自主性を重んじる教育方針
ーリアルタハラの概要を教えてください。
リアルタハラは2014年の2月に前任者から引き継ぐ形で開園して、今年で8年目になります。施設名に関しては前任者もリアルという名前を使っていたので、そこを引き継いでこのように命名しました。
基本的に保育時間は9時から14時30分までで、延長保育が16時までなんですが、16時まで預かるところがほとんどです。
受け入れ可能年齢は2歳から6歳までで、人数の上限は全学年合わせて30人までです。保育料は1ヶ月で5万円なんですが、今は愛知県から認可外保育施設認定を受けているので、在園児を抱えるご家庭に政府から補助金が毎月3万7000円出ています。なので親御さんの実質的な負担はもっと少ないです。
ただそこに昼食代は入っていないので、お弁当を持ってくる子もいれば、提携のランチサービスに頼んで毎日施設に届くお弁当を食べている子もいます。割合は半々くらいですね。
ー教育方針に関してもお話いただけますか?
まず、これはどのプリスクールでもそうだと思いますが、原則として保育時間は日本語禁止になります。あと、これに関してはパート1でも少しお話しましたが、”自主性を重んじる”教育を大切にしています。
その他で特徴的なことと言えば、学年問わず皆が一緒に行動していることでしょうか。それはリアルタハラとしてのひとつの狙いでもあるんですが、大きくなっていくにつれて下の子を世話する機会が自然と増えていきます。
例えば手洗いを手伝うとか、本当に小さい子の移動の補助をしたりとか、年齢を重ねるにつれて芽生える責任感を意識させるというところは他の保育園と違うところなのではないかと思います。
ただこの年齢だと、食べるものや食べ方も違うので昼食だけは分けていますが、それ以外は遊びにしても何をするにもいつも一緒です。
そうなると、例えばフラッシュカードのゲームで国旗がどこの国かを当てるゲームをしたとします。その時に下の子が覚えていて上の子が覚えていないということも起こるので、そこで上の子の勉強意識を向上させることもできます。
だから一緒に行動させることはすごく良いことだと考えています。
地域に開けた施設へ
ー開校するにあたっての苦労したエピソードなどはありますか?
苦労は本当にたくさんありましたよ。じつは前任者からの引き継ぎの時に情報齟齬があって、保育環境の面でもお金の面でも最初は苦労の連続だったんです。
当時は市の職員からの評判も良くなかったですし、保育施設としての評判はもちろん、行政との関係もよくありませんでした。
でも自分たちが施設を買い取った以上、そこは自分たちで変えていくしかありませんでした。
なのでまずは閉鎖的だった今までのプリスクールをオープンにするところから始めて、地域に根ざした園に変えていくことで地域住人の方々や行政との関係性も改善していきました。
今は愛知県から認可外保育施設の認定を受けるまでになりました。そうなると通わせる親御さんにも補助金が支給されるので、地域住人の皆さんもリアルタハラに通わせやすくなったと思っています。
ーでもいくら自分がしたことではないとはいえ、一度ついてしまったイメージを改善するのはかなり大変なことだと思いますが、具体的にはどのようなことをして地域との関係性を改善していったのですか?
先ほども少しお話しましたが、自分がやるようになってからは、地域の方々に全てをオープンにして、何でも好きに見ていいよという形に変えていったんです。
合わせて園児の両親や地域住人の方々との交流を持てるイベントをどんどん開催しました。その一例が月に1~2回金曜の夜をナイターにしてスケートパークや運動広場を開放することです。
そうすると他の保育園に通っている子達も来てくれますし、リアルタハラに通う子ども達も交流の幅が広がっていきます。さらに遊びに来る子どもたちのご両親にもリアルタハラがどんなところなのか知ってもらう事ができます。
この催しは今もやっていて、卒園した子供も遊びに来てくれるようになったので、地域の良い交流の場になっていますね。
このようにそういったひとつひとつの積み重ねで徐々に理解してもらえるようになり、地域住人の方々もすごく暖かな目で見てくれてるようになりました。
リアルタハラではオリジナルのTシャツを作っていて園児は皆それを着ているんですが、その園児達を見かけると、地域のお医者さんまでいつも賑やかそうにわいわい楽しいことやってるねと声をかけてくれるようになりました。
前任者のイメージが定着していた開園当時は新規入園者を集めるのが大変でしたが、今はもうほぼ定員が埋まってしまうという状態になっているので、本当にありがたい事だと思っています。
オリジナリティあふれる保育教育
ー先ほども少しお話されていましたが、2019年10月の幼児教育・保育の無償化でプリスクールに通う家庭にも補助金がおりるようになりました。このことで何か変化がありましたか?
