林業従事者の減少で日本の森林が荒廃している
日本は世界屈指の森林国、国土の約7割が森林でおおわれています。木を植えて大切に育ている手入れの行き届いた森林には光が入り、生態系も守られています。
水源の確保や災害を防止する役割を果たしているのも森林です。二酸化炭素を吸収して地球温暖化の防止にも大きく貢献しています。
日本は江戸時代から昭和にかけて、ブナや樫、楢など、さまざまな樹木が生い茂る原生林を切り開いて、杉や檜といった1種類の樹木だけを植栽した単層林を増やしてきました。
みなさんも登山する際に薄暗い杉林を歩かれたことがあるのではないでしょうか。
高齢化などで林業従事者が減少する中、放置されて荒廃した単層林の存在が社会問題化しています。荒廃した森林は光が遮られ、下草すらも生えない環境です。
保水能力が低下し、本来の森が行っていた機能が失われ、さまざまな自然災害の要因になっています。以上のようなさまざまな問題の解決を目指すのも「林業」の仕事です。
では林業の仕事は具体的にどのような作業があるのでしょうか?
林業の作業には、植栽した樹木がよく育つように草を刈る作業や、木々に巻き付いて成長を妨げる葛カズラやフジなどを取り除く作業、節の少ない材木にするためや日差しを森林に入れるために行う枝打ち、密集した林間を適度に間引く間伐などがあります。
また、成長した杉や檜などを伐採して集材し、製材所などへ運搬する作業もあります。
伐採した杉や檜を道路まで運び出すために架線と呼ばれるワイヤロープを張った集材装置を使う作業は、「架線集材」業務です。架線を張ることを専門にした仕事もあります。
間伐や、伐採時期を迎えて成長した樹木を伐採したあと地には、杉や檜だけでなくさまざまな種類の複層林化に役立つ樹木の苗木を植栽して行きます。
林業の求人にはどのようなものがある?
林業の仕事は、全国の都道府県にある都道府県林業就業相談窓口で求人内容が確認できます。
各都道府県によって、森林協会や森林組合、みどり推進機構、林業従事者確保育成基金、林業労働力確保支援センター、山村林業振興基金、林業労働支援センターなど、さまざまな組織があり、林業にかかわる仕事の求人を行っています。
また、林野庁や各都道府県などが支援している「緑の雇用」事業という組織などもあり、こちらのサイトでもさまざまな林業の仕事が紹介されています。
研修制度も充実していて、未経験者でも一定の期間林業に従事して、必要な技術が学べるプログラムが用意されています。このプログラムでは、年次に応じてステップアップしながら、さまざまな技能の習得が可能です。
研修期間中も給与が保証されているので、安心して林業の技術が習得できます。
全国にあるハローワークでも、山林の調査や測量、間伐や枝打ちを行う森林技術員やフォレストワーカー(森林作業員)といった求人があります。
収益が見込める林業のモデルケースづくりが必要
経済成長を経て人件費や設備コストの高騰で海外から輸入した外国産材の方が安いことから、林業従事者の数が激減する一方です。
このままでは伝承してきた林業の技術が途絶えてしまいます。
植栽から伐採まで約100年かかるといわれており、毎年一定量の植栽や手入れ、伐採などの作業をバランスよく行うことで、継続して事業が続きます。
また、所有者にとって山林は資産であるという意識が薄らいでいるという問題もあります。森林所有者の意識を変革するためにも、国有林などが率先して儲かるモデルケースを打ち出していくことが必要です。
近年では、個人事業主による小規模林業を立ち上げる動きが見られます。小規模林業では、自分で材木を伐採して集材、運搬を行います(自伐型林業)。
成功した自伐型林業では、平均年収の1.7倍ほどになったという事例もあるようです。林業は儲からないと言われていた昨今で、これまでの考えをくつがえすような成功事例ではないでしょうか。
行動に移す方の努力の賜物なのでしょう。
経済成長の時代に、木材の輸入が全面自由化され、輸入材に対抗するために森林組合を組織して大規模化を目指してきました。
しかし、大規模化にともなって数億もの機械投資が必要になり、高投資、高コスト型の事業運営のため、林業で儲けることが難しくなっているというのが現実です。
高投資、高コスト型の事業運営から個人事業主による小規模林業へのシフトによる、儲かる林業の仕組みづくりが全国各地へ広がりつつあります。
現在は、外国産のホワイトウッドよりも国産杉の方が安い時代。国産材の需要を高めて、日本の山林にお金が戻ってくるような仕組みを作ることが、荒廃した山林を再生させる近道になります。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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