テールが跳ね上がったツインチップスキー。前後同じような形状で、後ろ向き滑走もOKのスキー板です。スキー歴40年を超えた私はさまざまな板に乗ってきましたが、今ではもっぱらツインチップ派!そのオールマイティな魅力をお届けします。
ツインチップスキーならゲレンデの隅まで遊び尽くせる!
基礎・レース・フリーライド・モーグル・パウダーなど、細かくカテゴライズされたスキー板は、それぞれマッチするシーンで威力を発揮します。そのなかでもオールラウンドな1本は?と聞かれたら、ツインチップと答えたい。まずはその理由を紹介していきましょう。
初心者のサポートに超便利
子どもや初心者のサポートには、ショートスキーがよく使われています。小回りがしやすいので、すぐにサポートできるのが便利ですね。でも、ストックがほしい!と思ったことはありませんか?
150cm前後のツインチップスキーなら、ショートスキー並の機動力がありながら、ストックを持っても違和感のない長さ。リフト乗り場のちょっとした傾斜や、斜度のないコースを漕ぐときなど、ストックがほしくなるシチュエーションでとても便利です。
スキーの扱いやすさも、一般的なスキー板と変わりありません。ビンディングがセンター寄りでテール側が長くなる分、重心のシビアな点が緩和され、スキー板が短くても後ろにひっくり返るような転び方をしにくくなります。
パークやBCじゃなくてもフリーに遊べる
ツインチップスキーはフリーライド用にカテゴライズされますが、キッカーやレールに入らなくてはいけないわけではありません!
ゲレンデのちょっとしたギャップでジャンプしたり、頭に思い描いた仮想レールに合わせてスライドしたり、少々地味ですが楽しいですよ。しかも、ポジションや重心移動の確認にもなります。
フラットなバーンでクルクル回転すれば、エッジワークの練習になります。トリックほどでもないちょっとした遊びのなかで、横滑りが上達すればコブ斜面もうまく滑れるようになるし、エッジが引っかかったときのリカバリだってうまくできるようになるかもしれません。
スピード狂も満足の高速安定性
スピードを楽しめるのもスキーならではです。ツインチップスキーは、一般的に軽く柔らかいものが多いので、スピードはあまり得意ではないところ。しかし、数あるツインチップスキーのなかには、ハイスピードでもブレずに楽しめるものもあります。
体の大きさや求めるスピードにもよりますが、私は往年の名機、ディナスターのトラブルメーカーやHEADのMOJOでスピードに不安を感じたことはありません。これらは比較的重く、固く、キャンバー形状という共通点があります。
ロッカー形状は有効エッジが短い分操作性がよく、ちょっとしたことで曲がりたがるので、高速ロングターンにはあまり向かないのかもしれませんね。
ID oneやARMADAのスキー板でもブレはほとんど感じません。品質に定評のあるメーカーだからでしょうか?有名メーカーのものでもエントリーモデルで横ブレして怖かったことがあるので、軽い板や柔らかいスキー板を避け、一定の価格帯以上のものをチョイスすれば疾走感を楽しめるでしょう!
モーグルバーンでのアドバンテージ
ツインチップと比較すると全体的にほっそりしたモーグル板。コブの狭い凹凸のなかでも操作しやすくできています。美しくグルーミングされたモーグルバーンでは、やはりモーグル板が優勢!でも、そんなにきれいなモーグルコースはなかなかありません。
掘れてきたり、雪の塊がゴロゴロしていたりすることの多いモーグルコースや自然コブでは、ツインチップスキーの太さがモノをいいます。きれいにコブをなめる細やかなターンでは叶いませんが、直線的に攻めるならツインチップもなかなかのものです。
ツインチップの長めのテール部分がコブに引っかからないようにするには、より「前へ」の意識が重要になります。つい後傾になりがちなコブ斜面で、この「前へ」の意識が強まるのはツインチップならではかもしれません。
私がツインチップスキーを愛用する理由
ツインチップスキーは、テールが反り上がっているだけではありません。ビンディングがセンター寄りだったり、グラフィックが凝っていたり、ほかのスキーと異なる特徴があります。実際に使ってきたなかで感じたツインチップスキーの魅力をあげてみます。
ボードウェアと相性◎かっこいいグラフィック
サーフィンやスノーボードなどの横ノリカルチャーが定着しているのは、ファッション性も理由のひとつではないでしょうか?ゲレンデでもボードウェアはデザイン性が高く、見ているだけで楽しくなります。
ボードウェアの選択肢が多いことから、スキーヤーにもボードウェア派が増えています。ルーズなタイプのボードウェアには、スキー板のグラフィックはマッチしないのでは?と、トータルでのゲレンデコーデにこだわりたい人におすすめなのがツインチップスキーです。
パークやハーフパイプで使用されることが多いツインチップスキーのグラフィックは、ボード寄り。ポップで楽しいもの、アート性が高く美しいものなど、自分の好みで選べます。
左右で板のデザインを変えられるのは、スキーならではです。ソールのデザインまで凝っているものが多いので、ジブやエアで映えるだけでなく、リフト乗車中もアピールできます。
パーク常駐派に多いノーストックのスタイルにもしっくりくるので、ボードとの垣根はだいぶ低くなっているように感じます。スキーに回帰したい、あるいは新たに挑戦したいボーダーは、ツインチップスキーのグラフィックにぜひ注目してみてください!
癖になる!スイッチ滑走の有利性
テール側が跳ね上がったツインチップスキーですので、ぜひとも後ろ向きで滑っていただきたい!進行方向、エッジのかけかたなど、逆向きで滑るのは新鮮で楽しいものです。がっつり後ろ向き滑走(=スイッチ)をせずとも、スイッチできる便利さはゲレンデのあちこちで感じられるでしょう。
たとえば、滑り出しの位置が気に入らなかったり、リフトに乗るときに前に出すぎちゃったり、というときにスイッとバックできたらスマートです。子どもや初心者のサポートなら、プルーク滑走や転倒時の補助に、前に後ろに自由に動けます。
ツインチップではない板でやろうとすると、できないことはないものの、テールが刺さってしまうこともしばしば。靴を履いているときと同じような機動力の高さ、は言いすぎかもしれませんが、後ろへ移動できるのはとても便利なのです。
コブもパウダーもOKのオールマイティさ
コブとパウダーというと、板の太さでいえば正反対のようなもの。コブ用のスキー板は細く、コブの狭い溝に対応できるつくりです。パウダー用は、沈まず浮けるように太さがあります。
ツインチップスキーはどちらかというとパウダー向きです。でも、不整地という意味でのコブ斜面では、ツインチップスキーの太さやテールの長さが、掘れたり荒れたりしたバーンを乗り切るパワーを生み出します。
降雪後のボコボコを踏みつぶして乗り越えるような、ワイルドな滑り方もOK!同じことをコブ用のスキー板でやろうとするとしたら引っかかって転倒してしまい、いつも板に頼っていることを実感させられるはずです。
ライター
Kuriko
歴40年になるスキーヤー女子。コブが大好きなフリーライダーです。生まれ育ちは横浜の海の近く、幼少期には雪が降ると近所でもスキーしていました。冬から春まで新潟や長野のゲレンデに通っています。好きなスキー場はタングラム斑尾、リスペクトはTanner Hall。還暦過ぎて360するのが目標です。