植物と微生物の力で、電気を生み出す植物発電。自然環境を守りながら発電できる、次世代のエネルギーとして注目を集めています。植物発電の仕組みや、興味深い取り組みをご紹介します。
植物発電とは?
植物発電とは、植物が本来もつエネルギーを、電気に変える新しい発電方法。環境に負荷を与えない持続可能な発電システムとして、注目を集めています。
詳しくは後述しますが、植物が元気に育っている環境であれば、どんなところでも発電できるのが大きな特徴。さまざまな場面で活躍する可能性を秘めた、画期的な発電方法なんです。
植物発電の仕組み
植物発電は、簡単にいうと、植物本来の循環作用によって生まれるエネルギーから電気を生み出す仕組みになっています。
まずは、植物本来の循環作用について説明しましょう。植物は生きていくために、光合成によってでんぷん(糖)を作り、根っこから排出しています。その糖を土の中で食べて分解するのが微生物のはたらきです。
土に住む微生物が糖を食べると、土の中に電子ができます。そこで土の中に発生した電子を集めて、電気に換えることで発電が行われるのです。
そのため植物発電では、植物と微生物によって生み出された、電子を集める必要があります。
この役割を担うのが、マグネシウムの金属板と木炭です。土の中に入れたマグネシウムが電子を集めて、炭に送ることで電流が生まれ、電気を利用できるようになります。
植物発電では、植物と微生物が生み出した電子を利用することで発電を行っているのです。
植物発電のメリット・デメリット
植物発電のメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
植物発電のメリット
植物発電の特長としては、まず設置のしやすさが挙げられます。発電装置はシンプルで、植物が育つ土に炭とマグネシウム(金属板)を埋めるだけ。大掛かりな装置が必要ないので、設置場所に困りません。
また、植物が元気な状態を保っていれば、24時間いつでも発電できるのも大きな強み。太陽光や風力発電のように、周囲の気象条件に影響されることがありません。
さらに、発電によって排出されるのが、水のみである点もポイントです。火力発電などのように、温室効果ガスが排出されることがありません。地球にやさしく、長期的に発電を続けられることも植物発電のメリットといえます。
これらのメリットを活かして、山奥での発電や、災害対策用の電源としての利用が期待されています。今後ますます活用の場が広がるよう、研究が進められているところです。
植物発電のデメリット
植物発電のデメリットは、発電できる電気の量が少ないことです。消費電力が少ないLED照明など、使用できる用途は限られています。
また、安定的に発電するためには、植物を元気な状態に保つことが必要です。土が乾くと植物に元気がなくなり、発電量が不安定になってしまいます。
しかし、植物が元気に育ってさえいれば、安定した電気の供給が可能です。国内では、街の植え込みなどで、ライトアップ用に発電するケースが多く見られます。
植物発電の事例を紹介
日本国内では、植物発電を取り入れたさまざまな取り組みが行われています。植物発電を身近に感じられるイベントや、事例を紹介します。
botanical light(ボタニカルライト)/株式会社グリーンディスプレイ
植物発電で点灯するLEDライトのプロダクトシリーズです。広範囲で光る幻想的なイルミネーションから、屋内のテラリウムと組み合わせたものまでバリエーションはさまざま。オフィス・行政機関・学校をはじめとして、豊富な導入事例があります。
一例をあげると、丸の内ストリートパークや東京ミッドタウン日比谷で、敷地内のイルミネーションに導入されています。世田谷区立太子堂小学校では、ライトの設置を体験できる授業が行われました。
開発のきっかけになったのは「植物を大切にするお礼に電気がもらえたら」というアイディア。植物を大切にする想いが、目に見える光になって帰ってきます。場所と目的に合わせた植物発電で、周囲をより魅力的に照らすライトです。
CHARGING SPOT BOTANIST/BOTANIST
表参道で開催された、ライフスタイルブランド「BOTANIST」のポップアップイベント。植物発電を実際に目で見て、体験できる取り組みです。
「植物と共に生きる」をコンセプトにしたBOTANISTが、植物の可能性を発信する「BOTANICAL REPORT」の第一弾として企画。会場では植物発電の仕組みを学べるほか、植物発電によるスマホの充電が体験できるコーナーが設けられました。
BOTANISTは、今後も植物の知られざる力について、積極的に発信をするとしています。
参考:BOTANIST
地球にやさしい次世代のエネルギーとして、注目を集める植物発電。植物と微生物の力だけで発電できる、エコでユニークな発電方法です。限られた小さなスペースでも設置できて、植物と水さえあれば発電ができます。本格的に実用化されるのはまだ少し先かもしれませんが、イベントなどで導入される機会は増えてきました。今回の記事も参考に、植物発電で灯される明かりを見に行ってみてはいかがでしょうか。
ライター
AYA
静岡県出身。海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ち、結婚後に、タイ・バンコクへ移住。病気がきっかけで、ヴィーガンのライフスタイルに目覚める。現在は、2児の母として子育てに奮闘しながら、人と環境にやさしいサステナブルな暮らしを実践中。自身の経験をもとに、ヴィーガン、環境問題、SDGsについて情報を発信している。