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岩見天獅を取り上げたインタビューシリーズも、今回が最終回。ワールドサーフリーグ(WSL)のチャンピオンシップツアー(CT)や2024年パリオリンピックで頂点を目指すべく挑戦を続ける15歳の本音を聞いてみました。

昔からの夢と新しい夢

岩見天獅 インタビュー

【岩見天獅】2024年パリオリンピックとCT入りを狙う次世代サーファーインタビューvol.1はこちらから、vol.2はこちらをご覧ください。

―サーフィンがオリンピックの追加種目に選ばれたときはどう思いましたか?

素直に嬉しかったです。サーフィンが認められたっていう感覚がありました。それによって、自分の目標にもう一つオリンピックが追加されました。

東京2020オリンピック出場はもしかしたら無理かもって思っていたんですが、その次のオリンピックもあるだろうし。オリンピック出場はCTクオリファイと同じようなレベルでの大きな目標です。

―その様子だと2024年のパリオリンピック出場を目指していると思いますが、具体的にはどんなプランを立てていますか?

19歳のときが2024年のパリオリンピックなんです。18歳でCTに入れればオリンピック出場もぐっと近づくと思うし、ISAのWSGにも出場を目指していきたいですね。

ジュニアの試合と同時に目指して、経験を積んでいきたいと思っています。

―そんな目標を持っている中で、ずっと海外に出られない状況が続いています。それについて焦りはありますか?

それはありますね。アメリカではサーフィンの試合が行われるようになっているなか、日本はほとんど試合がなかったですから。

海外の選手は試合に出て経験を積んでいるのに、自分はその経験ができてないっていうのは、試合勘がなくなる不安があります。

―それについてはどういう対処をしようと思っていますか?

常にモチベーションを保つことですね。そのためにいろんなボードに乗って、いろんなことを試すようにしました。トレーニングも相当やってきましたし。

(父:岩見公平さん)  試合が続くと、すぐに試合で使えるボードを用意しなきゃいけないじゃないですか。

でも、試合がほとんどなかったこの1年間は、すごい数のボードを作ってもらって、修正しまくって、ボードの研究に費やすことができたんです。何十本作ってもらったかわからないくらい。

それによってシェイパーと一緒により調子がいいボードを作ることができました。

(天獅) トレーニングをみっちりやったおかげもあって、去年の3月から17kgも体重が増えました。体脂肪は13%くらいかな。

 

さらなるレベルアップを目指して

ー現在取り組んでいる技やマニューバーはありますか?

今はエアーを練習しています。小さい頃からマニューバー系にフォーカスしてきたんですが、波が早くてダンバーでホレているとか、ワンターンしか入らないときとか、最後に一発逆転が必要なシチュエーションとかの場合、エアーを決められたら強いですから。成功率も上がってきました。

ーフィジカルのトレーニングに加え、今は合気道もトレーニングの一環としてやっていますよね?

はい。合気道は軸を作るのに効果があると思っています。ほかにもあるけど、詳しくは企業秘密(笑)。

フィジカルは、全身の筋肉をつけられるようにしています。脚だけ太くするとか、腹筋をつけるとか、特定の部位に限らずに、全体的なバランスでいい体になるように取り組んでいます。

例えば、エアーを練習している期間は、エアーのイメージができるトレーニングを組んでもらったり、バックハンドが上手くいっていないときはそれに対応したトレーニングをやったり。

(父) 合気道は精神論でもあるので、メンタルトレーニングの要素もあります。

(天獅) 本当の意味での平常心を鍛えられますね。常に落ち着いていることで、サーフィンしている最中でも焦らないし、サーフィン自体もすごく調子が良くなりました。

合気道やった次の日は、軸がしっかりしていて、体がまったくブレないんです。以前はけっこう焦っちゃって目線もわからなくなっていたんですけど、今は空中で止まっているような感覚があります。ゆっくり感じられるんですよ。

サーフィンが好きという原動力

岩見天獅 インタビュー

ーもし自分と同じような立場の子供がいたとしたら、どんなアドバイスをしてあげたいですか?

やらされるんじゃなくて、サーフィンを楽しんでほしいなって思います。そうすればサーフィンも好きになるはずですから。僕は昔からサーフィンが好きですけど、今はもっと大好きになっています。

怪我で2週間、海に入れないことがあったんですけど、そのときは具合が悪くなったくらい(笑)。

ー上達のコツはなんだと思いますか?

常に考えてサーフィンすることです。あと、常に目標をしっかり持つこと。練習中も自分のライディングがどうだったのか、考えてやるといいと思います。

自分のライディングの映像を観て、自分のイメージと照らし合わせるのも有効ですよね。なにも考えないで海に入っていると、ただサーフィンしているだけになっちゃうので。

ー海に入る前に、このコンディションだからこういうことをしようと考えますか?

