第1回では自然学校の概要と使命などについてレポートしました。今回からは具体的な例をあげて自然学校のバリエーションや体験メニューをご紹介。面白そう!と興味を持っていただけたら幸いです。今回は企業型の自然学校と国公立型の自然学校を取り上げます。

企業型自然学校

前回の記事で自然学校は「自然の教育的要素」を意識しているかどうかがポイントだとお伝えしました。

まさにその点を見込んで、自然学校は企業の社会貢献活動・CSRの一つとして注目され、その数は近年ますます増加傾向にあります。

自然学校と相性がよい本業(旅行、出版業、学習塾など)と関連させながら経営の一部門を担っているケースもあります。

 

国公立型自然学校

古くから「林間学校」として知られる全国の自然の家や、国立・国定公園のビジターセンターなどのふれあい施設などは、国公立型の自然学校と言えるでしょう。

このところの傾向として、他の公立の施設と同様に、これらの自然学校が指定管理者制度により、公益法人や民間企業、NPOなどに運営が委託されるケースが増えてきています。

 

㈱日本旅行による全国展開のキャンプ「トムソーヤクラブ」

トムソーヤクラブは㈱日本旅行が企画運営する小学生・中学生の会員組織です。

1987年に創設されて以来、30年にわたって次世代を担う子どもたちのための自然体験プログラム、主に宿泊系のキャンプ活動(自然体験旅行)を中心に展開しています。

旅行会社の強みを活かし、北は北海道から南は沖縄まで、多彩なフィールドへ小学生中学生を送り出している自然学校です。

また、キャンプリーダー(トムソーヤクラブリーダー)の育成にも力を入れていて、リーダー研修を受けた大学生などが、キャンプではカウンセラーとして携わり、子どもたちの心身の安全を守りながら思い出に残るキャンプを盛りあげています。

トムソーヤクラブが行う体験旅行は、普段なかなか自然と触れ合う機会がない首都圏の子ども達の好奇心をくすぐるものばかり。

川遊びや魚つかみとりができるキャンプ、冒険要素満点の島キャンプ、昆虫採集キャンプ、化石・恐竜キャンプなど。

2017年夏にはなんとアメリカのNASAケネディ宇宙センターで皆既日食を見るツアーも行っており、宇宙技術にふれるという夢のあるキャンプにも力を入れています。

キャンプ場や自然の家に泊まりながら、火の扱いや道具の使い方といったアウトドアスキルが身に付くだけでなく、初めて出会う子どもたちが力を合わせて集団生活する中で、人への気遣いや信頼関係の築き方なども学べそうです。

 

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トムソーヤクラブ

 

大手企業が自然学校事業へ「トヨタ白川郷自然學校」

2005年4月に世界遺産・白川郷にオープンした「トヨタ白川郷自然學校」。

トヨタ自動車㈱が数多く行っている社会貢献事業の中でも、「環境共生」という創業理念からの環境教育・環境保全が強く意識された事業です。

美しい合掌造りの集落で有名な荻町(おぎまち)から車で10分ほどの所に、トヨタ白川郷自然學校があります。

建物は洗練された雰囲気の温泉付きリゾートホテル。ここを拠点に、白川村の雄大な自然全体をフィールドにした数多くの自然体験プログラムが行われています。

トヨタ白川郷自然學校は、自然観察や登山ガイドなど専門性の高いスタッフが内容の濃いプログラムを数多く展開していることが特徴です。

例えば、宿泊者向けの毎朝の森の散歩プログラム(なんと無料!)では、ガイドが自然の仕組みを一方的に説明するのではなく、参加者が「これは何だろう?」と自発的に考えるような問いかけや、感覚を使って自然と触れ合える工夫が散りばめられていて、飽きることがありません。

(このような手法は「ガイド=説明」に対して「インタープリテーション=解説」と言われます)

また、大人向けにはトレッキングや健康志向のハイキングメニュー、子ども向けには「生きる力」を育むテーマ性のあるキャンプと、対象に合わせた自然の楽しみ方を提案しています。

近年では「クオアルト健康増進ウォーキング」(ドイツのクアオルト地域の気候と地形を利用した健康療法)も加わり、ハイキングのメニューが充実しているとのこと。

希望すれば参加できる季節の体験(例:山菜摘み、イワナ採り、冬のスノープログラムなど)も魅力。

世界遺産の観光と同時に日本ならではの体験ができるホテルということで、海外からのお客様にも人気のようです。

 