問い合わせなども増えたような感じはありますが、もともとリアルタハラのようなところは珍しかったのか興味のある方は多くて、目に見えて増えたと言うような実感はありません。
でもそれ以上に大きかったのが、僕らと会った事がない人からも信頼してもらえるようになった事ですね。
愛知県から認可外保育施設として認定を受けたことで、他の保育園と同じように補助金が降りるようになったのは、子どもを預けるご両親からの信頼が全然変わってくるんです。
だから今は開園以来で園児の数が一番多いですし、新年度になってからはさらに増えました。そうやって人気になっているのは自分としてもとても嬉しいことですね。
ーリアルタハラでは普段どんな保育を行なっているのですか? 1日や1週間のスケジュールがあれば教えてください。
基本的に朝はいつもサーキットトレーニングから始まります。施設内にはマット運動やボルダリングなどいろんな運動器具が全部で15種類くらいあるので、毎朝生徒はいろんなものをぐるぐる回りながら15分間行っています。
その後はフラッシュカードのゲームです。地図や職業や色別に数種類のカードを使い分けて皆で遊んでいます。他にも部屋の中にあるものを言葉で発して、それを触ることで物体を意識させるという遊びもしますし、皆で輪になって行う体操なんかも行っています。
何かしらの教育、何かしらの運動、何かかしらの認識は、幼児期の子どもにはとても大切なことなので、必ず毎朝のルーティーンワークにしています。
そして次にスナックタイム休憩を挟んだら、いよいよスケートボードのレッスンになります。
でもこれは毎日やっているわけではなく、基本的には週2回になります。それ以外はライティングのレッスンを週2回、BMXのレッスンを週1~2回、およそ1時間程度行ってます。基本的にこれらを午前中に全て行うスケジュールで毎日動いています。
その後に皆でお昼ご飯を食べたら、あとは基本的に自由時間にしていて、みんな森で遊んだりしながらのびのびと過ごしていますね。
大きい子が「今日はこの技を練習したい」って声をかけてきたりする時もあるので、そんな日はスケートボードのレッスンをすることもあります。
でも雨が降ると当然できないので、そんな日はだいたいライティングや室内遊びで過ごしてます。お相撲ごっことか何かしらのゲームを決めて、トーナメント表を作って皆で遊んだりってこともよくありますね。
卒園後のアフターフォローも充実
ーその午後の自由時間に行うスケートボードレッスンはどれくらいの頻度で行っているのですか?
まちまちではあるんですが、基本的に木曜を卒園生向けのスクールデイにしているので、そこにプリスクール内の大きな子が混じるっていうケースが多いですね。
時々卒園生でなくても、スケートボードや英語を頑張りたいっていう子が入ることもありますが、リアルタハラではそうやって卒園しても週に1回は英語で会話して一緒にスケートボードをするっていう機会を作って、継続して続けることの大切さを理解してもらうようにしています。
小学校に上がれば当然環境は変わりますし、そこで英語の勉強やスケートボードをする機会が減ったり無くなってしまうのはもったいないですから。
実際にこの試みはすでに大きな効果が出ていて、卒園児の中には8歳で英検2級に合格した子もいますし、全国的な英語試験で国内の上位1%に入ったという実績をあげている子もいます。
あとは先ほども少しお話した、月に1~2回行っている金曜のナイターデイも卒園児達が多く集まってくるので、在園児達も含めて皆で交流できる良いチャンスになっていますし、スケートボードや英語の勉強の機会にもなっています。
貴重な経験が積めるイベントの数々
ーでは年間を通して行なっているイベントにはどんなものがありますか?
いろいろあるんですが、作物は季節に合わせて様々なものを収穫しています。まずは6月にビワが採れて、夏には桃、秋には椿やみかん、冬前にはレモンが収穫できます。
レモンに関しては収穫したものを使って毎年レモネードも作っていて、その年に卒業する子供達がお店を開くっていう催しなんかも開催しています。
他にもイベント事で言うと、リアルタハラは西洋式の保育園・幼稚園なので4月のイースターではスケートパークとグラウンドに卵を隠すエッグハントをやりますし、10月末には日本でもお馴染みのハロウィンパーティーがあります。冬前にはスケートボードコンテストも開催していますね。
あとは卒園に合わせて、毎年生徒個人個人のビデオパートを収めたDVDなんかも作っています。フィッシュアイレンズ(※1)をつけた本格的なビデオカメラを使って、パーク内で撮影したスケートボードのライディングの映像をまとめて編集しているので、親御さん達は皆喜んでくれています。
今はそれくらいなのですが、他にも動物や自然と触れ合う機会なんかもたくさん作っています。とにかく年間を通して多くの経験をさせてあげることが大切だと考えています。
※1 別名魚眼レンズとも言われ、魚の目のように空間を歪ませる効果があり、迫力ある映像が撮影できる。スケートボードの撮影ではスタンダードなレンズ。
【選択型プリスクール取材記③】幼児期の英語教育 × スケートボードから見えるもの ~リアルタハラプリスクール~
ライター
吉田 佳央
1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本も監修。フォトグラファー兼ジャーナリストとして、ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。