「ゼロ・ウェイスト」という言葉は、聞きなれない人も多いかもしれません。ウェイストとはゴミのこと。つまり、「ゴミを出さない」という意味です。フィンランドで世界初のゼロ・ウェイストレストランとしてオープンした「NOLLA(ノッラ)」の取り組みを例に、個人でできることも一緒に考えてみましょう!
「ゼロ・ウェイスト」って何?
日本でも現在、ゴミ問題は深刻な課題の1つと言われています。「ゼロ・ウェイスト」とは、ゴミをなるべく産み出さないようにする取り組みやライフスタイル、活動のことを指しており、昨今は特に欧州を中心に広がっています。
ゼロ・ウェイストは、ゴミを焼却したり埋め立てたりするのではなく、なるべくリサイクルしたり、廃棄するものを再利用するといった、サーキュラーエコノミー(循環経済)を基本としています。
また、単にゴミを削減するだけではなく、なるべく無駄や浪費を減らすという考え方も含んでいます。特に食品業界や外食業界の分野で、ゼロ・ウェイストを掲げる企業や店舗が増えつつあるのです。
世界初のゼロ・ウェイストレストラン「NOLLA」
「NOLLA」は2018年、フィンランドの首都ヘルシンキで誕生したレストラン。NOLLAとはフィンランド語で「0(ゼロ)」を意味しています。「Refuse(拒否)」「Reuse(再利用)」「Reduce(削減)」「Recycle(リサイクル)」という4つの「R」をモットーとしてオープンし、話題になりました。
コンポストでゴミを農作物と交換できる仕組み
オープン後すぐに現地のレストランランキングでも上位となり、現在も不動の人気を誇っています。徹底した「ゼロ・ウェイスト」に取り組んでおり、店内にはゴミ箱がなく、代わりに大きなコンポストが置かれています。
コンポストとは、土の中の微生物等の働きにより、培養土に変えるものです。調理では食材をできる限り全ての部位を使い切り、食べ残しや調理で出た最小限の生ゴミやワインのコルク、紙類などをコンポストで培養土に変え、農家に提供して農作物と交換する取り組みをしています。
また、店内で醸造しているクラフトビールを作る過程に出る麦の絞りカスもパンに生まれ変わります。さらに、地産地消で食材の運送もなるべく最短にする努力など、ゼロ・ウェイスト以外のサステナブルな取り組みにも熱心です。
食品だけではなく、ワインボトルの底をカットしてバター置きにしたり、ジュースやワインの瓶もグラスや飲料水用ボトルとして再利用され、シンプルさと実用性を兼ねた北欧らしいデザインが店内を彩っています。
店舗と顧客が楽しみながらできるゼロ・ウェストを提案
「NOLLA」は単にこうした取り組みが話題の特殊なレストランなだけではなく、シェフも評判がよく、おいしい料理が頂けるレストランなのです。筆者が訪れたのはコロナ禍前の12月、平日のディナーでしたが、予約で満席になっていたのを覚えています。
生分解性のギフトカードにはポピーの花の種が入っており、使用後のカードをそのまま土に埋めることで、自宅でキレイなポピーの花を楽しめます。退店後も顧客を楽しませると同時に、ゼロ・ウェイストの意識を高めているのは素晴らしいことです。
「NOLLA」の取り組みは「無駄にしない」「再利用する」といった、シンプルなことをベースとしており、店舗と顧客の両者がゼロ・ウェイストを楽しみながら実践しています。
国内でも広がるゼロ・ウェイスト活動
日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をした自治体として徳島県・上勝町が知られています。
2003年にゼロ・ウェイスト宣言をした上勝町は、住民の方一人ひとりがゴミの削減に取り組み、リサイクル率も80%を超えています。
上勝町は「未来のこどもたちの暮らす環境を自分の事として考え、行動できる人づくり」を2030年までの重点目標に掲げています。また、日本国内では8つの自治体がゼロ・ウェイスト宣言をしています。
日本でゼロ・ウェイストを宣言している自治体
(2024年9月現在)
・徳島県 上勝町
・福岡県 大木町
・熊本県 水俣市
・奈良県 斑鳩町
・福岡県 みやま市
・東京都
・神奈川県 逗子市
・神奈川県 葉山町
それぞれの自治体に応じた課題や目標、施策を持ってゼロ・ウェイストに取り組んでおり、これからもこうした活動は、国内全体に広がっていくのではないでしょうか。
参照元:ゼロ・ウェイストタウン上勝
個人でも始められるゼロ・ウェイストの習慣
自治体での取り組みだけを見るとスケールの大きなものに感じてしまうかもしれませんが、ゼロ・ウェイストは個人の習慣として取り組めます。
再利用またはリサイクルできる素材でできたものを使用する、食材を無駄にせず食べ残しをしない、マイボトルやマイバッグの利用などは、すでに実践している人は多いのではないでしょうか。
それ以外にも、
- ものを大切にする
修理できるものは修理し、ものを長く大切に使う。中古品を積極利用する。 - 分別・再利用を習慣化する
ゴミの分別を怠らず、ノートやプリントなどは裏面も活用する。
といったことも、すぐに始められます。
家族で子どもたちと一緒に取り組めれば、家庭全体でのゴミの量も大きく減らせるのではないでしょうか。子どもたちの未来と地球環境のためにも、できることから始めてみましょう。
参照元:日本財団ジャーナル
ライター
Konkori(コンコリ)
旅行業界や外資系企業で働き、現在はフリーランスのライターとして活動。北欧などの自然の多い国に魅せられ、数多く渡航経験もあり。
北欧のサステナブルなライフスタイルやサステナブル・ツーリズム、ヴィーガンを含む食文化などが得意分野。