熊の生態を知っておこう
ツキノワグマとエゾヒグマ
日本に生息している熊は、ツキノワグマとエゾヒグマの2種類です。エゾヒグマは北海道の広い範囲に、ツキノワグマは本州と四国の一部に生息。
昔は九州にもツキノワグマが生息していたようですが、50年以上前に絶滅したとされています。
※クマの生息分布図
環境省(2004)による分布確認地点を水色で、その後の分布拡大エリアを赤色で示しています。
ツキノワグマの体長は120〜180cm、体重はオスが50〜120g、メスが40〜70gほど。
対して、エゾヒグマの体長は、メスでも160〜180cm、オスは190〜250cmを超え、大きい個体は体重500kgに達するとか。
同じ熊でもツキノワグマとヒグマでは生態がかなり異なるため、今回は遭遇率の高いツキノワグマにフォーカスして進めて行きたいと思います。
ツキノワグマの生態
活動時期
ツキノワグマはだいたい12月〜4月まで冬眠するので、活動時期は5月〜11月くらい。
6月頃に繁殖期を迎えますが、この時期は熊の精神が高揚しているので、遭遇すると最も危険と言われています。
夜行性で日中はあまり動きませんが、午前4〜7時の早朝、または午後5〜9時の夕方から夜にかけて活動します。
食物
雑食のツキノワグマですが、食物の9割以上は葉や果実や木の実などの植物です。冬眠から覚めた熊は、山菜などを好んで食べます。
山菜採りに山に入った人が熊の被害に遭うことが多いのは、ちょうど冬眠開けと時期が重なるからなんですね。夏は虫や蜂蜜を探して食べ、秋になると木の実を食べます。
また、動物の死骸を食べるほか、ニホンカモシカやイヌワシのヒナなどを捕獲して食べるものも存在するため、肉食の傾向もあります。
国内では針葉樹の植林が増え、熊の食物であるドングリがなる広葉樹が減ってしまったことが、熊が里に下りてくるようになった原因のひとつと考えられています。
足が早く、木登りや水泳も得意
熊はのそのそと歩いているイメージがありますが、実は時速40kmで走ることもある俊足の持ち主。遭遇したときに走って逃げても、スピードでは勝てませんね。
また、泳いだり、木や急斜面を登るのも得意。一方、下り坂は苦手なようで、あまり谷の深い場所には下りてこないようです。
視覚は人間と同じくらいですが、聴覚と嗅覚は犬並に優れています。
熊対策を万全に
熊に遭ってしまったときの対策はもちろん必要ですが、何よりも大切なのは、熊に遭わないようにすることです。
「熊に遭うのは運次第」というのも一理ありますが、遭わないように気をつけることで、遭遇率はかなり低くなります。
以下のことを常に意識し、徹底しましょう。
- 熊の出没情報があった場所に近づかない
- 早朝・夜間は熊が出没しやすいので行動を避ける
- 一人で行動しない
- 鈴や笛などで熊に自分の存在を知らせる
- 熊の足跡や爪痕、フンを見つけたら引きかえす
- キャンプなどで食べ物を放置しない
熊は人間よりも嗅覚や聴覚が優れているため、たいていは向こうが先に人の気配を察して遠ざかって行くと言います。
しかし、笛や鈴の音がかき消されるほど流れの激しい川の曲がり角や、背丈ほどある薮を漕いでいるときなどは、出会い頭に驚いて襲ってくる可能性も。
ここで熊に遭ったらヤバいな・・・という場所を通るときは、事前に笛を吹いたり、爆竹を鳴らしたりしてこちらの存在をアピールしましょう。
もし熊に遭ってしまったら・・・
遠くに熊の姿を見つけたとき
決して大きな声を出したりせずに、じっとしていましょう。熊が気づいていない場合は、ゆっくり後ずさりして立ち去れば問題ありません。
一番やってはいけないことは、背中を見せて走ることです。熊は走るものを追いかける習性があるので、これだけは肝に銘じておきましょう。
近くに熊がいたとき
目が合うほどの近距離で遭遇した場合は、視線を外さず、睨みつけたままゆっくり後退。ほとんどの場合は熊の方から逃げて行くようです。
手を上げて自分を大きく見せることも有効だとか。決してパニックになって騒いだり、走ったりしないように。
また、カメラのレンズを動物の目だと勘違いして襲ってくることもあるそうなので、絶対に向けないようにしてください。フラッシュ撮影などはもってのほかです。
超近距離で遭ってしまったとき
冷静にといっても難しいかもしれませんが、自ら攻撃することは絶対にしないように。熊が立ち去ってくれることを願い、睨みをきかせるしかありません。
突発的に襲われたら、丸くなって腕で頭と首を守り、致命傷を避けましょう。万が一の場合に、熊撃退スプレーや刃物などを、取り出しやすいようにしておくことも大事です。
鼻の頭が弱点なので、一瞬の隙を狙って攻撃できれば何とかなるかも・・・ちなみに、死んだふりは全く意味がないらしいのでやめましょう。
熊は火を怖がるというのも根拠は無いようです。
これらはあくまでツキノワグマに対する対策で、ヒグマの場合は同様とは限りません。また、2016年に起きた秋田の人喰い熊事件のように、通常では考えられない行動を起こす個体もいます。
その場合は運が悪かったとしか言いようがありませんが、常に動物との遭遇を意識しておくことが大切です。
必携!熊よけグッズ
熊よけアイテム
人間の存在を熊に知らせる熊鈴やホイッスルは、効果てきめんというわけではないですが、やはり付けていないよりはいいでしょう。
爆竹はかなり大きな音がするので、気配がする場所では効果がありそうです。
いざというときのアイテム
いくら注意していても、覚悟しなければいけないときが来るかもしれませんね。そんなとき、熊撃退スプレーを持っていれば少しは落ち着いて対処できそうです。
ただし、スプレーはかなりの至近距離(5mくらい)じゃないと効かず、風向きも関係してきます。使用するときは本当に冷静にならなければなりませんが、お守りだと思って常に携行しましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。