SDGsは、持続可能な開発目標として、2030年までに達成を目指す世界共通の目標です。経済や社会問題において、さまざまな目標を掲げるSDGsですが、環境問題とも深く関わりがあります。SDGsと環境問題の関係性や具体的な取り組みを紹介します。

SDGsと環境問題の関係性 

sdgs

SDGsには、貧困やジェンダー、経済成長など、社会における数々の課題が含まれています。なかでも環境問題は、世界各国で早急な対応が求められる重要な課題だと考えられています。SDGsでの環境目標とはなにか、ターゲットや実行手段を詳しくみていきましょう。

SDGsでの環境目標とは?

SDGsには、持続可能な社会の実現を目指した17の目標と169のターゲットがあります。数ある目標のなかで、環境問題に直結するのは以下の3つです。

  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標14:海の豊かさを守ろう
  • 目標15:陸の豊かさも守ろう

目標13・14・15は、気候変動や海、自然環境、生態系における環境問題に関係しています。それぞれの目標には、複数のターゲットがあり、目標達成に向けた具体的な対策が求められています。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

目標13「気候変動に具体的な対策を」は、地球温暖化に伴う、気候変動の抑制を課題としています。地球の気温は上昇を続け、地球温暖化や異常気象の影響で、自然環境が大きく変わりつつあります。地球温暖化の進行を抑えるためには、気候変動に対する各国の積極的な対策が必要です。

目標13「気候変動に具体的な対策を」のターゲットは以下の通りです。

13.1 気候関連災害や自然災害に対する強靭性と適応能力を強化する
13.2 気候変動対策を政策、戦略及び計画に盛り込む
13.3 気候変動対策に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する
13.a 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) の先進締約国によるコミットメントを実施し、緑の気候基金を本格始動させる
13.b 開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定と管理能力を向上するメカニズムを推進する

気候変動への直接的な対策のほか、自然災害へ対応する能力の向上や教育の普及が含まれています。

世界中で、気候変動が原因となる自然災害が発生し、多くの人的被害をもたらしています。被害を抑え、復興を支援するためには、自然災害への適応能力の強化や、それに伴う教育の拡充が必要です。

出典:国際開発センターSDGs室「ゴール13:気候変動に具体的な対策を」

目標14「海の豊かさを守ろう」

目標14では、海の豊かさを守るために、海の汚染を防ぐことや、乱獲、違法漁業を規制することを課題としています。

地球の7割を占める海は、生き物の命をはぐくみ、わたしたちの生活をより豊かにしてくれる大切な存在です。しかし、乱獲による海洋資源の減少や海洋プラスチック問題など、数々の環境問題が豊かな海の自然環境を破壊しつつあります。

これからも、持続可能な海の資源を保つためには、海洋汚染を防ぎ、漁業を管理する対策が必要です。

目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲットは以下の通りです。

14.1 海洋汚染を防止・削減する
14.2 海洋・沿岸の生態系を回復させる
14.3 海洋酸性化の影響を最小限にする
14.4 漁獲を規制し、不適切な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する
14.5 沿岸域及び海域の10パーセントを保全する
14.6 不適切な漁獲につながる補助金を禁止・撤廃し、同様の新たな補助金も導入しない
14.7 漁業・水産養殖・観光の持続可能な管理により、開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増やす
14.a 海洋の健全性と海洋生物多様性の向上のために、海洋技術を移転する
14.b 小規模・零細漁業者の海洋資源・市場へのアクセスを提供する
14.c 国際法を実施し、海洋及び海洋資源の保全、持続可能な利用を強化する

目標14のターゲットは計10項目。海洋汚染の防止から生態系の回復、違法漁業、乱獲の撤廃など、海洋資源を守るための直接的な目標が掲げられています。

海洋汚染や資源の減少に直結する原因の一つが、乱獲や違法漁業です。世界の水産資源の3分の1以上が、持続可能な水準を超えて漁獲されています。また、1970年から2012年の約40年間で海洋生物個体群の規模が50%近く減少しているとの調査結果があります。

水産資源の枯渇は、私たちの食生活に大きな影響を与える可能性があるでしょう。生態系を守り、多くの命をはぐくむ豊かな海を守るため、漁業に関係する多角的な対策が求められています。

