夏の要注意生物にご用心
夏はアウトドア遊びがもっとも楽しめる季節です。
とくに、涼しい山間部でキャンプやハイキングなどをされる方が増えますが、自然の中でアウトドアを楽しむ際に忘れてはならないのは、人は自然界にお邪魔している存在だということ。
以前は、自然界の住人である野生動物の多くは、人を怖がり出会っても逃げ出しました。
しかし、餌不足で人里に近づくようになり、おもしろがって餌付けする人もいるため、人間を怖がらないケースも増加しています。
また、夏から秋にかけては、危険な昆虫との遭遇も増えます。そこで、キャンプやハイキングで遭遇しやすい要注意生物の特徴と対策についてご紹介します。
隙を見逃さない動物
開放的な気分でつい気がゆるみがちな夏のキャンプですが、ちょっと目を離した隙にBBQの食材を盗まれたりします。
その犯人は、野生動物。とくに、カラスとサルは人を恐れず、こちらの隙をうかがう知恵と大胆さを兼ね備えています。
カラスは一瞬の隙を突き、食材だけでなく調味料や菓子類まで盗っていきます。手を器用に使うサルは、さらに強敵。
昼間にテントサイトを離れた際に、クーラーボックスに入れた食材や食料専用テント内のテーブルに置いた食料をすべて持って行かれた、などという被害もあり得ます。
カラスやサルだけでなく、真夜中のキャンプ場は夜行性のタヌキやキツネも現れ、食材や残飯を荒らしていきます。
食材を狙う動物の対策
食材は、ロック機構の付いたクーラーボックスに入れるか、車内保管がおすすめ。さらに、夜間に人のいるテントを襲うこともあるので、専用の食料テントで保管します。
ゴミは、可能なかぎり燃やして減量し、臭いをシャットアウトするため密封してこちらも車内保管します。
登山道で出会うイノシシ
イノシシは、生息環境による個体差はありますが、オスで体重80~180kgにもなる大型哺乳類です。成獣は時速45kmもの速度で走行可能で、突撃されれば大けがをします。
低山帯から平地にかけて森林や草原に生息するイノシシは、夜間に人里に出没して野菜の食害被害を思い浮かべることから夜行性と思われています。
しかし、実際は基本的に昼行性で日中に採餌行動をとるため、登山道とけもの道が交差している箇所などで遭遇する危険性が高くなります。
登山道周辺で道の法面に掘り返したような痕跡があると、イノシシが採餌した可能性があるので要注意です。
イノシシ対策の基本
イノシシは、こちらが攻撃姿勢を見せないかぎり襲ってきません。しかし、いきなりの鉢合わせで驚かせ急に逃げ出せば、イノシシを刺激し興奮させてしまいます。
そこで、鉢合わせを避けるために、山道を歩いているこちらの存在のアピールが重要。ラジオや鈴などを鳴らす方法や、人と話しながら歩くのも有効な対策です。
万が一遭遇した際は、ゆっくりと後ずさりしながら距離を取り、食料等があれば置いて逃げます。大声で威嚇したり、石を投げたりするのは、イノシシを刺激するだけです。
イノシシの眼前で傘を急に開くと、対象物が突然見えなくなることで不安を感じて、突進を止める効果があります。
刺されると長引くチャドクガ
夏のキャンプは、涼しい木陰にテントを張りたくなるもの。その木陰で遭遇するのがチャドクガの幼虫です。チャドクガは年2回孵化し、2回目は8~9月に出現します。
幼虫の餌は、主にツバキやサザンカ、ビワの葉ですが、桜や梅などのバラ科、ブナ類(クヌギ、コナラ、クリ)も好むため、キャンプ場で非常に多く遭遇する厄介者。
チャドクガの幼虫には微細な毒針毛があり、外敵が近づくと風に乗せて毒針毛を飛ばすため、近づくだけで被害に遭います。
キャンプ場で多く発生するのは、木陰に張ったテントに付いた毒針毛が、撤収時に腕や衣服に付着するケースです。
触れた直後からかゆくなり、1~2日後にかゆみの強い赤い発疹が生じます。かゆみは2~3週間続き、掻きむしると被害は拡大します。
チャドクガの対策
チャドクガの毒成分はタンパク質由来のため熱に弱く、50℃以上のお湯で無毒化されます。そこで、被害に遭った際に着ていた衣服は、50℃のお湯で洗い乾かしてからアイロンをかけます。
- 刺された際の処置
毒針毛が肌に触れた周辺を、ガムテープなど粘着力のあるテープでそっと押さえて毛を除去し、熱めのシャワーで洗い流します。
刺された患部には、抜けにくい毒針毛が大量に付着しているため、患部に触れないよう注意してください。塗り薬は、抗ヒスタミン軟膏や抗ヒスタミン含有ステロイド軟膏が有効です。
被害範囲が広い場合や目の周辺を刺されたら、水で十分に洗い流した後、皮膚科や眼科を受診してください。
もっとも危険なスズメバチ
キャンプ場や登山道での出現率が高く、クマやマムシなどの危険生物より被害に遭う確率が高いのはスズメバチです。
スズメバチは攻撃性と毒性の高さで知られていますが、刺傷による死亡者数はほかの危険生物よりはるかに多く、この10年の平均で年20人前後に及ぶほどです。
死亡例の多くは、アナフィラキシーショックによる血圧低下や浮腫による呼吸困難が原因で、短時間(数分~10数分)で症状が現れます。
スズメバチの対策
スズメバチの活動時期は4~12月と長く、繁殖期の7~10月は注意が必要です。とくに、8月末から10月にかけてはスズメバチの餌が減るため、攻撃性が高くなります。
スズメバチの天敵は、巣を襲い幼虫や蜜を食べるクマで、そのため黒っぽく見える物を敵と誤認して攻撃します。そこで、黒っぽい服装は避け、白い帽子をかぶるなどスズメバチを刺激しない対策を施します。
その上で、重要なのはスズメバチと遭遇しても刺激しないこと。振り払ったり叩き落としたりするなど過剰に反応すると、かえって襲われる危険性は高くなります。
- 刺された場合の処置
その場から遠ざかり、刺された部位を水で洗い流します。次に、傷口をつまむかポイズンリムーバーなどで毒液を体外に排出します。
腫れてきたら抗ヒスタミン軟膏を塗り、めまいや嘔吐、気分が悪いなど症状が悪化した場合はすみやかに医師の手当てを受けます。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。