キャンプをするうえで大切な環境配慮の意識。そんなサステナブルなキャンプにも深く関わる「サーキュラーエコノミー」という新たなSDGsの仕組みが、今世界中から注目されていることを知っていますか?その解説とともに、私たちができることを考えてみました。
サーキュラーエコノミーとは?
まずは、サーキュラーエコノミーがどのようなものなのかを説明していきます。
サーキュラーエコノミーはSDGsの新ビジネスモデル!
サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、リユース・リデュース・リサイクルからなる「3R」の取り組みに加えて、資源の投入量と消費量を抑え、限られた資源やストックを有効活用しながら産業・サービスに新しい付加価値を付ける、廃棄物の発生を抑止する経済の仕組みを指します。
この循環経済はヨーロッパを中心に考え方が広まり、現在では日本でも企業における事業活動の持続可能性を高めるため、新たなビジネスモデルとして導入が進んでいます。
世界が気付き始めた⁉︎経済を回すための環境保全
サーキュラーエコノミーが注目される理由は、世界人口の増加により環境への影響が懸念されているからです。国連は世界人口が2022年時点で約80億人に到達したと発表しており、2037年には90億人、2080年代には104億人程度まで増え続けると予想されています。(※1)
しかし近年、この世界人口の増加を受けて、必要となる食糧・エネルギー量も増加傾向にあり、これらの資源を用意するために、自然環境が破壊されつつあることが問題視されています。
自然環境の破壊とは、森林面積の減少といった天然資源の枯渇や、地球温暖化による気候変動、野生生物の絶滅など。そこで地球環境や生命を守るための政策として、資源を使い、消費して、廃棄物を出さない“持続可能な経済システム”サーキュラーエコノミーへの移行が経済成長につながるとして、注目されているのです。
出典:オランダ「A Circular Economy in the Netherlands by 2050 Government-wide Programme for a Circular Economy(2016)」より図を加工して作成
3Rとの違い
サーキュラーエコノミーと3Rのおもな違いは、廃棄物に対する見方と取り組む範囲です。3Rでは、廃棄物が出ることを前提とし、リサイクルやリユースなどによってものが廃棄に至るまでの時間を長くします。一方、サーキュラーエコノミーは、廃棄物が発生しないようにものづくりを行い、物質的回復率を高めて、資源を循環させる取り組みなのです。
「サーキュラーエコノミー」をキャンプに取り入れるなら?
サーキュラーエコノミーには、廃棄物を出さないことや、リサイクルといった消費者の意識・行動も重要です。キャンプをする時に私たちができることは大きく2つあります。
できるだけ廃棄物を出さない
サーキュラーエコノミーの要でもある「廃棄物管理」の考え方を意識することが大切です。
道具をレンタルする
キャンプ需要の高まりから、近頃は手ぶらでキャンプができる施設が増えており、レンタル品も充実しています。国内では、高品質かつ長持ちするキャンプグッズをレンタルできるサービスもあるので、道具の購入を検討されている方はまず一度、レンタルサービスを確認してみるのもひとつの手です。
再利用可能な食器を使う
食器やカトラリーは、繰り返し使える丈夫なものを選びましょう。キャンプでは捨てやすいという理由から紙製の食器を選ぶこともあるかもしれませんが、再利用可能なものを使うだけで環境保全につながりますよ。
最近では、ホームセンターや100円ショップなどでも繰り返し使える食器やカトラリーを販売しているので、気軽に購入してみましょう。
リサイクルできるものを知ろう!
廃棄物を減らすためにリサイクルする方法もあります。
自然の水を浄水グッズで飲める水へ
水場が近くにあるキャンプ場の場合は、浄水器を持っていくのがおすすめです。廃棄物となるペットボトルを持ち込む必要がなくなり、節約にもつながります。川や湖の水をその場でろ過して飲めるようにするフィルター付の容器が販売されているので、チェックしてみてくださいね。
生ごみは堆肥にして食も循環させる
料理を作る際に出てしまう生ごみは、その場で捨てるのではなく、自宅に持ち帰り堆肥に変えられる「コンポスト」を利用してみましょう。コンポストはさまざまなタイプの商品があり、生分解性ごみ袋と呼ばれる、堆肥化が可能なごみ袋も販売されています。できあがった堆肥は家庭菜園やガーデニングの栄養素として有効活用できますよ。
世界の最先端サーキュラーエコノミーをご紹介
サーキュラーエコノミーは、EUの欧州委員会が2015年12月、2030年に向けた成長戦略の核として、サーキュラーエコノミーパッケージを発表。2030年までに都市廃棄物の65%をリサイクルするなど、廃棄物に関しても具体的な目標が定められたことから始まりました。(※2)
そこで最後に日本よりも先に政策を実施してきた、世界で取り組まれているサーキュラーエコノミーを事例として簡単に紹介したいと思います。
「容器を捨てない」循環型ショッピングプラットフォームが誕生!〜アメリカ〜
アメリカでは「捨てる」概念を変えるべく、容器の循環型のショッピングプラットフォームの利用が注目されています。
各国の消費財メーカーや大手小売業と提携し、これまでリサイクルできないと思われてきた物のリサイクルを実現。使い捨てされていたシャンプーや洗剤などの容器を、ステンレスやガラスといった繰り返し使える素材に入れて提供し、使用後に容器を回収・洗浄・再充填の後に再販売することで、ごみを減らす仕組みです。(※3)
このように「使い捨て文化からの脱却」をテーマにした商品・サービスを消費者へ提供する企業が増えています。
プラごみは100%リサイクル!〜フランス 〜
フランスでは、2020年に制定された「廃棄物対策法」により2025年までにプラスチックを100%リサイクルする、2030年までに住民一人あたりの家庭ごみを15%削減する目標が明確に定められています。
この目標を達成するために、飲料容器のデジポット制度を取り入れた施設の拡充を推進、国全体でリサイクル可能なプラスチックの回収量増加を目指しているようです。(※4)
街中のごみ箱がリサイクル資源に!〜イタリア〜
イタリアは、もともとリサイクルに対する国民の意識が高く、2020年時点で廃棄物のリサイクル率が72%と、EU主要国の中でもトップで取り組んでいます。
街では、紙やプラスチック、ガラスなど廃棄物の種類を細かく分けたごみ箱が設置されており、リサイクルが可能な素材を適切に分離することで、リサイクルが促進されているのです。
参考文献
※1 国際連合広報センター
※2 欧州連合(EU)
※3 LOOP
※4 Library of Congress|France: New Anti-waste Law Adopted
statiesta|Recycling and recovery in Italy – statistics & facts
ライター
エレナ
フリーランスライター。学生時代の海外ボランティアをきっかけにSDGsやエシカルに興味を持つ。主にSDGs、英語学習、留学、旅行について執筆。リフレッシュには自然の中でのんびり過ごすのが好き。