出典:
国際開発センターSDGs室「ゴール14:海の豊かさを守ろう」
国連食糧農業機関(FAO)「世界漁業・養殖業白書2022年
WWF「Living Blue Planet Report 2015

目標15「陸の豊かさも守ろう」

目標15「陸の豊かさも守ろう」では、生態系を守ることや、森林保護、砂漠化の防止が求められています。砂漠化や酸性雨、無計画な伐採など、さまざまな影響を受け、地球上では毎年330万ヘクタールの森林面積が失われています。

また、自然環境の変化に伴い、数多くの生き物が絶滅の危機にさらされている事実も見逃してはいけません。鳥類は14%、哺乳類は25%、両生類は41%の種類が絶滅の危機にさらされているといわれています。

持続可能な未来に向けて、豊かな森、そして生態系を維持していくために、森林の保全や絶滅危惧種の保護に向けた対策が必要です。

目標15「陸の豊かさも守ろう」のターゲットは以下の通りです。

15.1 陸域・内陸淡水生態系及びそのサービスの保全・回復・持続可能な利用を確保する
15.2 森林の持続可能な経営を実施し、森林の減少を阻止・回復と植林を増やす
15.3 砂漠化に対処し、劣化した土地と土壌を回復する
15.4 生物多様性を含む山地生態系を保全する
15.5 絶滅危惧種の保護と絶滅防止のための対策を講じる
15.6 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正・衡平な配分と遺伝資源への適切なアクセスを推進する
15.7 保護対象動植物種の密漁・違法取引をなくし、違法な野生生物製品に対処する
15.8 外来種対策を導入し、生態系への影響を減らす
15.9 生態系と生物多様性の価値を国の計画等に組み込む
15.a 生物多様性と生態系の保全・利用のために資金を動員する
15.b 持続可能な森林経営のための資金の調達と資源を動員する
15.c 保護種の密漁・違法取引への対処を支援する

森林の減少や砂漠化を防止することや生態系を保つことをターゲットにしています。具体的な実行措置としては、森林の管理や生態系保全のための資金調達、外来種対策、違法取引、密漁の取り締まり支援を挙げています。

資金調達に関しては、森林減少が進む途上国に向けて、先進国が支援する枠組み(REDD+)がありますが、今後も世界各国で支え合い、対策を強化していく必要があるでしょう。

出典:
国際開発センターSDGs室「ゴール15:陸の豊かさも守ろう」
環境省「世界の森林を守るために」
IPBES「2019 Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)」

関連記事:いまさら聞けないSDGs!17の目標を身近な事例を用いてわかりやすく解説します

現代の環境問題とSDGsの役割

現代における環境問題を解決するために、これまでもさまざまな国際目標が掲げられてきました。主に、発展途上国を対象とした目標が多いなかで、SDGsは世界共通の目標を掲げている点に違いがあります。

また、環境だけでなく、社会・経済に関する目標があり、相互が影響を与え、関係するなかで目標達成を目指すところもSDGsの特徴といえるでしょう。

さらに、SDGsは、世界共通の目標として、私たち一人ひとりが現代の環境問題について考え、アクションを起こすための指針としての役割をもっています。

環境問題に関連する目標は、目標13「気候変動に具体的な対策を」目標14「海の豊かさを守ろう」目標15「陸の豊かさも守ろう」の計3項目。明確で、分かりやすい表現が使用されていることから、子どもへの環境教育としても活用されています。

現代の環境問題を解決するためには、世界各国が共通の目標を持ち、連携を深めていくことが重要です。そして、私たち個人がSDGsを正しく理解し、アクションを起こしていくことも、SDGs達成の欠かせない要素となっていくでしょう。

sdgs 地産地消
SDGsと地産地消のつながりとは?私たちが未来のためにできること

日本はSDGsでどれだけ進んでる? 

sdgs

2030年までに達成を目指すSDGs17の目標。日本では、どの程度進んでいるのでしょうか?ここでは、SDGsの達成度スコアやランキングから、日本のSDGsへの取り組みの現状を解説します。

日本の環境問題に対するSDGsの達成度

日本のSDGsへの取り組みは、目標を達成していると高く評価される項目がある一方で、未達成の項目が数多くあります。2023年に報告された日本のSDGsの目標別達成状況は以下の通りです。

