木製サーフボードに込められた思い
世界選手権日本代表であり、オリンピック強化指定選手にも選ばれている、プロサーファー石川拳大。
彼が発起人となり、環境維持のために行われる間伐から出た木だけで作る、木製サーフボード“アライヤ”の制作を通じて環境問題に取り組む映画を作成しています。
さまざまな自然環境問題や現代社会が抱える社会問題を、自然と向き合い感謝することで、解決の糸口を探ろうとします。
便利になりすぎた今の時代に、サーフィンの原点とも言うべき一本の木だけから作ったボードに乗り、本当の幸せとは何が大切なのかを考えさせます。
最近、いろいろなメジャーポイントで、木製サーフボードを見かけることが多くなりました。
地元の山から切り出された木材を使い、その山から流れ出た川がたどり着く海岸で波に乗る。
地産地消とも言える木製サーフボードは、山、川、海、人間の繋がりを通じて、自然への感謝を再認識する活動として注目されています。
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OCEANTREE – The Journey of Essence – Trailer
サーファーが開発した海に浮かぶゴミ箱
海のゴミ問題が世界的に危惧されている中、オーストラリアのサーファー、ピート・セグリンスキ(Peter Ceglinski)と、アンドリュー・タートン(Andrew Turton)が、海に漂うビニール袋などのプラスチックゴミを自動的に回収する『Seabin』を開発しました。
『Seabin』は海に浮かぶゴミ箱のようなもので、自動的に海水ごとゴミを吸い込み、ろ過装置により海水だけ海に戻し、吸い取ったゴミだけを回収するというもの。
自動で24時間稼働可能で、ほぼメンテナンスは必要ありません。小型なので持ち運びも設置も簡単で、単純なシステムですが画期的なものです。
幼少よりサーフィンなどを通じて楽しんでいた海で、プラスチックをはじめとしたゴミが増えていくことに憤りを感じていた二人が、愛する海を守るために職を擲ってまで開発に尽力しました。
開発者の一人、アンドリュー・タートン(Andrew Turton)は、プラスチック製品を作る仕事をしていたので、特に憂いていたのかもしれませんね。
一人のサーファーから始まった「Surfing For Change」
「Surfing For Change」は、プロサーファー、カイル・ティアマン(Kyle Theirmann)がたった一人から始めた環境保護団体です。
カイルは、YouTubeを通じて人々に語り掛け、サーファーのコミュニティから世界中の一般市民までをも動かし環境保護を訴え続けています。
彼が18歳の時、南米チリの美しい大好きなサーフスポットに、火力発電所建設の計画を知ります。
火力発電所ができれば、自然環境は破壊され、生態系や人々の暮らしも脅かされると危惧したカイルは、建設計画の資金源であるアメリカの大銀行に戦いを挑みます。
動画を通じて多くの人々に、アメリカの大銀行から預金を動かすことを訴えかけます。
最初はサーファー仲間だけでしたが、次第に同調する人々が増え、遂には約3年で340ミリオンドル(約421億円)もの金額を動かすことに成功し、銀行側は建設計画を中止せざる得なくなりました。
大好きな海の環境を守りたいと願う一人のサーファーの訴えが、ムーブメントを起こし、大企業をも屈服させたのです。
この活動を発端に「Surfing For Change」は今でも世界中の海を守るために活動を続けています。
サーフィンをすることで環境データを収集
海の環境問題を解決するためには、科学者などによるサイエンス的なアプローチも重要になります。
そのためには、海洋情報をデータ収集することは不可欠です。
現在まではロボットなどの機械類を用いて収集していましたが、波の勢いや潮流などで故障も多く新たな収集方法が切望されていました。
そこでアメリカの環境保護団体「The Lost Bird Project」とサーフボードのコンテンツ開発をしている「BoadFormula」が提携して『Smartfin』というデバイスが開発されました。
『Smartfin』は、サーフボードのフィン型のデバイスで、位置情報や海水の温度、塩分濃度、水素イオン指数などを自動的に測定してくれるセンサーが内蔵されています。
通常のフィンと同じように取り付けるだけでBluetoothを経由して、リアルタイムに海洋情報を収集できます。
サーファーは、好きなサーフィンをするだけで海の環境問題に貢献できる画期的なサイエンスデバイスです。
参考:smartfin
天然素材から作られたプラスチック製品
「I AM NOT PLASTIC」と書かれたバッグを目にしたことはないでしょうか。
植物油と天然樹脂を組み合わせて作られたもので、簡単に水に溶けてしまう素材で作られています。
インドネシア在住のサーファー、ケビン・カマラ(Kevin Kumala)が開発したもので、同様の素材でストローなどの製品も作られています。
世界的に問題視されている海洋ゴミのほとんどがプラスチックゴミだと言われています。プラスチックは、自然に帰ることはなく半永久的にゴミとして地球に蓄積しています。
インドやフランスではプラスチック製のレジ袋などは、製造も法律で禁止されました。
人類が利便性を追求して生まれたプラスチック製品は、大量生産、大量消費の経済システムの中、ゴミとして捨てられ、地球環境を破壊し生態系を狂わすほどの問題を生み出しました。
開発者のケビン・カマラ(Kevin Kumala)は、この開発を通じて、分解されないプラスチック製品の法律による抑制が世界中に広がることを願っています。
ライター
Greenfield編集部
【自然と学び 遊ぶをつなぐ】
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