津波警報等が発令されると掲揚される津波フラッグ。今までは一部自治体の海水浴場だけでしたが、2020年(令和2年)の夏より、津波フラッグの掲揚が国の取り組みとしてスタートします。今回はこの津波フラッグについて解説します。

津波フラッグとは

津波フラッグとは、気象庁が大津波警報・津波警報・津波注意報(以下これらを津波情報等と表記)を発令したときに、そのことを広く知らしめるために掲げる赤と白のフラッグのことで、気象庁はこの旗を「津波フラッグ」と命名。

関係法令に正式に位置付けて全国への普及を目指します。

津波警報等は、テレビ、ラジオ、緊急速報メール、防災無線、サイレン、鐘など、さまざまな方法で対象地域の人々に伝達されますが、その伝達方法として新しく津波フラッグが加わりました。

津波フラッグのデザインは、長方形を四分割した、赤と白の格子模様です。

縦横比や大きさは決められていませんが、視認性を確保するため短辺1m以上が推奨されています。

これまでも津波警報等を伝達する手段として、先駆的な自治体の海水浴場では、オレンジや赤の単色旗が津波フラッグとして挙げられていました。

今までご覧になった方もいるでしょうが、今年の夏からはこのデザインの旗が津波フラッグとなります。

なお、このデザインは、船舶間の通信用の国際信号旗である「U旗(貴船の進路に危険あり)」と同じデザインです。

国際的には海からの緊急避難を告げるフラッグとして多く用いられています。

ただし、他の国際信号旗との組み合わせによって、別の意味になることがあります。

そして津波警報等が出されると、津波フラッグを人が海岸で振ったり、建物に掲げるなどの方法で事態を伝達します。

海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら、直ちに避難しましょう。

 

津波フラッグの統一と導入のきっかけ

津波フラッグの導入のきっかけは、2011年に発生した東日本大震災です。

揺れだけでなく東北地方を中心に巨大津波が襲い、甚大な被害をもたらしました。

その震災の被害のなかに、ひとつの見逃せないデータがありました。

それは、岩手、宮城、福島の各県の聴覚障害者の死亡率が、聴覚障害のない者の2倍にのぼったというデータです。

聴覚障害者の方には、防災行政無線やサイレンという聴覚による伝達方法は、無意味という結果です。

また、聴覚障害者でなくても、すぐに避難が必要な海水浴場などでは、視覚による伝達方法そのものが少ないということや、テレビやラジオはもちろん、携帯電話も所持していないことも多いのです。

波や風により音が聞こえない場合も考えられるなど、聴覚による伝達方法が役に立たない状況も多くあります。

さらに震災時は停電も発生したため、伝達方法は極めて限定的となってしまいました。

そのため、「津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会」が発足し、そのなかでフラッグによる視覚的な伝達が提案・検討が行われ、2020年夏からの津波フラッグの導入・促進につながったのです。

海岸で人によって振られたり、建物などに掲揚される津波フラッグは、高い視認性を誇ります。海水浴客や海上にいるレジャー客、そして聴覚障害者の方々に津波の危険をいち早く知らせ、避難を促すことが目的です。海でレジャーを楽しむときには、常に自然環境の変化に対して意識し、情報を得ることが基本ですが、津波は極めて非日常的な自然現象とはいえ、例外ではありません。見逃していると生死に直結する自然現象なので、必ず津波フラッグのデザインと意味は覚え、掲揚の有無を確認するようにしてください。

ライター

Greenfield編集部

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