評価 目標
達成済み(SDG achieved)
  • 目標4「質の高い教育をみんなに」
  • 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
課題が残る(Challenges remain)
  • 目標1「貧困をなくそう」
  • 目標3「すべての人に健康と福祉を」
  • 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
  • 目標11「住み続けられるまちづくりを」
  • 目標16「平和と公正をすべての人に」
重要な課題がある(Significant challenges)
  • 目標2「飢餓をゼロに」
  • 目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
  • 目標8「働きがいも経済成長も」
  • 目標10「人や国の不平等をなくそう」
  • 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
深刻な課題がある(Major challenges)
  • 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
  • 目標12「つくる責任、つかう責任」
  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」
  • 目標14「海の豊かさを守ろう」
  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」

教育や産業、技術に関する項目では、達成度が高い傾向があります。

そのほかに、目標6「安全な水とトイレを世界中に」目標11「住み続けられるまちづくりを」目標3「すべての人に健康と福祉を」など、健康・福祉に関連する項目に関しては、いまだ課題が残るものの、達成できているターゲットもあり、日本の達成度が高い分野です。

一方で、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」目標12「つくる責任、つかう責任」目標13「気候変動に具体的な対策を」目標14「海の豊かさを守ろう」目標15「陸の豊かさも守ろう」の5つの目標は、深刻な課題があると位置づけられています。

とくに、環境問題に対するSDGsの達成度は低く、課題が多く残されている状況です。

達成状況をさらに細かくみていくと目標14「海の豊かさを守ろう」と目標15「陸の豊かさを守ろう」では、ほぼすべての項目において、課題があると報告されています。

目標14「海の豊かさを守ろう」では、海洋ゴミ問題や海の酸性化、水産資源の減少が問題視され、目標達成に対し、低い評価を受けています。

2021年の改正漁業法により、漁業を取り巻く環境の改善に期待が高まっていますが、乱獲や違法漁業の規制に関しては早急な対応が必要です。また、海の健全度を数値化した「海洋健全指数」の評価が低いことから、海の環境問題解決には時間を要すると予想されています。

2023年の報告書をみると、日本の環境問題に関するSDGsの目標達成は、非常に厳しい状況といえるでしょう。

出典:
sdgtransformationcenter「Sustainable Development Report 2023

日本と他国のSDGs進捗比較​​

2023年に国連が発表した日本のSDGs達成度ランキングは、166ヵ国中21位。2022年の19位から、2ランク下がる結果となりました。また、達成度のスコアは前年度を0.2ポイント下回る79.4となり、2023年のSDGs達成報告書をみてみると、日本のSDGs達成には、まだまだ課題が多い状況ということが分かります。

日本のSDGs達成度ランキング(2016年~2023年)の推移は以下の通りです。

評価年 ランキング(スコア)
2016年 18位(75)
2017年 11位(80.2)
2018年 15位(78.5)
2019年 15年(78.9)
2020年 17位(79.1)
2021年 18位(79.8)
2022年 19位(79.58)
2023年 21位(79.41)

2017年のスコア80.2ランキング11位の評価をピークに、その後は下降傾向にあります。そして、2023年には、世界トップ20のランキングから外れ、過去最低のランキング評価となっています。

つぎに国別のSDGs達成度ランキングから、日本と他国との進捗状況を比較してみましょう。

2023年に発表された国別のSDGs達成度ランキングは以下の通りです。

順位 国名(スコア)
1 フィンランド(86.8)
2 スウェーデン(86.0)
3 デンマーク(85.7)
4 ドイツ(83.4)
5 オーストリア(82.3)
6 フランス(82.0)
7 ノルウェー(82.0)
8 チェコ(81.9)
9 ポーランド(81.8)
10 エストニア(81.7)
11 英国(81.7)
12 クロアチア(81.5)
13 スロベニア(81.0)
14 ラトビア(80.7)
15 スイス(80.5)
16 スペイン(80.4)
17 アイルランド(80.1)
18 ポルトガル(80.0)
19 ベルギー(79.5)
20 オランダ(79.4)
21 日本(79.4)
39 米国(75.9)
63 中国(72.0)
166 南スーダン(38.7)

