キャンプや登山、海や川での水遊びなど、夏は楽しいアウトドアが満載!しかし、年々厳しさを増す暑さのなかで、忘れてはいけないのが「熱中症」です。とくに、自然のなかでは、街中とは異なる環境ならではの思わぬリスクが潜んでいます。そこで今回は、海辺の安全を守るライフセーバーとしても活動している筆者の経験から、アウトドアで気を付けたい熱中症のポイントについて紹介します!

実はよく知らない?アウトドアで気を付けたい熱中症の基本情報

熱中症 キャンプ

夏が近づくとニュースなどで毎日のように話題となる熱中症。もはや他人事ではないですよね。ただ「熱中症には注意!」とわかってはいても、発生状況や要因、そのほか具体的な対策など意外と知らないことも多いのではないでしょうか。

熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能が正常に働かなくなることで起こる障害です。もっと簡単にいえば、体にたまった熱が外に出せなり、体内に熱がこもった状態になることです。

症状としてはめまいや失神、けいれん、頭痛などさまざま。夏場のアウトドアシーンで「のどが渇いた」と感じたこと、一度はあるのではないでしょうか。実はそれも熱中症の初期症状。つまり、キャンプや登山などのアウトドアは熱中症のリスクが高く、とくに気を付ける必要があるといえるでしょう。

症状の重さによっては命に関わることもあるため、どのような症状であっても十分な注意が必要です。これからのアウトドアを快適・安全に楽しめるように、まずは正しい知識を身につけましょう!

熱中症はなぜ起きる?アウトドアで起こる熱中症の原因とは

熱中症 キャンプ

熱中症は、環境・体・行動の3つの要因の関わりによって発症します。効果的な対策を講じるためにも、以下に紹介する条件を自身の生活と照らし合わせながらチェックしてみてください。

環境の要因

熱中症 キャンプ

熱中症のもっとも大きな要因となるのが高温環境です。ここで知っておきたいポイントが高温になる「原因」。実は注意すべきは気温だけではありません。ほかにも、湿度の高さや気流(風)の有無、日差しの強さも重要な要素です。

たとえば、6月の梅雨の時期などは気温はそこまで高くはないものの、体にまとわりつくようなジトっとした湿気で暑苦しく感じますよね。逆に、気温が高い日でも湿度が低く、適度な風が吹いていれば心地よく感じます。

高温になればなるほど熱中症のリスクも当然に高まります。アウトドアの予定があって天気予報を確認する際は、気温だけでなく湿度や風速などにも注目するようにしてみてください!

体の要因

熱中症 キャンプ

体調や体質も熱中症の発症に関わる大きな要因のひとつ。疲労や睡眠不足、二日酔い、そのほか体調不良の状態は熱中症にかかりやすくなります。また、肥満や高齢、持病がある人、小さな子どもは体温調節機能が十分でないためとくに注意が必要です。

キャンプや登山といったアウトドアシーンでは、前日の準備や朝早くからの移動など、はじめから疲れていることも多いはず。しかし、楽しさのあまり疲労に気づかないこともあるでしょう。こういったところに「体の要因」のリスクは潜んでいます。

目の前の楽しさにとらわれすぎてはいけません。前日までの体調を万全にするのはもちろんですが、当日も自己管理を忘れずに、適度に休憩をとることを忘れないようにしてください。

行動の要因

熱中症 キャンプ

どのような行動をとるかも熱中症のリスクに直結します。たとえば、激しい運動や慣れない運動、長時間の屋外活動、水分補給ができない状態にあるなど。すべてアウトドアシーンには当てはまりそうな項目ですよね。

キャンプなどでは設営作業などに夢中になりすぎて、ついつい水分補給を忘れてしまいがちに。かくいう筆者も、設営に熱中しすぎて水分補給をおろそかにしてしまった結果、気分が悪くなってせっかくのキャンプが台無しになってしまった経験があります。

行動の要因はほかの2つよりも比較的自分自身で調整しやすいものです。暑いときの激しい運動は控える、こまめに水分補給をするなど、無理のない行動を選択できるようにしてください。

筆者が経験した実際の熱中症事例

熱中症 キャンプ

総務省消防庁によると、令和6年5月~9月までで全国の熱中症による救急搬送者数はなんと97,578人!※これは平成20年の調査開始以来もっとも多い人数です。熱中症がどれだけ身近で起こりえる危険なものか、この数字をみるだけでもわかりますよね。

熱中症による救急搬送状況(総務省消防庁)

夏の海辺の監視活動をするライフセーバーの活動経験のある筆者も、実際に以下のような熱中症事例に遭遇しました。少しですが紹介します。

事例1

海水浴場に遊びに来ていたグループの一人である成人男性が、意識はあるけどぐったりとした様子で友人とともに監視塔に来る。顔は赤く、汗はあまりかいてないが体は明らかに熱を帯びていた。確認したところ、この日は飲酒していて酒類以外の水分は取っていなかったとのこと。基本的な熱中症の処置をしてしばらく安静にすると、10分後くらいにはほぼ回復した。

事例2

夏の炎天下のなか、小学生のサッカーチームがビーチサッカーを行っていたところ、「子どもが一人動けなくなった」と監視塔に連絡が入る。連絡を受け駆け付けたところ、男の子がぐったりとした様子で横たわっていた。じっとりとした汗をかいており意識朦朧状態だっため、熱中症の応急処置を行い救急車を要請した。その後、救急搬送先で回復したと連絡を受けた。

先に紹介した統計や事例は主に夏の暑い時期に起こったものですが、秋冬など涼しい時期にも十分起こりえます。また、搬送された人の特徴でみると高齢者がもっとも多い割合を占めますが、成人や子どもが発症する例も多くあります。

アウトドアは、楽しさのあまり休憩や水分補給をついつい忘れがちになってしまうもの。しかし、事例で紹介したような事態にならないためにも、老若男女問わず、また一年を通して十分に気を付ける必要があります。目の前の楽しさだけにとらわれることなく、注意を忘れないようにしてください。

夏のアウトドアを楽しく安全に楽しむためには、熱中症対策が欠かせません。今回、熱中症の基本情報やアウトドアで起こりやすい熱中症の特徴などについて紹介しましたが、もっとも大切なのは「無理をしないこと」。それを前提に、環境と体調をしっかり把握しながら、リスクを減らすための工夫を欠かさないようにしてください。次回は、熱中症の具体的な対策と、熱中症になったときの対処法について紹介します。ぜひ、一読ください!

SUGURU

ライター

SUGURU

キャンプ歴11年。アウトドアと家族を愛するパパキャンパー。ともに暮らす妻と2人の娘はインドア派。家族の機嫌をうかがいながら週末キャンプ・ギア収集を楽しんでいる。最近は、気軽に楽しめる「おうちキャンプ」で一味違った新たなキャンプスタイルを模索中。2019年には庭の物置をDIYでキャンプガレージに改装。お気に入りのギアに囲まれて過ごす「ガレージキャンプ」という新たな試みも行っている。