チョコレートは日々の疲れを癒してくれる身近なスイーツ。ところが、最近は以前より価格が値上がりし、気軽に買えなくなったことを残念に感じている人も多いのでは。チョコレートの値段が高くなったのは、原材料や生産者、環境をめぐる変化などが重なった結果です。今回は、原材料の産地から店頭に並ぶまでの流れをエシカルな視点でひも解き、企業の取り組みも紹介します。おいしいチョコレートが口に入るまでの背景を知れば、価格だけにとらわれない選択ができるのではないでしょうか。

チョコレートはなぜ高くなったのか

   
チョコレートが高くなった背景には、世界のカカオ豆価格が急上昇したことにあります。2020年にはカカオ豆の平均価格が約2.3ドル/kgだったのに対し、2025年1月には10.75ドル/kgまで跳ね上がりました。

2025年平均でも約7.8ドル/kgと2020年の3倍以上の水準となっており、一時的な値上がりではなく、当面は高騰した状態が続く見通しです。

原因の一つは、カカオ生産の中心であるガーナやコートジボワールでの異常気象や病害による収穫量の減少です。世界的に供給不足となっており、市場では原料の取り合いが価格の上昇に拍車をかけています。

さらに日本では、カカオ豆を輸入に依存しているため円安の影響も価格に直結します。為替レートが円安方向に動くと、菓子メーカーの原料コストが押し上げられてしまうことに。

以前は100円台から購入できた大手メーカーの50g前後の板チョコも、2025年下期では200円前後で販売される例が増えています。このように生産地の状況や市場取引、為替レートなどさまざまな要因が、私たちの身近なチョコレートの価格に反映されているのです。

参照:
カカオ豆価格の推移 |世界経済のネタ帳
明治 ハイミルクチョコレートの値上げ情報

チョコレートの生産とエシカルな課題


チョコレートが消費者の手に渡るまでには、私たちが意識しにくい課題がいくつも存在します。

チョコレートは生産から加工、輸送、販売に至るまで長い工程を必要とする食品です。その過程で森林伐採や農薬の使用による生態系への影響、輸送時の温室効果ガス排出など、環境への負荷も少なくありません。

また、カカオの主要産地である西アフリカでは、小規模農家が多く、カカオの国際価格が低迷すると生産者の生活が成り立たなくなるケースもあります。

十分な収入が得られない状況は、不安定な労働環境を生む要因の一つです。児童労働や長時間労働、不十分な安全対策、けがをしても補償のない働き方などにつながりやすくなります。

低価格や手軽さの裏側で、自然環境や地域社会に負担がかかっている現実が見えてくると、安さだけでない選択の軸を意識できるかもしれません。

エシカルをリードする企業の取り組み

スーパーやコンビニなど、店頭でよく目にするチョコレートのメーカーである企業も、前述のような課題に向き合い、取り組みを進めています。それぞれの課題は複雑で、短時間で解決できるものではありません。

ここでは、原料の生産地から製品づくりまで、長い目で努力を重ねている企業の取り組みに注目します。身近な商品を通して、エシカルな選択がどのように実現されているのかを見ていきましょう。

産地に根ざしたカカオ支援を続ける明治

チョコレートやビスケットなど、日本を代表するお菓子ヒットメーカー・明治は、カカオの調達段階から社会課題に向き合ってきました。カカオ産地での低収入を背景とした児童労働や強制労働、森林減少といった深刻な課題を自社の課題として捉え、改善に向けた取り組みを続けています。

2006年から続く支援活動「メイジ・カカオ・サポート」では、カカオ農家を実際に訪れ、地域の暮らし全体を支える活動を行ってきました。

苗木や肥料、発酵箱の提供による生産性向上や、井戸の整備、教育支援などにより、農家の収入向上と安定したカカオ生産の両立を目指しています。

また、日本企業として初めてNPO「International Cocoa Initiative(ICI)」に加盟し、児童労働・強制労働の撲滅にも注力。児童労働監視改善システムの導入や、製品の原料を農園までさかのぼれるトレーサビリティの確立を進めています。

こうした取り組みの成果として、明治は「明治サステナブルカカオ豆」の調達比率100%を前倒しで達成しています。

参照:
Meiji Cocoa Support カカオづくりを、持続可能に。明治にできることを、もっと。|明治ホールディングス株式会社
meijiと始めるエシカル消費 | 明治ホールディングス株式会社

「ガーナ」ブランドから環境配慮を広げるロッテ

チョコレートやガムで知られる日本のお菓子メーカー・ロッテの代表的な取り組みが「ガーナ」ブランドから生まれた「グリーンガーナ」。外箱にFSC®認証紙を使い、個包装には再生プラスチックを活用するなど、地球にやさしい包材を採用しています。