1位を記録したフィンランドは、86.8のスコアを記録し、3年連続で首位を獲得しています。続いて、2位がスウェーデン、3位デンマーク、4位ドイツ、5位オーストリアと、1位〜20位まで、全て欧州が占めています。

フィンランド、スウェーデン、デンマークのトップ3を占める北欧諸国は、環境問題に関するSDGsやジェンダー平等、福祉の充実など幅広い分野で高い評価を受けているのが特徴です。

一方で、経済大国である米国や中国はそれぞれ、39位、63位という結果となり、日本と同様に課題が多く残されている状況です。日本のスコアは、米国や中国と比較すると高いものの、国別ランキングは下降傾向にあります。

日本がSDGs達成度を上げていくためには、行政を中心としたSDGsへの取り組みのほか、私たち一人ひとりがSDGs達成に向けて意識を高め、行動に移していくことが大切です。

出典:
sdgtransformationcenter「Sustainable Development Report 2023

SDGsにおける主要な環境問題は? 

sdgs

SDGsにおける主要な環境問題として「地球温暖化」が挙げられます。そのほかにも、わたしたちが持続可能な未来を築き上げていくためには、数々の環境問題を解決していく具体的な対策が必要です。SDGsにおいて、アプローチするべき、環境問題とは何か、具体的な例を挙げて紹介します。

温暖化とSDGsの対応​​​​

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」では、地球温暖化に対する対策が掲げられています。

そもそも地球温暖化の原因となっているのは、私たちが経済活動で排出し続けている大量の二酸化炭素です。二酸化炭素によって発生した温室効果ガスは、年々増加し続け、地球温暖化を加速させています。

地球温暖化の影響は、気候変動や自然災害など多岐に渡り、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼしていることはいうまでもありません。

具体的な数字で見ると、1850年~1900年の気温と比較して、2011年~2020年の気温は1.09℃上昇しています。気温が上がるにつれて、海面は上昇し、太平洋に浮かぶ島々が沈む、北極の生態系が維持できなくなるなど、深刻な状況が懸念されています。

地球温暖化を防ぎ、気候変動による自然災害の発生や、生態系への影響を抑えるために、今後さらなる対策の強化が求められていくでしょう。

SDGsの目標13では、気候変動への対策として、5つのターゲットと、実行手段を掲げています。

  • 気候関連災害や自然災害に対する強靭性と適応能力を強化する
  • 気候変動対策を政策、戦略及び計画に盛り込む
  • 気候変動対策に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する
  • 国連気候変動枠組条約(UNFCCC) の先進締約国によるコミットメントを実施し、緑の気候基金を本格始動させる
  • 開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定と管理能力を向上するメカニズムを推進する

気候変動への直接的な対応だけでなく、自然災害への対応力の強化や、気候変動対策の教育面の普及、開発途上国への支援などが盛り込まれています。地球温暖化を防ぐためには、二酸化炭素の削減に伴う温室効果ガスの排出量のコントロールが早急に求められていくでしょう。

SDGsのターゲットに含まれる国連気候変動枠組条約は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的にし、1992年に採択された条約です。1997年には、温室効果ガスの削減目標を規定した「京都議定書」を、2015年には「パリ協定」を採択し、温室効果ガス削減を世界各国へ義務づけています。

温室効果ガスの増加を防ぐことは、地球温暖化を抑制するための課題であり、SDGsの目標達成においても重要なターゲットとなっていくでしょう。

出典:

IPCC:「Sixth Assessment Report」

生物多様性保全のためのSDGsの取り組み

生物多様性保全の対策は、目標15「陸の豊かさも守ろう」のなかに含まれています。

そもそも生物多様性とは、地球上の多種多様な生き物が、複雑に関わりあって、生きていくことを指します。私たち人間の暮らしは、生物がもたらす数々の恩恵を受けて成り立ち、互いに関わりあうなかで、豊かな自然環境が守られているのです。

