わずかな破れでも水没につながるドライスーツ。現場での使い方だけでなく、誤って保管したりメンテナンスをさぼったりしてしまうと、ドライスーツでのダイビングが不快なものになってしまいます。快適なダイビングのために、ぜひ参考にしてください。
ドライスーツはとても繊細なスーツ
マリンスポーツでのドライスーツはスーツ内に冷たい水を入れないために、あらゆる工夫がされています。ウェットスーツ以上に扱いは慎重にしなければいけません。特に、以下の点を注意しましょう。
首、手首の破れ
ドライスーツへ水が侵入する箇所は、主に首、手首、ファスナーです。首、手首に関しては水の侵入を防ぐためにシール(ゴム素材で締める)がほどこされており、少しでも破れがあると水圧でスーツ内に水が侵入します。
破れの主な原因は、無理やり引っ張ることです。脱着の際は爪を立てずに、指の腹でゆっくり引っ張ることを常に意識しましょう。
防水ファスナーの折損
防水ファスナーは金属と樹脂加工があり、特に金属は使い方や保管方法によっては折れてしまう可能性が高いです。折れてしまうと、完全にファスナーを閉めたとしてもあっという間にスーツは水没します。
扱い方や保管方法を誤ると、防水ファスナーは折れてしまいますので、後述する保管方法などをしっかり守りましょう。
ピンホールに注意
ピンホールとは、小さな穴のことです。目視では確認しづらいもので、首や手首、ファスナー付近以外の身体が濡れている場合はピンホールが原因です。
目視で確認できないほどの小さな穴で水没?と疑いたくなる事象ですが、水圧がかかるダイビングの環境下では確実に水没につながります。
ピンホールは岩やウニといった鋭利なものに当たったり、保管の際にできたりします。
専用のハンガー必須
ドライスーツは吊るして保管することが基本ですが、通常使用している衣類のハンガーだと首周りのシールやスーツ自体の生地が痛みます。
専用のハンガーは肩まで長く、首元にも負担がこないような作りになっているので、スーツに極力負担のない状態で干すことが可能です。
特に使用しないシーズンは、変な形で固まってしまわないように注意して干しましょう。
日常的なメンテナンス(自己点検)
ドライスーツは日頃の自己点検が大切です。簡単なので把握しておきましょう。
防水ファスナー用潤滑剤の塗布
ドライスーツの防水ファスナー潤滑剤はファスナーを円滑に動かすことができ、ファスナーの折れや破損を防ぐことができます。
使用する前日か数時間前に塗布することが、快適に使用するためのコツです。ドライスーツ用防水ファスナー潤滑剤は各ダイビングメーカーが出しており、種類もさまざま。
買い求めやすい価格なので、いろいろ試してみて、自分が使いやすいものを見つけてください。
エア漏れチェック
シリンダー(タンク)が必要になるので、潜る前やダイビングショップ・サービス(以下、ショップ)に訪れたときのチェックになります。
ドライスーツを着用し、潜るときと同様に首・手首はスーツのシールにしっかり密着させ、ファスナーまですべて締めます。そして胸にある給気バルブにホースをつなげて空気を入れ、スーツ内を空気でパンパンにします。
何もせずそのままの状態で、空気が抜けている場合はどこかに異常があり、水没する可能性が非常に高いです。その場合はメンテナンスに出しましょう。
ファスナーとバルブの水洗い
塩噛みしないように、ファスナーとバルブは真水で念入りに洗いましょう。
これはドライスーツに限ったことではありませんが、海水の塩分が残ったまま乾かすと、結晶化し、塩分除去剤を使わないと取れないほど固まります。そのまま使い続けるとファスナーやバルブが破損し、水没につながる可能性が高くなります。
ダイビング器材にファスナーやバルブ、ボタンなどが付いている場合は、真水でしっかりと洗うということを常に頭に入れておきましょう。
バルブの動作確認
バルブは切り替えができるか、ボタンは押せるかを確認しましょう。特に排気バルブは手動とオートの切り替えができないと、水中で大変バランスがとりづらいです。
異常が見られる場合は、メンテナンスに出しましょう。
ちなみに軽い塩噛み程度だと塩分除去剤で解消できる場合があります。自身で対処するのが不安な場合は、器材に詳しいショップスタッフと相談しながら処理しましょう。
すぐできる正しい保管方法
先述のように、ドライスーツはとても繊細です。誤った保管の仕方をすると、水没しやすくなったり、修理しなければならなくなったりと厄介です。
正しい保管方法は誰にでもすぐにできることなので、徹底しましょう。
ハンガーにかける
繰り返しになりますが、ハンガーにかけましょう。肩まである太めのハンガーで、スーツの首に負担がこないものにしてください。
ちなみに専用のハンガーは3,000円前後で販売しているので、スーツを長く使用するためにも購入をおすすめします。
どうしても場所がない場合は、膝を体操座りのように腕を前に交差させて、ふんわりと丸めた状態で保管しましょう。
ファスナーは閉める
ファスナーは閉めた状態で保管します。開けたままだとその分下に伸びて、首元に負担がかかるためです。
ちなみに保管前にファスナーに潤滑剤は塗らないでください。固まるおそれがあるため、潤滑剤の塗布は保管前ではなく、使用する前です。
完璧に乾かす
半乾きのままで保管しないようにしてください。スーツにとってよくないことはもちろん、カビや臭いの原因となり身体にも悪影響を与えます。
完璧に乾いた状態で、直射日光が当たらない風通しがいい室内に保管しましょう。
必須メンテナンスグッズ・アクセサリー
あらためて、ドライスーツを自身でメンテナンスする、保管する際に必要な用品、おすすめのアクセサリーを紹介します。
・防水ファスナー用潤滑剤
ファスナーの開閉をしやすくします
・専用ハンガー
ドライスーツに負担をかけないハンガーです
・ドライスーツ用の洗剤
生地を痛めづらく、発色の持続、消臭・防臭効果があります
・ドライスーツバック
かさばりやすいドライスーツを、簡単にコンパクトにし運びやすくするバックです
トラブル予防と対策
ドライスーツを長く使用するために必要な大前提があります。定期的なメンテナンスとクリーニングです。目視での確認がしづらいピンホールやエア漏れは、個人で見るには限界があり、放置していると水没の原因になります。
ドライスーツを使用しない期間は、収納する前に、メーカーにメンテナンスを出しましょう。汚れや臭いが気になる場合は、クリーニングも依頼してください。
重器材(BCD、レギュレーターセット)のオーバーホールと同様、1年に1回、もしくは100本に1回のメンテナンスがおすすめです。
ライター
non
マリンスポーツのジャンルを得意としたwebライター。海遊びの楽しみ方やコツを初心者にも伝わるよう日々執筆活動中。スキューバダイビング歴約20年、マリンスポーツ専門量販店にて約13年勤務。海とお酒と九州を愛する博多女です。