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トヨタ白川郷自然學校

 

体験人口が圧倒的に多い!「国立赤城青少年交流の家」

戦後、当時の文部省によって「国立青年の家」が全国に13か所整備されましたが、「国立赤城青年の家」(現在の国立赤城青少年交流の家)は全国で7番目に設置された、国内でも最大規模の研修施設です。

現在は「独立行政法人国立青少年教育振興機構」が運営をしています。

国立、あるいは県・市町村立の自然の家は全国にありますが、特徴としては、比較的安価に、学校などの宿泊学習や子ども会の行事など大人数の受け入れができるため、圧倒的に「体験人口」が多いということです。

こちらの赤城青少年交流の家では年間約13万人もの人が利用しているとのこと。

民間の自然学校ではカバーできない、「そこまで自然体験に興味がある訳ではない」あるいは「自然体験したいけれど、参加費が高くて行けない」層に広く自然体験を提供できるのが、国公立型の自然学校のメリットでもあります。

赤城青少年交流の家のプログラムには、大きく分けて「団体向け」と「個人向け」があります。

団体向けには、定番の野外炊飯やクラフト体験、スポーツ系のもの、赤城山というフィールドを活かした登山コースなど、50近くのアクティビティが用意されています。

団体はこれらのアクティビティの中から、研修の目的に応じていくつかチョイスして組み合わせ、主に宿泊を伴って利用します。

赤城で特に人気なのは「仲間づくり」のアクティビティ。

プロジェクトアドベンチャー(PA)という手法を使って、様々な課題を解決しながらチームの人間関係を深めるもので、学校でのクラスづくりや企業研修、チームビルディングに定評があります。

個人向けには、宿泊できる教育施設という利点から、様々な分野の指導者養成セミナーが数多く行われています。

また、「あかぎサンサンかがやきキャンプ」と題した障がいのあるなしに関わらず参加できるキャンプ、ひとり親家庭の親子を対象とした日帰りキャンプなど、対象の間口を広げた取り組みも行われています。

 

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国立赤城青少年交流の家

 

市民ボランティアが活躍中!「横浜自然観察の森」

「横浜自然観察の森」は横浜市の南端に広がる45haの広大な森。都会から近い立地にも関わらず、フクロウ、ノウサギ、オニヤンマなど、身近な里山の自然が今まだ残る貴重なオアシスです。

いつでも誰でも自由にお散歩したり、自然体験のプログラムに参加したりできます。

環境庁(現・環境省)と神奈川県により1986年に開園。

現在は横浜市と(公財)日本野鳥の会のレンジャー、ボランティアグループである「横浜自然観察の森友の会」が協働で、生き物の豊かな環境を守り、伝える活動をしています。

この横浜自然観察の森の素晴らしいところは、約140名にもなるボランティアが年間延べ3000人も活躍している点。

活動分野は3つに分けられています。

  • 「環境調査(生き物のことを調べる)」
  • 「環境管理(生き物のすみかを管理する)」
  • 「環境教育(生き物のことを伝える・調べたり管理したり伝えたりする仲間を増やす)」

それらの目的は“いきもののにぎわいある森の保全”を進めていくこと。昔なつかしい里山には、人が適度に手を加えていたからこそ生き物が豊かに住める環境がありました。

生き物に詳しい「環境調査」のボランティアが園内の生き物の生息調査を行い、「環境管理」のボランティアは林の手入れ、炭焼き、畑づくりなどのフィールドを整える保全活動をする。

「環境教育」のボランティアは訪れた人が自然と触れ合うサポートをする…といった風に、それぞれが役割分担しながら、横浜自然観察の森の豊かさを支えています。

フィールドを持った自然学校の場合、そのフィールドを誰が管理するのかというのは大きな課題の一つ。

それを「自分の喜び」と感じながら関わってもらえるボランティアが大勢いるのは、大きな強みと言えるでしょう。

 

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横浜自然観察の森

企業型の自然学校は本業の強みを活かした例や、環境への配慮を重んじる企業が環境教育という形での社会貢献の目的で自然学校を運営する例などがありました。国公立型の自然学校は、比較的安価に対象も内容も幅広く設定していることが多いです。その中でその施設独自の「売り」を模索しているとも言えるでしょう。また、横浜自然観察の森の例のように、地域住民・ボランティアとの関わりも施設の充実へ向けての大きなポイントです。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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