いよいよ開催の機運が高まってきた東京2020オリンピック。サーフィンは、会場となる千葉県の釣ヶ崎海岸の整備が、現在、急ピッチで進んでいます。今回は、日本代表選手の選考基準や競技の基本的な見方、各国の有力選手についての記事をお届けします。

日本代表選手の選考方法

(画像は日本代表の有力方補である大原洋人。開催地・一宮町出身のサーファー)

オリンピックのサーフィン競技は、男女各20名で行われることが決定しています。そして各国で出場できる最大人数は男女2名ずつ。

つまり、日本代表も最大で男女2名ずつしかオリンピックに出ることができません。改めて考えるととても狭き門です。

その合計4枠を巡って、日本のトップ選手たちが凌ぎを削っているわけです。

日本代表の場合、選考方法は2つ。

1つはワールドサーフリーグ(WSL)が主催するチャンピオンシップツアー(CT)で年間ランキング10位以内に入ること。そしてもう1つは、国際サーフィン連盟(ISA)が開催するISAワールドサーフィンゲームス(WSG)で上位進出することです。

現在、CTで戦っている選手は日本人で1人のみ。五十嵐カノアが直近となる2019年のCTで基準をクリアしたので、男子の1枠を確定させています。

WSGでの代表選考の場合、直近となる2019年の大会と、オリンピック直前に開催される2021年の大会で成績が対象です。

WSG2021は今年5月末から6月初頭にかけて行われ、そこで出場選手が確定します。WSG2021はネットによる無料ライブ配信が予定されているので、ぜひチェックしてみてください。

 

サーフィン競技の基本的な見方

サーフィン オリンピック

サーフィンは採点競技です。速ければ勝ち、得点を多く取ったほうが勝利というわけにはいきません。

だからこそ、どんなサーフィンに高い点数がつくのか、あらかじめ知っておいたほうが観戦をより楽しめる。それは間違いないです。

サーフィンの評価において、ポイントとなるのは5つ。

  • 1つ目が、難易度の高さ。
  • 2つ目がサーフィンの革新性。
  • 3つ目がサーフィンのコンビネーションの豊富さ。
  • 4つ目がライディングのバラエティ。
  • 5つ目がスピード、パワー、および流れの美しさです。

それだけを聞くと、いまいち要領が掴めないかもしれませんが、つまりは波のホレた難しいセクションで、さまざまな目新しいライディングを流れるようなスピードで何回も失敗せずに繰り出せば、高い点数がつくということ。

シンプルにいえば、より難しいことをやればいい、ということなんです。

ただし、ネットによるライブ配信の場合、カメラがライディングを追っているので、どれくらいのスピードで進んでいるのかわかりません。そこを理解した上で観戦しましょう。

各国の有力選手をチェックしよう

サーフィン オリンピック

(画像は金メダルにもっとも近いサーファーといわれるジョンジョン・フローレンス)

合計で男女20名ずつしかオリンピックに出場できないということは、世界から選りすぐりの実力者たちが集結するということ。まさに世界トップのサーフィンを観ることができます。

その中でも現在、実力的に抜けている国は、アメリカ、オーストラリア、ブラジルです。

世界最高峰のツアーであるCTでは、男子がこの3ヶ国、女子はアメリカとオーストラリアがワールドタイトルの座を独占している状況。

つまり、この3ヶ国の中からメダリストが出る可能性も高いです。

金メダルに近い男子選手達

アメリカの選手でもっとも注目すべきはジョンジョン・フローレンスでしょう。オアフ島ノースショア出身のジョンジョンは、これまで世界チャンピオンに2度輝き、2021年のCT初戦となったノースショア・パイプラインマスターズでも優勝。

現在、ランキングでトップに立っています。大きな波も小さな波も上手に乗りこなし、革新的なライディングも展開します。間違いなく金メダル候補でしょう。

オーストラリアの選手ではジュリアン・ウィルソンに注目です。総合力に優れ、力強いライディングをするサーファーです。

CTでタイトルを獲ったことはまだありませんが、いつ獲ってもおかしくないと言われるほどの実力者。伝統的に強いサーファーを生んでいるオーストラリアでもっとも期待値が高いのがジュリアンです。

ブラジルは近年、世界チャンピオンを次々と排出している新興の強豪国。その中でもガブリエル・メディーナとイタロ・フェレイラはチェックすべき2人です。

ガブリエルはブラジル人として初めて世界チャンピオンになった選手で、合計2度もタイトルを獲得しています。どんな波でもレベルの高いライディングを見せ、エアー系のサーフィンも得意。近年のCTでも常にタイトル争いを展開する安定感もあります。

イタロは直近となる2019年のCTで世界チャンピオンに輝いたグーフィーフッター。この選手も革新的なエアー系のサーフィンに定評があり、これからのサーフィンを引っ張っていくサーファーの1人です。

小さい波でも予想もしないライディングを仕掛けてくるので、イタロが出てきたら目が離せません。

金メダルに近い女子選手達

女子では、オーストラリアのステファニー・ギルモアが最注目でしょう。

ステファニーは歴代最多となる7度の世界チャンピオンに輝いた現役トップの選手。高いサーフィンスキルから繰り出されるスピードとキレのあるライディングは、女子の中では段違いのレベルにあるといえます。

アメリカのカリッサ・ムーアは、2019年のCTでワールドタイトルを獲ったサーファーです。これまでにも合計4度の世界チャンピオンに輝いており、その実力の高さは折り紙つき。男子顔負けのパワフルなライディングは、他の女性サーファーを寄せ付けません。

他にも、男子では南アフリカのジョディ・スミスやブラジルのフィリッペ・トレド、アメリカのコロヘ・アンディーノ、女子ではアメリカのキャロライン・マークスやブラジルのタティアナ・ウェストン・ウェブなども実力者で、いずれもメダル獲得の可能性は高いといえます。

もちろん日本の五十嵐カノアも含めて、楽しみは尽きないところですね。

オリンピックで初となるサーフィン競技ですが、徐々にその全貌が見えてきたのではないでしょうか。知れば知るほど観戦するのが楽しみになってきたはずです。CTはすでに始まっていますので、そのCTを観戦しながら、オリンピック開催までサーフィン競技の面白さを堪能してみてください。

ライター

中野 晋

サーフィン専門誌にライター・編集者として20年以上携わり、編集長やディレクターも歴任。現在は株式会社Agent Blueを立ち上げ、ライティング・編集業の他、翻訳業、製造業、アスリートマネージング業など幅広く活動を展開する。サーフィン歴は30年。