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どのスポーツでも競技を発展において協会の存在は欠かせません。スケートボードの世界で30年以上の歴史を誇るAJSA(日本スケートボード協会)の取材記事パート②では、コロナ禍におけるコンテストの開催、一般企業との関わりなどを中心に伺いました。

【AJSA取材記 Part①】日本スケートボード協会によるスケートボードを通じた社会貢献と人材育成はこちら

AJSA”らしい”オンラインコンテスト

AJSA(日本スケートボード協会)

ーパート2もまずは読者の方たちに協会の概要説明からお願いします。

一般社団法人という形をとって、スケートボードを通して社会貢献をしている団体で、皆さんからはAJSA(ALL JAPAN SKATEBOARD ASSOCIATION)という略称で親しまれています。

メインの発信事業はもちろんコンテストの開催なのですが、世の中のスケートボードに関する問い合わせにも数多く対応しています。

公共スケートパークの建設や企業のマーケティング、選手のメディアや広告出演など、仕事は実に多岐にわたります。

ー昨年はコロナ禍でメイン発信事業であるコンテストが開催されませんでしたが、今年はどのような形になるのでしょうか?

スタッフ含めていろんな人の意見も聞きましたが、今年も今までのように通常通り春の開幕は難しいだろうという結論になりました。そこでリアルな現場のコンテストは後半を軸に開催したいという方向で動いています。

しかし、今後も変異ウイルスの感染拡大で第4波も来るかもしれません。ですのでそこもはっきりとやるとはいい切れないのが現状です。

ただし何もやらないよりは良いだろうということで、AJSAらしいビデオコンテストをこの春に開催する準備に取り掛かっています。

一定のルールを設けさせていただく予定ですが、詳細はまだ未確定なので決まり次第ウェブサイトやSNSを通じて告知させていただく予定です。

 

オンラインコンテストの弊害とその対策

AJSA(日本スケートボード協会)

ーその「一定のルール」を設ける背景には何か理由があるのですか?

AJSAは会員組織ですし、会員の中にはショップはもちろんパークを持っているところもあるので、そういうところと一緒になってやっていこうということがひとつなのですが、じつはそれ以外にも大きな理由があるんです。

というのも、オンラインコンテストがメジャーになっていくにつれてある問題が発生して、それに対する苦情が協会に寄せられるようになったんです。それはビデオコンテストに出るためにパークを占有してしまうということです。

やはり出場するとなると、少しでも良い成績を収めようと何回も何回も撮り直して自身の最高の滑りを見てもらおうとしますし、その気持ちも十分に理解できます。

しかし、スケートパークにはコンテスト出場者以外の方も多くいますし、コンテストに出る人達のために他のお客さんが満足に使えないということは平等性に欠けてしまうので、あってはならないことであると考えています。

ですので、そこを協会が先導してやるのは、また問題が起こってしまう可能性が非常に高いです。そういった事態になることは避けなければならないので、一定のルールを設けさせていただく予定でいます。

 

意図せず出来上がったファミリーコミュニケーション

AJSA(日本スケートボード協会)

ーGreen Fieldはスケートボードを通した教育が記事作りの柱のひとつになっているのですが、協会としてコンテストの開催は教育にどのような意義があるとお考えですか?

これは協会の意図していなかったところではあるのですが、全国大会を開催すると、そこに出ることで日本中に友達ができるようになります。そうなると選手の保護者同士も仲良くなるので、「こっちに遠征に来た時はウチにどうぞ。」「じゃあこっちに遠征に来た時はウチにいらしてください」といった形で自然とファミリーコミュニケーションができ上がっていったんです。

そういった環境の中で、選手達はスキルだけでなく礼儀作法なども学んでくれているように思います。そこが個人スポーツのいいところだと思いますし、サッカーや野球、バレーといった集団競技ではなかなかできないことのひとつなのではないでしょうか。

長年各選手の成長を見ていると、そういうところも各々伸びていってくれたなと思います。

また世界的に見ても、地区予選の上に全日本アマチュア選手権があって、そのまた上にプロ戦があるというピラミッド型のシステムができ上がっているのは、スケートボードでは日本だけなんです。

競技人口自体はアメリカよりも少ないですが、そのような組織構成と各地域の結びつきの強さが今世界的に日本が強い理由のひとつになっているので、このシステム構築がスキルと人間性の双方を磨く手助けになってくれたと思っています。

 

大企業のマーケティングにも協力

AJSA(日本スケートボード協会)

ー協会を運営していると今までコンテストや苦情対応、スケートパーク建設以外にも様々な業務があると思いますがどんなものがありますか?