考えますね。サーフィン中もずっと考えています。

ーオンラインのコンテストにも積極的に参加しているイメージがありますが、その意図はなんでしょうか?

最近は試合がないので、モチベーションが切れないようにという意味が強いです。そういうコンテストがあるだけで楽しいし。

フリーサーフィンとか、いろんなタイプのボードに乗ることにも興味はあるけど、もともと自分は試合に向いている性格だと思うんですよ。

ーサーフボードについて、今使っているボードはどんなディメンションで、どのシェイパーのものが多いですか?

5’10 1/2”×18 9/16”×2 5/16”がボードのベストサイズなんですが、今なら厚みが2 3/8”でもいけるかなって思います。ボリュームは27 L弱くらい。けっこうレールを薄く仕上げてあります。

自分のサーフィンはフローが特徴で、常にレールを入れるようなライディングなので、ボキシーなボードよりはレールを落としてあるデザインのほうが好みです。テールはラウンドスカッシュ。

僕はかなりテール乗りのサーファーなので、シェイパーの鵜澤清永さんにもそういう感じで伝えています。

体重をかけるイメージとしては、後ろ体重8に対して前体重2といったところですね。ウィリーに近いような乗り方。だから乗り終わったときは後ろ足の方が疲れているんです。

コンケーブはシングル。小波でもシングルコンケーブで、ダブルコンケーブのボードも乗るんですが、あまり好みじゃなくて。ダブルのほうがトップで一回引っかかる感じがするんですよ。

シングルはそれがないんですけど、その代わりに波が厚くなったり、パワーゾーンから外れたりすると、ボードが引っかかったり、張り付いたりする感じは出ちゃいます。そういうときはEPSのボードに乗ったり、厚い波用のボードを使ったりしています。

厚い波用のボードはシングルinダブルコンケーブで、レールもボキシー気味で、短めの設定にして、幅もあります。シェイパーは常にボードを進化させてくれていて、最初の頃に乗っていたボードと今のボードは全然違っていますね。シェイパーとは二人三脚でボードをずっと開発し続けていますから。

ブランクスはコアフォーム社製のコアホワイトがお気に入りで、クロスはSクロスを使用しています。テールにはカーボンを入れずに、しなりを出す仕様です。カーボンを入れると、硬さを感じちゃうんですよ。でも、ここに辿り着くまでにかなり試しましたね。

 

自然相手の難しさと楽しさ

ープライベートでの趣味や特技はありますか?

釣りです。今は全然行けてないですけど。一度ハマるとそればっかりになっちゃうんですよ。

前まではかなり頻繁に釣りをしてたんですけど、最近は釣りをするならサーフィンしたいなって思っています。

ー6月末にはQSのジャパンプロが予定されていて、静岡のウェーブプールで開催されることになっています。ウェーブプールで試合をすることについては、どう考えていますか?

楽しみですね。もともとウェーブプールで試合をしてみたいなと思っていたので。テキサス州にある同じ種類のウェーブプールでやったことがあるので、自信はあります。

ウェーブプールにはどんなボードが調子いいのか、自分なりにわかっているつもりですし。

ー学校の勉強も優秀だということを聞いていますが、今も勉強は得意ですか?

今も普通の人よりは得意だと思います。ただ、他の同級生たちはみんな受験勉強をしていて、僕はしていなかったので、その違いはあります。

本気で勉強している人たちには敵いません(笑)。中の上くらいですね。負けず嫌いなので、同じくらいのレベルにいる人が自分よりいい点数を取ると悔しいですけどね。

ー今年の目標と、将来サーフィンでどんなところに関わっていきたいのか、教えてください。

サーフィン関連の仕事をするつもりはあんまりないです。でも、もしCT選手になったり、ワールドチャンピオンになったりしたら、それなりの人脈はできると思うので、それを活かしてビジネスをやりたいですね。

ー最後に、サーフィンの魅力はずばりなんだと思いますか?

危ない部分もあるけど、自然の中でやるスポーツなので気持ちがいいんです。一つの技ができるようになるまで時間がかかるし、難しいので、逆にできるようになったときは、ほかのスポーツよりも達成感を感じられると思います。

あと、同じ波は絶対にこない。それも魅力だと思います。

サーフィンを始めた頃からの目標と、新しく出現したゴールの両方を追い求め、日々鍛錬を続ける岩見天獅。まだまだ伸び代たっぷりの15歳は、この後どんな成長曲線を描くのでしょうか?近い将来、金メダルを掲げる姿を楽しみにしておきましょう。

ライター

中野 晋

サーフィン専門誌にライター・編集者として20年以上携わり、編集長やディレクターも歴任。現在は株式会社Agent Blueを立ち上げ、ライティング・編集業の他、翻訳業、製造業、アスリートマネージング業など幅広く活動を展開する。サーフィン歴は30年。