また、カカオを余すことなく活用する「ReCacao Note PROJECT」では、カカオ豆の皮(カカオハスク)を再利用したノートを製作し、ガーナの子どもたちへ届けてきました。

さらに、国連WFPの学校給食支援にも協賛し、国際協力NGOを通じて、ガーナの女性のいのちと健康を守る活動も継続しています。

参照:
カラダにも地球にもおいしい『緑のガーナ』が誕生!|ロッテ

エシカルを標準にするグローバル企業ネスレ

世界的食品メーカー・ネスレのエシカルな取り組みの代表例が、世界中で親しまれているチョコレート菓子「キットカット」。2020年秋から、海洋プラスチックごみの削減を目指し、ほぼすべての大袋タイプで外袋を紙パッケージへ切り替えました。

原料調達では、カカオを生産者一人ひとりまで遡って追跡するトレーサビリティを強化。森林破壊を防ぐため、植樹など森を再生する活動も進めています。こうした取り組みは、持続可能なカカオ生産の土台づくりにつながっています。

また、児童労働のリスクにも正面から向き合い、監視・改善システムを導入するとともに、学校建設や学用品の提供など教育へのアクセス改善を支援しています。

参照:
サステナブルなカカオの調達に向けて|ネスレ

チョコレートを楽しみ続けるための選択

チョコレートが「高くなった」という事実だけで捉えると、楽しみは小さくなってしまいます。しかし、“価格”という一つの物差しだけでなく、チョコレートが作られる背景や価値に視点を移せば感じ方は変わるかもしれません。

ここでは、エシカルな選択を重荷としてではなく、前向きに捉えるための情報を整理します。自分なりの基準でチョコレートを楽しみ続ける手がかりにしてみてください。

フェアトレード商品を選ぶ

エシカルな選択肢としてまず思い浮かぶのは、フェアトレードチョコレートでしょう。フェアトレードとは、原料をつくる生産者が適正な価格を受け取り、無理のない環境で働けるよう配慮された取引の仕組みです。

安さだけを追い求めるのではなく、生産の背景にも目を向けることで、チョコレートの未来を支えることにつながります。フェアトレードの商品は「価格が高め」という印象を持たれがちですが、近年は一般的なチョコレートの値上がりが続いており、価格差は以前ほど大きくありません。

フェアトレードチョコレートには、People Tree第3世界ショップBINON CACAODIVINE chocolateTheo ChocolateAlter Eco Foodsなどがあります。いずれもカカオ農家の暮らしや環境への配慮を重視し、継続可能な原料調達に取り組んできました。

これらの商品は、自社のECショップのほか、エシカル商品を扱う食品店や雑貨店、生協、通販サイトなどで購入できます。

また、特別なお店でなくても選択肢は広がっています。大規模小売グループ・イオンではフェアトレード認証カカオを使用したチョコレートを展開しており、イオン系列のスーパーや一部のコンビニでも販売中です。

エシカルな企業の商品を選ぶ

エシカルな企業の商品を選ぶことも、選択肢の一つです。フェアトレード商品でなくても、原料調達や環境、労働環境に配慮した取り組みを進めている企業のチョコレートを選ぶことで、日常の消費がエシカルにつながります。

明治やロッテ、ネスレのように、カカオ農家の支援や児童労働対策、環境負荷の低減に取り組む企業は増えてきました。こうした商品は特別な専門店でなく、いつものスーパーやドラッグストアで手に取れます。

自分の買い物が誰かの暮らしや環境を支えていると考えるだけで、気分が少し明るくなるかもしれません。

完璧を求めず、ありがたく味わう

エシカル消費に完璧を求めず、ただありがたく味わうことも、チョコレートを楽しみ続けるための大切な選択です。

必ずしもフェアトレード商品やエシカルな企業の商品を選ばなくても、カカオが育つ土地や人の手を想像しながら味わうだけで、価格上昇への見方は変わります。

遠い産地で育てられ海を越えて届いたカカオから製造されたチョコレートを、私たちは当たり前のように購入していますが、実は奇跡に近いものかもしれません。

価格だけに目を向けるのではなく、その背景に思いをはせながら大切に味わう。そんな姿勢が、チョコレートをより深く、前向きに楽しむことにつながるでしょう。

チョコレートの値上がりは、遠い産地で起きている変化が、静かに私たちの暮らしへ届いた結果でもあります。その背景を知ることで、「高い」「残念」と感じていた気持ちは、少し違った受け止め方へと変わるかもしれません。次にチョコレートを選ぶときは、価格だけでなく、その向こう側にある人や土地に思いをはせてみてください。そして、ひとかけらをゆっくり味わう時間そのものを、これまで以上に大切にしてみてはいかがでしょうか。

曽我部倫子

ライター

曽我部倫子

東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。

子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。