生物の多様性を守ることは、私たちがこれからも持続可能な社会を実現するために欠かせない目標であり、全てのSDGsの基ともいえるでしょう。

目標15「陸の豊かさも守ろう」に含まれる、生物多様性保全の具体的なターゲット・実行目標は以下の通りです。

  • 生物多様性を含む山地生態系を保全する
  • 滅危惧種の保護と絶滅防止のための対策を講じる
  • 保護対象動植物種の密漁・違法取引をなくし、違法な野生生物製品に対処する
  • 外来種対策を導入し、生態系への影響を減らす
  • 生態系と生物多様性の価値を国の計画等に組み込む
  • 生物多様性と生態系の保全・利用のために資金を動員する
  • 保護種の密漁・違法取引への対処を支援する

自然環境の保全や絶滅危惧種の保護、外来種対策などが、具体的なターゲットとして掲げられています。

また、森林減少の抑制や砂漠化防止など、自然環境の保護に関しても具体的な対策を提示しています。生物多様性保全のためには、絶滅危惧種を守るという直接的な対策だけでなく、すべての生き物が豊かに暮らすための自然環境を整えることが必要です。

酸素の供給や気温、湿度の調整など、私たちが生きていくために必要な環境は、生物多様性の基で成り立っています。人間を含む生き物すべては、互いに関わり合う中で、豊かな自然環境や新たな命をはぐくむことが可能となり、生存を続けられています。

つまり、絶滅危惧種の保護など、生物多様性を保護する活動は、絶滅を防ぐとともに、生態系のバランスを保ち、今後も自然環境を健全に保っていくために必要不可欠なアクションといえるでしょう。

SDGsの環境問題に私たちができること

sdgs 環境

SDGsにおける環境問題への対策は、わたしたち個人ですべて解決できるものではありません。しかし一方で、私たち一人ひとりのアクションが、今後の目標達成に大きく関わっていくと考えられています。今日から実践できる私たちの身近なSDGsを考えてみましょう。

個人レベルでのSDGsへの貢献方法

SDGsに貢献するための第一歩は、SDGsの目標やターゲットを正しく理解することです。SDGsの認知度が高まる一方で、具体的な17の目標や169のターゲットは、正しく理解できていない、詳しく分かっていないという方が多いのではないでしょうか。

とくに環境問題の分野は気候変動、海、陸の3つのテーマがあるものの、個人では何から始めたらいいのか分かりにくい傾向があります。ターゲットや実行目標を知ることで、わたしたちの行動がどのような環境の変化につながっていくのか、目標、目的が明確化されていくでしょう。

17の目標、169のターゲットを理解したら、自分たちができる範囲から、SDGsにつながる取り組みを始めていくことが大切です。

何をすればいいのか、具体的なアクションを知りたい方は、国連広報センターが公表する「持続可能な社会のための、ナマケモノにもできるアクション・ガイド」という、SDGsの行動指針を参考にする方法があります。

ユニークなタイトルに沿って、レベル1「ソファに寝たままできること」からレベル2「家にいてもできること」レベル3「家の外でできること」レベル4「職場でできること」まで、4つのレベル別に具体的な方法を紹介しているのが特徴です。

誰でもすぐにできる、SDGsの貢献方法から上級者向けの内容まで、私たちの生活に今日から取り入れられる数々の方法が提案されています。

「持続可能な社会のための、ナマケモノにもできるアクション・ガイド」で紹介されている一例は以下の通りです。

レベル アクション
レベル1:ソファに寝たままできること
  • 電気を節約する【電気機器を電源タップに差し込んで、使ってない時は完全に電源を切る】
  • 請求書が来たら、銀行窓口でなく、オンラインかモバイルで支払う
  • 印刷はできるだけしない
  • 持続可能で環境にやさしい取り組みをしている企業の製品を買うようにする
  • 必要ない時には照明を消す
  • ハッシュタグ#globalgoalsを使って、グローバル・ゴールズ/SDGsを達成するために何をしているか教える
レベル2:家にいてもできること
  • 短時間のシャワーを利用する
  • 生鮮品や残り物、食べ切れない時は早めに冷凍する
  • できるだけ簡易包装の品物を買う
  • エアコンの温度を、冬は低め、夏は高めに設定する
  • 肉や魚を控えめにする
  • 紙やプラスチック、ガラス、アルミをリサイクルする
  • 窓やドアの隙間をふさいでエネルギー効率を高める
レベル3:家の外でできること
  • 詰め替え可能なボトルやコーヒーカップを使う
  • 使わないものは寄付する
  • 買い物は地元でする
  • 買い物にはマイバッグを持参する
  • 「訳あり品」を買う
  • サステナブル・シーフードだけを買う
  • ナプキンを取り過ぎない
レベル4:職場でできること
  • 社内の冷暖房装置は省エネ型にする
  • 通勤は自転車、徒歩または公共交通機関を利用する
  • 職場で「ノーインパクト(地球への影響ゼロ)週間」を実施する
  • 人間にも地球にも害を及ぼさない取り組みに参加するよう、会社や政府に求める
  • 職場でリサイクルはできている? 会社は、生態系に害を及ぼすようなやり方をしている業者から調達をしていないか?日々の決定を見つめ直し、変えてみる

