誰でも簡単に楽しめるSUPですが、最低限の気象に関する基礎知識がないと思わぬ大事故につながります。
今回は、SUPの天敵「風」について解説します。
SUPはとにかく風に弱い
ボードとパドルだけで進むSUPは、誰もが手軽に始めることができ、また簡単にマスターできるウォータースポーツです。
しかし、海、湖、川とSUPを楽しむ場所は自然豊かなところがメインのフィールド。
そんな自然豊かなところで気をつけたいのが天候です。
雲や日差しは目に見えますが、風は目に見えないため注意を怠りがちです。
しかし、風を甘く見てしまうとボードが風に流され遭難事故につながるのです。
風の力を侮ってはいけない
たかが風、されど風。風の力は思っている以上にパワーがあり、人間の力でねじ伏せることは不可能です。
風が前方から吹いてくると、どんなに力を込めて頑張って漕いでいても前に進むことが非常に難しくなります。
一方、背後から風が吹いてくると、そのまま風の力に押し流され、SUPは意にそぐわない風下へとどんどん進むことになります。
このような状態を「流される」と言います。
インフレータブルボードは特に要注意
SUPボードには、大きく分けるとハードボードと空気を入れて膨らませるインフレータブルボードの2タイプがあります。
SUPの推進力は、パドルで水をかいて進む事であるため、風に対する抵抗力が弱いことが特徴です。
特に、インフレータブルボードは、例えて言うならゴムボートと似た構造で、横からの風に弱く、横流れという現象が起きます。
これは、前方に向かって漕いでいるにもかかわらず、ボードが風下である横方向へ押され流されていく現象です。
持ち運びが楽、保管場所をとらないなどの点から人気のインフレータブルボードですが、風に流される事故が多発していることも事実なのです。
目に見えない風は肌で感じることが基本
目に見えない風は、今どのぐらい吹いているのか判断することがとても難しいもの。
日本の天気予報では、風の強さをm/s(メートルパーセコンド)と秒速で表します。
台風などが来る前に、風速20mなどとニュースで伝えますが、これは秒速を省略しているのです。
風速は1秒あたりに風が進む距離を表しています。
実際に目で見えるわけではないのでとてもわかりづらいもの。
そこで、目安となる判断方法を覚えて、水面で風が吹いてきた時の参考にしてください。
風の強さを知っておこう
風の強さは、ビューフォート階級表で表されます。ここでは、風速5m/sの目安を掲載します。
・風速0m/s 平穏
煙がまっすぐ立ち上る無風状態、鏡のような水面、初心者のSUP向きコンディション
・風速1m/s 至軽風
煙が少したなびく、水面にさざ波が立つ、SUP向きのコンディション
・風速2m/s 軽風
そよ風を顔に感じる、吹き流しが動き出す、SUP初心者は注意するコンディション
・風速3m/s 軟風
ところどころに白波が現れる、小波の大きいものが波頭が砕けはじめる、SUP初心者には向かないコンディション
・風速4m/s 和風
髪の毛が風下へたなびく、白波が多くなる、SUP初心者は流されるコンディション
・風速5m/s 疾風
髪の毛が乱れる、水面一面に白波が生じる、SUP初心者には危険なコンディション
SUP初心者は風のない日がおすすめ
SUPは上級者でも風が大きな壁となります。
漕ぐ力が弱い、ボードの上で安定できない初心者にとって、風は天敵です。
ボードを進めることに集中してしまう初心者は、水面で風を感じることを忘れがち。
気がついたら、ボードを出した場所からとんでももなく遠い風下に流されていたなんていうこともよくあるのです。
SUPを漕ぎ出す前に、まずは風のチェックをすることを忘れずに行いましょう。
風の強さは一定ではない
SUPで漕ぎ出す前に、風の向きや強さをチェックすることが基本ですが、風は常に同じ一定の強さで吹いているわけではありません。
風の特徴は呼吸をするように、強くなったり弱くなったりするところにあります。
風が呼吸する状態を「ブロー」と呼び、「ブローが強い」「ブローが弱い」といった使い方をします。
風が強くなる場合は、はじめのうちは広い間隔で強いブローが入っていても、だんだんとブローの間隔が狭まり、やがて一定して風が強く吹き出すことがあります。
水上で、このブローを感じたら、風が強くなる前兆として捉え、なるべく早く岸に戻ることがおすすめです。
天候の急変を風で読み取る
風が吹いていないことを確認して沖へ向かって漕ぎ出しても、風向きや強さが急激に変わることがあります。
特に、急に冷たい風が吹いてきた場合は、寒冷前線が通過することがあります。
寒冷前線が通過する前には、北風が強まるため、注意が必要です。
ヨットやウインドサーフィンで最も事故が起こる時が、この寒冷前線通過時です。
そよそよしていた風が急に冷たい風へと変わったら、すぐに岸に戻りましょう。
もし風に流されたら
風は、気圧配置だけではなくその土地の地形によっても強くなります。
特に湖のように山に囲まれている場所では、その地方特有の風が吹く可能性があります。
風が吹くメカニズムはとても予想がしにくいため、その土地のウインドサーフィンまたはカヌーショップ、マリーナなどで確認することがおすすめです。
また、急激な風の変化で風下に流された場合は、一番楽に目指せる岸(風下)を目指すことが基本です。
最初にSUPを出した場所から離れていても、その場所が風上にある場合は、戻ることができません。
風下に岸がない場合は、目指すことが可能な岸を目標にしましょう。
また、風に流される可能性を考えて、携帯電話などの通信機器を携行することがおすすめです。
風に流されることは、命に直結することであると考えてください。
流されることは「漂流」「遭難」につながるおそれがあります。
特に風に流されやすいSUPを楽しむ場合は、風に対する基礎知識を十分身につけておきましょう。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
日本のアウトドア・レジャースポーツ産業の発展を促進する事を目的に掲げ記事を配信をするGreenfield編集部。これからアウトドア・レジャースポーツにチャレンジする方、初級者から中級者の方々をサポートいたします。