ハワイで日焼け止めが禁止に?
2018年5月にハワイ州で特定の日焼け止めの販売を禁止する法案が可決されましたね。
米ハワイ州のデービッド・イゲ知事は3日、サンゴ礁への有害性が指摘される成分を含んだ日焼け止めを禁止する法案に署名して成立させた。2021年1月1日から施行する。こうした法律が米国で制定されるのは初めて。法案は5月にハワイ州議会を通過していた。施行後は、紫外線カット成分のオキシベンゾンとオクチノキサートが含まれる市販の日焼け止めの販売や流通が禁止される。
出典:CNN
それまでハワイでは土地と天然資源局(Department of Land and Natural Resources)がカードや看板で、ビーチで遊ぶときはサンゴ礁に安全な日焼け止めを使うように呼びかけてきましたが、ついに法制化されたということです。
この法案はサンゴに有害とされる化学物質である「オキシベンゾン」と「オクチノキサート」という紫外線吸収剤を含む日焼け止めの販売が禁止となるという内容ですが、これらの化学物質は市販されているほとんどの日焼け止めに含まれている物質です。
日焼け止めの使用を規制することはアメリカの州では初めてのことで、法案が施行される2021年以降はハワイ全土で有害物質の入った日焼け止めの使用はできなくなります。
法案の影響で日焼け止めの使用が減ると、皮膚がんのリスク増大を招きかねないとする声もありますが、環境保護を優先したとも受け止められます。
これは海と親しみの深いサーファーやダイバー、シーカヤッカーなど、すべてのオーシャニスト達にとって目を背けることのできない法案といえるでしょう。
いま一度、サンゴを守るために私たちは何をすべきなのか真剣に考えてみましょう。
サンゴが白化する要因
サンゴは2つの方法で栄養を得ていると考えられています。
ひとつは、自らが触手を使って動物プランクトンを捕食する方法。そしてもうひとつが、サンゴと共生する褐虫藻という藻類の光合成からの栄養補給です。
しかし、さまざまな要因でサンゴから褐虫藻がいなくなってしまうとサンゴは白くなり、世界的に問題視されている「サンゴの白化現象」が起きると考えられています。
白化現象はサンゴの死を意味しており、褐虫藻がいなくなってしまう要因には地球温暖化による海水温の上昇、海洋汚染による水質変化などが挙げられています。
ただし、最新の研究ではサンゴの白化は褐虫藻が逃げ出すものではないという説(細菌やウイルス)もあり、その原因究明が今度の課題になっています。
日焼け止めがサンゴに与える影響
以前から日焼け止めに含まれる化学物質が、サンゴ白化の原因のひとつではないかと考えられてきました。
2008年にはイタリア・マルケ工芸大の研究チームによって、日焼け止めとサンゴ白化との関連性も実証されています。
チームは、インドネシア、メキシコ、タイ、エジプトの4カ国の海でサンゴを採取。海水1リットル中に、市販の日焼け止めを100万分の1リットルだけ含む水の中で飼育した。その結果、18~48時間のうちにらん藻が大量にサンゴから抜け落ち、96時間以内にサンゴが完全に白化することを確かめた。
出典:産経新聞(2008年2月18日の記事より)
日焼け止め100万分の1リットルというのは、わずか1ppm(=0,0001%)の濃度で、これは日焼け止めを塗って海水浴をしたときに海中に溶けだす濃度と同様です。
じつは、海水浴などで目が痛いと感じるのも、海水そのものが原因ではなく 海水に溶け出した日焼け止めが原因とする意見も少なくありません。
ほとんどの人は何気なく日焼け止めを使っていると思いますが、日焼け止めが海やサンゴにもたらす影響はかなり大きいのです。
もちろんサンゴ白化の原因は、日焼け止めだけではありません。ですが、ハワイでの日焼け止め禁止法案は、新しい時代への変化の始まりなのです。
サンゴが死滅するとどうなるのか?
サンゴが死滅すると一体どうなってしまうのでしょうか?
まず、サンゴ礁を棲み処としていた生物たちが生息場所を失います。その結果、水中の生態系が崩れ、魚の漁獲量が減少するなど私たちの生活にも大きな影響を与える可能性があります。
また、褐虫藻による光合成も行えなくなるので酸素が作られなくなり、地球全体の酸素量が激減します。
すると二酸化炭素の量が水陸ともに増加することで、地球温暖化がさらに進み、世界各地で異常気象による自然災害の増加も懸念されているのです。
私たちにできること
水中環境が回復すれば褐虫藻が再びサンゴに戻り、ふたたび元気なサンゴ礁を取り戻せる可能性があります。
ではそのために、私たちがすべきことは何なのでしょうか?まずは、どのような要素が地球温暖化や海洋汚染に影響を与えているのかをしっかりと正しい知識で認識することです。
そして、これらの問題に対して毎日の生活のなかから高い意識を持って向き合うことが大切です。紫外線吸収剤や防腐剤を使用していない日焼け止めを選択することが、ひいては環境について考えるきっかけになるでしょう。
たとえ小さなアクションでも自分から動き出さなければ、私たちにさまざまな恩恵を与えてくれるサンゴ礁を守ることはできないのです。すでに、環境問題を他人まかせで何とかなる時期はとっくに過ぎているのですから。
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ライター
Greenfield編集部
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