2019年の世界の海水温が、これまでの観測史上もっとも高かったとする報告書が発表されました。実はこれ、海の生物たちや私たち人間にとって大問題なのです。現役ダイバーの視点から海水温上昇が私たちの生活に及ぼす影響を考えてみます。

海水温の上昇の原因

海水温 上昇

2019年の海水温が平年に比べて0.075℃高かったことが、科学雑誌「Advances in Atmospheric Sciences」で発表されました。

これは4年連続で海水温が上昇していることになります。とはいえ、海水温が0.075℃程度上昇したところで「微々たるものではないか」と思っている人も多いのではないでしょうか?

しかし、これは世界の海が数十年間で228ゼタジュールを上るエネルギー量を吸収したことを意味しています。専門家によれば「過去25年間で世界の海洋に吸収された熱量は、広島型原爆の36億個分に相当する」とのことです。

ではなぜ、世界の海の海水温が上昇しているのでしょうか?それには、2つの主な原因が考えられています。

自然的要因による海水温上昇

海水温 上昇

まず、ひとつ目の原因が「自然的要因」です。太陽活動やその日照時間、気流や海流などの変化が、海水温の上昇にも影響を与えていると考えられています。

人的要因による海水温上昇

海水温 上昇

そして、ふたつ目の原因が「人的要因」です。

まず、局所的なものとして、工場や発電所で冷却水として使われた水が排出されると、海や川に急激な温度変化を与えてしまいます。

気象庁は世界的に見ると海面水温は長期的に上昇傾向にあり、1891年から2018年までの変化率は100年あたり0.54℃上昇していると公表しています。

さらに、IPCC(気象変動に関する政府間パネル)によれば、海水温の上昇が地球温暖化の要因になった可能性が高いことを指摘しています。また、海水温の上昇も地球温暖化の影響を少なからず受けていると考えられており、負の連鎖が起こっているのです。

 

海水温上昇がもらたす影響

海水温 上昇

海水温が上昇することで何か問題はあるのでしょうか?

なかには海水温が上がれば、ダイビングをしたりサーフィンをしたりするときも寒くないからラッキーと思っている人もいるかもしれませんね。

ところが、海水温の上昇は私たちの生活をも揺るがしかねない大問題なのです。現在、懸念されている3つの問題を見てみましょう。

海の生物たちへの影響

海水温 上昇

ダイビングをしていれば一度は耳にしたことがあるサンゴの白化。長期にわたり白化現象が続くとサンゴは死滅してしまいます。

IPCCは、地球の平均気温が2℃上昇すると海水温も上昇し、サンゴは完全に死滅すると予測しています。

また、近年について深海魚が近海で発見されているのも、海水温の上昇が原因のひとつと考えられているのです。

なぜなら、海水温が上昇することで海水の酸素含有量が減り、深海にまで酸素が行き渡らないという事態が発生してしまうからです。

自然災害の増加

海水温 上昇

海面水温が高くなると大気中に含まれる水蒸気の量が増えます。

台風を含めた熱帯性低気圧は暖かく湿った空気が上空に運ばれて形成されるので、大気中の水蒸気が多いほど、より勢力を強める働きをすると考えられているのです。

近年の日本での大きな台風や豪雨による被害は、海面水温の上昇も一因といえるかもしれません。さらに、南極やグリーンランドの氷床の融解や海面が熱膨張を起こして体積が増えることにより、海面が上昇します。

これによって世界各地で多くの砂浜が失われることになり、モルディブやツバルといった環礁にある島国の水没も懸念されているのです。

気候の極端な変化

海水温 上昇

海水温の上昇で海流が変化し、海洋環境が一変する可能性も指摘されています。

海洋に存在する地球規模の流れが変化することによって、場所によっては極端な気候の変化が起こると考えられています。近年の雪不足といった気候の変化も、海水温の上昇によるものかもしれません。

 

海水温の上昇を止めるには

海水温 上昇

海水温の上昇を止めるために私たちができることは、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を減らすことです。

これは省エネなどによっても削減可能ですが、二酸化炭素の排出量が少ない再生可能エネルギーなどの発電方法が最も効果的といわれています。

一部の企業では、100%再生可能エネルギーで事業運営を調達することを目標に掲げる「RE100」というプラットフォームに加入する取り組みもはじまっています。

私たちが再生可能エネルギー重視の電力会社を選択することも、ひとつの取り組みとなるでしょう。

海の現状を知らない多くの人

海水温 上昇

また、海の現状を知らない多くの人は、海の変化に実感がわかず、温室効果ガス削減に危機感をもって取り組むことができません。

だからこそ海を遊びのフィールドとしているダイバーやサーファーが率先して、海の現状や魅力を世の中に伝え、海という自然環境に興味を持ってもらうことが大切なのです。

ぜひSNSを使ってひとりでも多くの人に、海で何が起きているのか発信していってもらいたいと思います。

産業革命以降1℃上昇しているといわれる地球温暖化は、2030年には1.5℃上昇するとIPCCは警告を出しています。今後も、地球温暖化が海水温の上昇に大きく影響すると考えられており、海の生態系に甚大な被害を与える可能性があります。私たちはまずこの現実を1人でも多くの人に伝えることが大切なのではないでしょうか。

ライター

Greenfield編集部

【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。