エネルギーを大切にすること、フードロスをなくし、ゴミを減らすこと、プラスチックや使い捨ての商品の利用を減らすことなど、わたしたちの日常生活ですぐに実践できる内容が紹介されています。

まずは、レベル1から、寝たまま、スマホ一つでできるアクションが数多くあります。例えば、郵便物や印刷を減らし、オンラインシステムを導入すること。今まで紙ベースで受け取っていたものを、スマホの手続き一つで、簡単にオンライン化できるかもしれません。

また、エネルギーを大切にするため、電化製品の使用を控え、不必要な照明を消すことは、小さなお子さんでも取り組めるSDGsの第一歩です。一人ではなく、家族で共通の目標を掲げれば、SDGsの貢献度がさらにアップします。

つぎに、レベル2として、食事に関する項目も実践していきましょう。食べきれないものは冷凍保存するだけでも、フードロスを防げます。簡易包装のものを選択し、リサイクル可能なものは、繰り返し利用して、ゴミを減らすことが大切です。

レベル3は主に買い物編。マイバッグ、マイボトルの持参はもちろん、地産地消を目指し、地元で買い物するといいでしょう。生産者から直接購入することは、輸送によるエネルギーの削減につながります。サステナブルシーフードを選ぶことは、「海の豊かさを守ろう」の目標達成に向けたアクションの一つです。

最後に、レベル4では、職場でできるSDGsが紹介されています。個人の声やアクションを、職場全体に広めることで、より多くの人がSDGsを意識した行動が取れるようになります。今まで取り組んでいた仕事のシステムや業務内容は、地球に負荷がかかっていないか、見直してみるといいでしょう。

日本は、SDGsの達成において、厳しい状況が続いています。SDGsの目標達成には、個人レベルでの貢献や取り組みが今後ますます重要になってきます。まずは、目標を明確化し、実践しやすいものから始めてみましょう。

SDGsの貢献方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

sdgs 食品 ロス
SDGsにも貢献!食品ロスを減らすためにできることを考えてみよう
sdgs 野菜
野菜とSDGsの関係を知ろう!毎日の食卓からサステナブルな世界へ

 

出典:

国際連合広報センター「持続可能な社会のための、ナマケモノにもできるアクション・ガイド」

地域コミュニティにおけるSDGsの取り組み例

SDGsの取り組みは、企業や地域のコミュニティにおいて盛んに実施されています。全国各地で広がる、地域コミュニティにおけるSDGsの取り組み事例を紹介します。

兵庫県豊岡市

兵庫県豊岡市は、日本海に面した都市で「コウノトリの野生復帰」に成功した地域として知られています。生物多様化と地域活性化を目指し、コウノトリの保護だけでなく、コウノトリを育む環境保全として、米や野菜の生産者と共に、化学肥料や農薬を使用しない自然にやさしい農業を進めていきました。

また、コウノトリだけでなく、水路や川に生息するさまざまな生き物の保護活動にも取り組み、地域一体となってプロジェクトを進めていった結果、2005年にはコウノトリの野生復帰に成功しました。生物多様化はもちろん、コウノトリをシンボルとした地域活性化にもつながっています。

千葉県見南房総市

千葉県の南房総市観光協会では、目標14「海の豊かさを守ろう」に通じるさまざまな活動に取り組んでいます。毎月開催されるビーチクリーンやゴミを使ったアート作品の製作イベント、またアクティブラーニングを取り入れた海洋問題への教育普及活動が主な取り組みです。

