プレーヤーだったからこそできる、高品質な動画撮影
ー村上さんのYouTubeやSNSを拝見すると、雪上での動画撮影のクオリティーがすばらしいですね。滑りながら撮影するのは、難しいのでは?
かなり特殊な撮影になります。定点撮影であれば、対応できるカメラマンはいると思います。でも、スキーヤーに並走しての撮影は、スキー技術や経験がないと危険です。
ースキーのプレーヤーだったからこそ可能なのですね。
スキー番組の撮影に参加したとき、出演者のスキーヤーから、「こういう画がほしかった!」っていわれたんです。そのときに、やはり”滑れるカメラマン”の需要はあると気づきました。
自分の場合、編集だけでなくアウトプットもできるので、そのへんも強みではありますね。強みを活かして、これから少しずつ仕事につながればと思っています。
ー日本は雪質がよいと、世界中のスキーヤー・スノーボーダーから注目されています。動画配信を続けていけば、海外の人々の目に留まる機会も増えますね。
そうですね。海外から注目を集められる企画としては、2030年の冬季オリンピック・パラリンピックがあります。現在(2023年2月時点)、札幌市が招致に動いています。実は、ここにあわせて『チーム金閣寺』としてのオリンピック企画を進めたいと考えているんですよ。
ーどのような企画をお考えなのでしょう?
たとえば、北海道のスキー場を紹介する映像の配信や、カーリング体験などですね。オリンピックの開催が決まって時期が近づいたら、仕事が舞い込んでくるはず、という淡い期待を抱いています(笑)。
ポジティブな発信で人は集められる
ー選手を経験され、現在は裏方として違う視点から業界を見られています。村上さんの目に、今のスキー界はどう映っていますか?
最近は、北海道を中心に、世界中から日本のスキー場に人が集まっています。一方で、スキー界に携わっている関係者のネガティブな発信が気になりますね。
ーどのような発信でしょうか?
「スキーはダメだ、ダメだ」という声ですね。でも、自分たちでネガティブキャンペーンをしていること自体が、ダメなんだと思います。
せっかく海外から実際に人が来てくれているんだから、もっとポジティブな発信をしていけばいいんですよ。そうなれば、絶対に日本人も、「じゃあスキー場に行こうか!」って気持ちになると思うんです。
たとえば、ゴルフ業界の人からは、明るい話をよく聞きます。「若い世代がゴルフをやりはじめた」というニュースがあったり。でも、スキーってそういう発信が全然ないんですよね。
ーポジティブな発信によって、人を集められると。
そう思います。あとはコンペティションの世界でも、金メダル至上主義から脱却しないといけない。「全員、金メダル取らなきゃダメなんだ」といったマインドから抜け出すべきです。
世界に向けた広い視野で、前向きな発言をしていかなければ、スキーに関わる人たちの気持ちは下がってしまいます。物も売れなくなってしまいますよね。
ースキーに関する前向きな話題は少ないのでしょうか?
話題になったとしても、「今年もスキー、ダメだわ」「スキー場には全然人が来ないみたいだ」と、ネガティブな声ばかりなんですよ。実際には、「いやいや、そんなことないでしょ」って思います。あれだけ国際スキー場のゴンドラに長蛇の列ができているのに、「なんでダメなの?」って聞いてみたいですよね。
昨シーズンは、スキー場にファミリー層がたくさん来ていました。コロナがきっかけで、屋外スポーツやアウトドアに取り組む人が増えたこともあります。
でも、そういうきっかけひとつで、人の動きは変わると思うんです。
この記事を書いた人
MORITAX
スキー専門誌にライター・編集者として在籍し、現場取材から選手スキー技術解説記事、ニューアイテム紹介まで幅広く担当。現在はライター・編集者として、スキーのみならずアウトドア関連の情報発信にも携わる。趣味はスキーヤーとキャンプで、スキー歴は30年以上。最近はカヌーでいろいろな湖に行くのが楽しみの一つ。