複合日本が席巻した栄光から20年
スキー複合競技には、回転と滑降の2種目を競う「アルペン複合」と、ジャンプとクロスカントリーの2種目を競う「ノルディック複合」がありますが、日本では一般的に複合というとノルディック複合を指します。
これは日本での競技人口の圧倒的な差と、過去においてノルディック複合での日本選手の活躍が顕著だったことに起因します。
今から20年以上前になりますが、ノルディック複合競技では日本が圧倒的な力を示していた時期があります。
1992年アルベールビルオリンピック、翌開催の1994年リレハンメルオリンピックでは、2大会連続で団体金メダルを獲得しています。
同じくリレハンメルオリンピックでは、個人でも河野孝典選手が銀メダル、荻原健司選手が4位入賞。
また、毎年世界各地で転戦し、その合計ポイントで競うワールドカップでは、荻原健司選手が1993年から1995年にかけて、世界初の個人総合3連覇を達成しています。
この頃の日本選手の必勝パターンは、前半のジャンプで距離を稼ぎ、後半のクロスカントリーを逃げ切るという戦法でした。
リレハンメルオリンピック以降、競技ルールの変更が行われ、ジャンプの優位性よりもクロスカントリーの実力が順位に直結するようになりました。
これ以降、クロスカントリー強豪国のヨーロッパ勢が各大会のメダルを独占。オリンピックでは前回ソチで渡部暁斗選手が銀メダルを獲得するまで、4大会、実に20年の歳月が経ったことになります。
渡部暁斗選手のメダル獲得は、まさに日本勢悲願の瞬間だったのです。当時、TV放送の解説員をしていた荻原次晴さんの「男泣き」に感動を共感された方も多かったのではないでしょうか。
前回ソチ銀メダリスト渡部暁斗の台頭
Ⅴ字ジャンプを武器に、圧倒的な飛距離によって優位を得る作戦で、一時代を築いた日本複合陣ですが、度重なるルール変更により、クロスカントリーの実力が勝る欧州勢に巻き返され低迷してしまいます。
「日本に不利なルール変更」「勝ちすぎた日本への報復」など、さまざまな流言が飛び交いました。しかし前半のジャンプでほぼ順位が確定してしてしまうことに、国際連盟が反発。
ジャンプのポイントの比重を下げ、後半のクロスカントリーの比重を上げるなど、距離重視のルール変更を繰り返していきます。
日本陣営としては、得意のジャンプの実力を落とすことなく、クロスカントリーの走力を底上げする必要性に迫られます。
若手の積極的な国際大会への派遣が行われ、渡部暁斗選手もその中の一人として、長野白馬高校在学中に2006年トリノオリンピック代表となりました。
ワールドカップにおいても、2006年3月初出場で47位、2008/09シーズン総合38位、2009/10シーズン総合18位、2010/11には総合11位と確実に実力をつけていきます。
2011/12シーズンには、優勝4回を数え、総合でも2位と躍進。迎えた2014年ソチオリンピックの銀メダルと繋がっていくことになりました。
渡部暁斗選手の戦歴
渡部暁斗選手が所属する「北野建設スキー部」のプロフィール欄には、以下のように記載されています。
「ワールドカップ、オリンピック、世界選手権、全てを制して真のチャンピオンになることが目標」
引用元 北野建設スキー部
渡部暁斗選手のこれまでの実績をまとめてみました。
- ワールドカップ
2005/06 シーズン 初出場 47位
2008/09 シーズン 個人総合 38位
2009/10 シーズン 個人総合 18位 入賞 3位1回
2010/11 シーズン 個人総合 11位
2011/12 シーズン 個人総合 2位 入賞 優勝4回 準優勝3回 3位2回
2012/13 シーズン 個人総合 3位 入賞 準優勝5回 3位1回
2013/14 シーズン 個人総合 3位 入賞 優勝1回 準優勝2回 3位4回
2014/15 シーズン 個人総合 2位 入賞 優勝2回 準優勝2回 3位1回
2015/16 シーズン 個人総合 2位 入賞 準優勝8回 3位4回
2016/17 シーズン 個人総合 3位 入賞 優勝2回 準優勝1回 3位4回
- 世界選手権
2007年 札幌 個人 31位 団体8位
2009年 リベレツ 個人 33位 団体優勝
2011年 オスロ 個人 ノーマルヒル5位 ラージヒル6位 団体ラージヒル5位
2013年 ヴァル・ディ・フィエンメ 個人 ノーマルヒル9位 ラージヒル4位 団体ノーマルヒル4位 スプリント4位
2015年 ファールン 個人 ノーマルヒル6位 ラージヒル7位 団体ノーマルヒル6位 スプリント6位
2017年 ラハティ 個人 ノーマルヒル5位 ラージヒル2位 団体ノーマルヒル4位 スプリント3位
- オリンピック
2006年トリノオリンピック 個人スプリント19位
2010年バンクーバーオリンピック 個人 ノーマルヒル21位 ラージヒル9位 団体6位
2014年ソチオリンピック 個人 ノーマルヒル2位 ラージヒル6位 団体5位
悲願の金メダル獲得を支える人々
渡部暁斗選手が目標とする、世界選手権優勝、ワールドカップ年間王者、オリンピック団体金メダルの全てを制したのが、荻原健司さんです。
荻原次晴さんとの双子選手として複合日本を支えたレジェンドとして有名ですが、現在は渡部暁斗選手が所属する「北野建設スキー部」のゼネラルマネージャーとして、後進の育成に尽力しています。
渡部暁斗選手にとっても身近に目標とする人がいるのは心強いことでしょう。
また「北野建設スキー部」には、平昌オリンピックでの活躍が期待される、純ジャンプの竹内拓選手、フリースタイルモーグルの伊藤みき選手の他、実の弟でもあり複合日本代表の渡部善斗選手も所属しています。
荻原兄弟のように双子ではありませんが、兄弟でメダルを目指すことは同じ。不思議なめぐりあわせを感じますね。
渡部暁斗選手の奥様も平昌オリンピックを目指すアスリートです。
2014年に結婚された渡部(旧姓山崎)由梨恵選手は、フリースタイルスキー・ハーフパイプの第一人者で、ワールドカップでも活躍しています。
ソチオリンピックでは、直前に半月板損傷という大けがに見舞われ出場できませんでしたが、見事に復活を遂げ2017年12月のワールドカップでは自身初の2位を獲得。
夫婦そろっての冬季オリンピック金メダルは過去に実績がありませんので、期待が高まります。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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