山梨)

「公益財団法人キープ協会」は清里の父と呼ばれるアメリカ人のポール・ラッシュ博士によって1938年に建てられた「清泉寮」がルーツです。

深い森や渓谷、牧草地など、変化に富んだフィールドで、目的や人数に応じて利用できる宿泊・研修施設を保有しています。

八ヶ岳南麓・清里高原を拠点に、環境教育や高冷地農業、国際交流などに取り組んでいます。

1983年から環境教育事業を始め、「自然」「レンジャー」「プログラム」「施設」「食」を総合的に活用し、多くのプログラムを開発・実施してきました。キープ協会の環境教育事業部(自然学校)の拠点は、フォレスターズ・スクール、山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンターやまねミュージアム山梨県地球温暖化防止活動推進センターです。

2011年からは、皇室の御用邸として管理されてきた生物豊かな森である那須平成の森の指定管理者となりました。

キープ協会の特徴は「自然を見つめる」「自然の美しさ、素晴らしさを感じる」など感性を大切にしている点です。インタープリターと呼ばれるスタッフは、目には見えない自然のメッセージを分かりやすく伝え、“人と自然との橋渡し役”になっています。

インタープリターの育成としては、「清里インタープリターズキャンプ」というセミナーが、年に数回実施されています。

自然ガイドを目指す希望者が全国から清里に集まり、インタープリテーションの心髄を学んでいます。

公益財団法人キープ協会」では、インタープリターが案内するガイドウォークや森林療法プログラムなど、感じたり癒されたりするプログラムに定評があります。

森の豊かさ、楽しみ方を感性を通して伝える豊富な体験活動が、世代を問わず様々な人々に受け入れられていると言えるでしょう。

個性のある3つの老舗自然学校をご紹介しました。ホールアース自然学校は「暮らし系」、国際自然大学校は「野外系」、キープ協会は「感性系」と言えるかもしれません。どちらの自然学校にも、インタープリターと呼ばれる自然と人の橋渡しとなるスタッフが在籍し、自然の中で活動するノウハウを共有しています。ぜひご自分の興味とマッチするプログラムを見つけて、自然体験をしてみてください。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。