スペインでのノルディック・ウォーキング発展の歴史
スペインにノルディック・ウォーキングがもたらされたのは、今から約10年前のことです。
2004年から2005年にかけて、カタルーニャ地方やバレンシア地方に、スペインで最初のノルディック・ウォーキングの体験教室が開設されました。
実は、この両地方は、北ヨーロッパやドイツから多くの人が夏に太陽を求めて訪れる地域でもあります。
そのようなスペインでバカンスを過ごす北ヨーロッパの人たちがいたことが、スペインにノルディック・ウォーキングをもたらす理由の一つになりました。
そして、2005年ごろから、スペイン各地にノルディック・ウォーキングの普及を目的とした団体が設立され始めます。
現在、スペインにはノルディック・ウォーキングに関する団体が主に3つほどありますが、それらはすべてこの10年間で形成されたものです。
ノルディック・ウォーキングとアクティブ・ツーリズモ
元々、スペインはトレッキングや山登りが盛んな国です。
フランス国境沿いにはピレネー山脈がありますし、スペイン北部も山岳地帯。
アンダルシアにもシエラ・ネバダという山脈があり、ここを高地トレーニングの拠点にしているスペインのスポーツチームも少なくありません。
このような環境なので、登山やトレッキングはスペイン人にとって、かなり身近なスポーツです。
そんなスペインでノルディック・ウォーキングは、新しい山歩きの方法としてすぐに受けいられれることになりました。
加えて、スペインは日本と同じぐらいの「高齢化社会」。
多くの高齢者が健康に気を使っています。
そんな高齢者にとって、ノルディック・ウォーキングはチャレンジしやすいアクティビティであったことも、スペインで短期間に広まった要因のひとつです。
同時にここ数年、スペインでの観光の新しい流れとして、アクティブ・ツーリズム(Turismo activo)という動きが見られるようになりました。
アクティブ・ツーリズムとは、登山やトレッキング、ロッククライミングやスキー、MTBなど、自然の中でのスポーツを通じて、特に地方の観光を発展させようというものです。
このアクティブ・ツーリズムの流れが、スペインの地方政府がノルディック・ウォーキングを観光の柱の一つにしようと考える、一つの要因になりました。
その結果、現在では、多くの地方公共団体がノルディック・ウォーキングを楽しむ人に向けて、様々な情報を発信しています。
例えば、アンダルシア地方のセビリヤでは、近郊のノルディック・ウォーキングに適した30のルート紹介するパンフレットを製作しました。
一方カタルーニャ地方は、全部で200㎞にわたるノルディック・ウォーキングのルートを整備した上に、「ノルディック・ウォーキング・センター」という施設をこの地域に設置しました。
この「ノルディック・ウォーキング・センター」が作られた街のヨッレット・デル・マール(Lloret de mar)は、スペインで最も最初にノルディック・ウォーキングを体験するコースが作られた街でもあります。
競技スポーツとしてのノルディック・ウォーキング
今やスペインでは、ノルディック・ウォーキングはレジャーとして楽しむためだけのものではありません。
競争するスポーツ競技としても、ノルディック・ウォーキングが認知され始めているのです。
Federación Española de Deportes de Montaña y Escalada(スペイン山岳登山スポーツ連盟) は、2012年からノルディック・ウォーキングのスペイン杯(Copa de España)を開催しています。
スペイン杯のレースとはシーズン中4~5レースを戦い、上位の選手にポイントが与えられ、最終的にはその獲得したレース・ポイントの最も高い選手が、その年の優勝者になるというシステムです。
距離は各レース、10㎞から16㎞。
2018年には女性96人、男性120人の選手がこのスペイン杯のレースに参加しました。
また、スペインチャンピオンを決めるノルディック・ウォーキングのスペイン選手権も、2017年から開催されるようになりました。
スペイン選手権には男女合わせて100人ほどの選手が参加します。
スペインでは、ノルディック・ウォーキングの歴史はまだ浅いにもかかわらず、様々な形でレースが行われているのです。
ライター
Greenfield編集部
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