また、ビーチクリーン体験を含めたSDGsの企業向けワークショップや研修、イベントを企画するなど、SDGsを環境面から考える、学びの場を積極的に提供しています。

長野県信濃町

長野県信濃町は、山々に囲まれた自然豊かな地域です。野尻湖や黒姫高原など、観光資源が豊富な地域で、毎年多くの人々が保養地として訪れています。信濃町では、経済活性化そして環境保全の観点でもメリットがある「森林セラピー」の事業を進めています。

森林セラピーとは、科学的なエビデンスをもとにして、心身の健康維持や病気の予防を目指す森林療法です。専門の研修を受けた森林メディカルトレーナーと共に、森の中でプログラムに取り組んだり、宿泊、食事の提供をしたり、内容は多岐に渡ります。

森林セラピーの事業は、目標15「陸の豊かさも守ろう」に貢献し、森林の保全や管理、生物多様性の向上につながっている画期的な事例といえます。また、地域活性化や経済面での効果が大きいことも森林セラピー事業のメリットです。

長野県信濃町だけでなく、森林セラピーによる地域おこしや環境保全活動は、全国各地に広まりつつあります。今後ますます市場は拡大し、環境保全に向けた活動も活性化していくでしょう。

SDGsと国際環境保護条約 

SDGsと関係のある国際環境保護条約としては「国連気候変動枠組条約」や「絶滅のおそれのある野生動物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」が挙げられます。それぞれ、SDGsとどのような関係性があるのか、特徴や共通点を解説します。

SDGsと​​ワシントン条約の関係

目標15「陸の豊かさも守ろう」に関わりがあるのは、「絶滅のおそれのある野生動物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」です。野生動物の国際的な取引の規制や絶滅危惧種の保護を目的として、世界の約170ヶ国が加盟しています。

SDGsでは目標15のターゲットとして、絶滅危惧種の保護や絶滅防止、違法取引への対処などを掲げています。双方は、絶滅動物を保護し、密漁や違法取引を撲滅するという目的に共通点があります。

世界中では密漁や違法取引が後を絶たず、多くの動物の命が奪われてきました。とくに、ゾウやトラ、サイは、密猟や違法取引の対象となり、個体数が急激に減少しています。ゾウに関しては、2010年に、中央アフリカで約7,500頭のゾウが、失われたと推定されています。

また、トラは、約100年間で97%の個体数が消失。野生のサイの個体数は約25,000頭まで減少するなど、密漁の影響が野生動物の生態系を大きく変えてしまっているのが現実です。

密漁や国際的な違法取引を防ぐために、今後もSDGsのターゲットにもとづく、取り締まりの強化が求められていくでしょう。

出典:
国際連合広報センター「犯罪です!野生動物犯罪(第13回国連犯罪防止刑事司法会議)」

SDGsと国連気候変動枠組条約

国連気候変動枠組条約は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的にし、1992年に採択された条約です。その後、気候変動枠組条約締約国会議にて、1997年には、温室効果ガスの削減目標を規定した「京都議定書」を、2015年には「パリ協定」を採択し、温室効果ガス削減を義務づけています。

国連気候変動枠組条約は、目標13「気候変動に具体的な対策を」のターゲットに盛り込まれ、目標達成に向けた具体的な取り組みが求められています。今後も国連気候変動枠組締約国会議にて、新たな目標が制定され、SDGsの目標達成に向けた動きが加速していくことでしょう。

SDGsは、社会・経済・環境におけるさまざまな目標を掲げています。なかでも、環境問題に関連する目標は、私たちの生活に大きく影響するものであり、早急な対応が求められています。今後、SDGsの達成に向け、課題をクリアしていくためには、行政が取り組む大規模な対策だけでなく、一人ひとりがSDGsへの理解を深め、アクションを起こしていくことが大切です。持続可能な明るい未来のために、まずは、身近なところから、SDGsにつながる取り組みをはじめてみませんか。

ライター

AYA

静岡県出身。海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ち、結婚後に、タイ・バンコクへ移住。病気がきっかけで、ヴィーガンのライフスタイルに目覚める。現在は、2児の母として子育てに奮闘しながら、人と環境にやさしいサステナブルな暮らしを実践中。自身の経験をもとに、ヴィーガン、環境問題、SDGsについて情報を発信している。