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沖縄の海が赤く染まっている光景を見たことがあるでしょうか?これは陸地からの赤土をはじめとする土砂の流出が原因で、海の景観が損なわれるだけでなく水中環境にも大きなダメージを与えているのです。沖縄の赤土等流出問題を今一度考えてみましょう。

沖縄の赤土等(あかつちとう)流出問題について

沖縄 赤土

 

沖縄の土壌は、熱帯地域特有の赤土等からできています。

沖縄特有の風景に加える赤い屋根瓦や、シーサーなどの置物、サトウキビやパイナップルなどの特産品は、赤土等から生まれたものが多くあります。

温帯地域である本土では、落葉などの有機物を豊富に含んだ腐植層が接着剤の役割を果たし、土壌同士が結合されています。

しかし、亜熱帯地域の沖縄では、微生物の活動が活発のため、有機物が早く分解され土壌同士が結合されにくくなっています。

そのため、開発工事などで表土が剥ぎ取られると、雨によって土壌は簡単に分解され川や海へと流れ出してしまうのです。

これが沖縄で問題視されている赤土等流出なのです。

 

赤土等が流出する要因

沖縄 赤土

 

赤土等が流出する要因には、「自然的要因」と「人為的要因」の2つがあります。

まず、沖縄には赤土等が流出しやすい自然的要因がいくつかあります。

それは、集中豪雨が多いという気候要因、急勾配な地形が多く河川も短いという地形的要因、土壌粒子が細かく粘着力が弱いため侵食されやすいという土壌的要因です。

こうした自然的要因に加えて人的要因が加わることで、強度がむき出しになると赤土等の流出が加速します。

人的要因には、公共開発事業や個人開発、農用地、 米軍演習などが含まれます。

 

 

赤土等の流出による問題とは

沖縄 赤土

 

海に流出した赤土等は、粒子が細かいためなかなか沈殿せずに、浮遊して長時間にわたって海を濁らせます。

その後、赤土等は沈下し、定置網やサンゴ、海藻、海底に降り積もりリーフ内での漁や養殖漁業など水産業に多大な影響を与えます。

また、太陽光が遮られて光合成ができなくなったサンゴが死滅し、そこを住処としていた生物たちも姿を消していきます。

沖縄の綺麗なビーチが赤土等で汚染され景観が悪くなれば、観光へのダメージも計り知れません。

 

赤土等の流出が深刻な地域

沖縄 赤土

 

沖縄県では、平成24年度より赤土等流出防止海域モニタリング事業を実施しており、海域における赤土堆積量は、SPSS(Suspended Particles in Sea Sediment=海域底質中の懸濁物質含量)により評価しています。

その結果、沖縄県全海域の55%が、明らかに人為的な影響で赤土等の流出があると判断されるSPSSランク6以上の海域であることが判明したのです。

とくに、沖縄本島周辺、久米島周辺、石垣島周辺、西表島周辺、伊平屋島・伊是名島周辺では、半数以上の海域においてSPSSランク6以上となっているのです。

なお、宮古島周辺、慶良間諸島周辺においては正常な海域が比較的多いこともわかりました。

 

赤土等流出問題の現状と課題

沖縄 赤土

 

赤土等流出問題は今にはじまったことではありません。

じつは、昭和30年代に山地を開拓してパイナップルなどの農耕をはじめた頃から目立ってきたといわれています。

その後、昭和47年の本土復帰以降に始まった大規模な開発工事によって、雨が降るたびに大量の赤土が海に流れ出るようになったのです。

加えて米軍の実弾砲撃演習によって、山地の表土がむき出しになったことも、赤土の流失を加速させることになったのです。

 

農地からの流出が86%

沖縄 赤土

 

その後、水産業関係者を中心とした赤土等の流出規制の運動が高まり、「沖縄県赤土等流出防止条例」が制定され、ブルーシート被膜や沈砂地などの対策によって開発工事現場からの流出が大幅に減少しました。

しかし、平成23年度の赤土流出量のうち全体の86%が農地からの流出であり、農地からの流出防止対策が大きな課題となっているのです。

現在、農地からの赤土等流出を防止するために、次のような対策が行われています。

  • グリーンベルト…畑の周りに植物を植え、濁水がそこを通るときにろ過される。
  • 緑肥…休耕地にはヒマワリなどの植物を植え、畑の裸地化を防ぐ。
  • 葉穀梱包…畑と水路の間にサトウキビの葉を束ねたものを並べ、濁水の流出を防ぐ。
  • マルチング…サトウキビの葉などで表土を覆い、土壌の侵食を防止する。
  • 畑の勾配修正…畑の傾斜を緩やかにして表流水の流れを弱める。

 

 

赤土等流出問題に対して私たちができること

沖縄 赤土

 

赤土等流出問題に限らず、珊瑚礁で覆われた青く美しい沖縄の海に、さまざまな課題や問題があることに目を向けることが大切です。

こうした問題をひとりでも多くの人に伝えていくことが、今の私たちのやるべきことです。

実際に目にした海域の状況や動向を、SNSなどを使って情報発信や共有することで、多くの人々の海洋環境保全について関心を高められるはずです。

それは、ダイバーやサーファー、カヤッカーなど、海と接する機会の多いオーシャニストたちに与えられた課題なのかもしれません。

また、ホームゲレンデとする海域で赤土等が流出していたら、写真を撮影したり流出源となっている場所について、環境保全課や管轄保健所に連絡したりすることも大切です。

海の環境をただ傍観するだけではなく、保護・保全に関するための行動を起こすことが大切です。

 

沖縄の赤土等流出問題についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。観光のための乱開発が赤土等流出の原因と考えている人は少なくありませんが、じつは、沖縄の人々の生活を支える農耕地からの流出が1番の原因なのです。規模が小さい農家に規制をかけることは困難なため、今後は赤土等流出防止にかかるコストや労働力などの負担という課題をクリアしていく必要があるのかもしれません。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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