ほんの一例なのですが、2019年の全日本アマチュア選手権の時に、選手や関係者にいろいろアンケートをとりにNTNというベアリングメーカーが視察にきたことがありました。そういった企業のマーケティング活動にも協力しています。

これはオリンピック競技への採用が大きく関係しているのですが、NTNという会社は風車の軸や戦車などに用いるベアリングも製造している非常に大きな会社です。なのでスケートボードの売り上げは、会社全体からしたら本当に微々たるものなのですが、そういう大きな会社でもスケートボードのことをもっとよく知ろうというムーヴメントが起きているのです。

実際に会社の方も、様々なベアリング規格がある中でたったひとつの規格がスケートボードの世界で皆が使っているということはまったく知りませんでしたし、その性能が選手のパフォーマンスを左右するなんて思いもしなかったようです。

だからといって大会をスポンサードしてくれるとか、そういったところまで発展させるのはハードルが高いですし、仮にできたとしてもすごく時間がかかると思います。

しかし、こういった活動も業界の発展という意味では、ものすごく可能性のあることのひとつだと思ってます。

ー水面下で様々な事柄が動いているのですね。

はい。でもそういった話はこれだけではないんです。他にもショッピングモールの出店のコンサルのようなこともお手伝いさせていただいてます。

既存の建物にどこを入るということではなく、スケートボードなどのアーバンスポーツを使って、どうやったら地域の若者たちに楽しんでもらえる場所を作れるのか、新しいオリンピック種目の発信地点になれるかといった動きのサポート、いわば広報に近い動きになります。

大企業と呼ばれるところは、スポーツへの貢献が企業スタンスのひとつになっているところもあるので、協会としても積極的な提案をしています。

ー積極的な提案とは具体的にはどのようなものになるのでしょうか?

大きなことをいえば、現在赤羽にある「味の素ナショナルトレーニングセンター」の代替施設を作ってくれませんかといったような話などです。

現在の施設にはスケートボードもなければボルダリングもなければブレイクダンスもありません。しかしスケートボードは2024年も採用が決まりましたし、2028年の開催地はロサンゼルスなので間違いなく開催するでしょう。

それであれば先行投資としても悪くはないではないでしょうかというプレゼンをしています。

かなり壮大な話ではあるのですが、オリンピック競技全体を見渡してもスケートボードはかなりメダル獲得の可能性が高い種目ですし、そこは伝統種目にも負けないサポートがあっても良いのではないかと思うので、協会としてはそういうところでも業界を全力でサポートしていきたいと考えています。

現状は開催に対するいろいろな声がありますが、仮に今夏の東京オリンピックでメダルラッシュとなれば、その可能性もあるのではないかと思っています。

 

独自に行っているインストラクター育成事業

AJSA(日本スケートボード協会)

ー貴重な話をありがとうございます。最後に最近はスクール活動が全国各地で活発です。AJSAではインストラクター講習会を長年開催されていますが、これについて教えていただけますか?

スクールを行う上で、ここだけは抑えておこうという基本的なところを、全国から業界関係者が集まるインタースタイルという場で”共有”しているものになります。スケートボードはこうして教えるんだよということを伝えているわけではありません。

元々この講習会でそんなに立派な指導者を作ろうとは思ってはいません。ただ裾野が広がっていくにつれて、正しいスケートボードのレッスンができる人の需要というのは、絶対に増えていくと思っていたので14年前からコツコツと開催しています。

そもそもスケートボードの教え方には正解も間違いもないですし、100人いたら100通りの教え方があって当然なのです。ただし教えるにあたっての基本というものは存在します。

そこを皆さんと共有しているんです。興味がある方はぜひ来年のインタースタイルで参加してみてください。オリンピックの結果次第でインストラクターの需要は爆発的に延びる可能性もあるので、受けてみて損はないと思います。

 

【AJSA取材記 Part③】日本スケートボード協会によるスケートボードを通じた社会貢献と人材育成

スケートボード業界はオリンピック競技への採用とコロナ禍によって大きな変革がありました。それによって問題も起こってはいますが、それ以上に大企業の進出や競技環境のさらなる充実といったポジティブな要素もあるようです。メダル獲得の可能性も高い種目なので、それがプラスの方向に転がっていったら良いですね! 次回は最後で少しお話していただいた、インストラクター事業を中心にお話を伺っていきます。

ライター

吉田 佳央

1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。