恐竜好きの子どもの声をきっかけに、「どこかで化石に触れる体験ができないだろうか」と思ったことはありませんか。生きもの観察が難しい冬の間でも楽しめる、河原や体験施設での化石体験。今回は、関東を中心に親子で化石に出合える・発掘できる場所の情報に加え、化石のでき方や子どもへの伝え方、自然を傷つけない楽しみ方などを紹介します。
生きものが少ない季節に楽しめる「化石探し体験」

晩秋から冬、そして春のはじめにかけての生きものの活動が少なくなる時季にも楽しめるのが、岩石や化石の観察です。
化石とは、はるか昔に生きていた生きものの体や足跡などが、何億年、何万年という時間をかけて地層の中に残されたもの。化石が見つかるのは砂や泥が固まった堆積岩の地層で、河原や海岸、崖に現れている場所がねらい目となります。
骨や歯、貝殻のように立体のまま残るもの、葉や魚が押しつぶされて平らな模様として現れるもの、地層の表面に足跡や這い跡だけが刻まれるものなど、化石の形状は多様です。
化石は日本でも各地で産出しています。国内で確認されている最古の地層は、茨城県日立市から常陸太田市にかけて分布する約5億3300万年前(カンブリア紀)のものです。ただし、この地層からはまだ化石は見つかっていません。
化石が確認されている最古級の地層は、約4億5000万年前(後期オルドビス紀)のもので、岐阜県高山市周辺に分布します。国内初の恐竜化石が発見されたのは岩手県で、特に調査や発掘に力が注がれているここ十数年の間に、日本各地で恐竜化石が発見されています。
もっと新しい年代の哺乳類や貝類、植物などの化石であれば、恐竜よりも出合える可能性が高いでしょう。身近な場所にも、化石を含む地層が見られる場所があるかもしれません。
参照:
化石ってなに?冷凍マンモスは化石なの?|福井県立恐竜博物館
日本で恐竜化石が発見されているのはどこ?|福井県恐竜博物館
日本にある地層で一番古いのは?|福井県恐竜博物館
恐竜だけじゃない。化石が語る地球の時間

恐竜への憧れを入り口に、化石を通して地球のはるかな歴史へと視野を広げていくことも可能です。
ここでは、子どもがなぜ恐竜や化石に惹かれるのかを手がかりに、その関心を学びへとつなぐ視点を整理してみます。あわせて、化石をどう説明すればよいのか、どんな言葉なら届きやすいのかも提案します。
親子での体験が、壮大な地球の物語につながる道筋を考えてみましょう。
子どもはなぜ恐竜と化石に惹かれるのか
子どもが恐竜に惹かれるのは、恐竜が「強くてかっこいい憧れの存在」だから。自分が恐竜になりきって遊ぶ姿も珍しくありません。強さや迫力、そして種類の多さが、子どもの心をつかむ大きな理由と考えられます。
車が好き、電車が好き、ヒーローが好きな子がいるように、恐竜が大好きな子もいます。とくに3〜4歳は言葉をどんどん吸収する時期で、ティラノサウルスやトリケラトプス、デイノニクスといったカタカナの名前も難なく覚えてしまいます。
一方で、恐竜は現存しない生きものであり、その姿を知る最も重要な手がかりが化石です。子ども向けの図鑑に描かれた魅力的な恐竜の姿は、化石という一見地味な存在と、今生きている生物の情報をもとに、色や質感が再現された想像力の結晶といえるでしょう。
小さな子どもは、何億年という気の遠くなる時間の概念を理解できないかもしれません。しかし成長とともに、恐竜と直接つながる証しである化石に興味を持つようになるのは、ごく自然なことでしょう。
化石を子どもにどう説明する?

子どもの年齢にもよりますが、化石は「昔の生きものの体が石になったもの。生きていた証拠が石になったものもあるよ。」と伝えてみてください。
むずかしい言葉よりも、「大昔に生きていた生きものが土や砂に埋まって、長い時間をかけて石のように固くなったもの」と説明すると、子どもにもイメージしやすいはず。
「どうして石になるの?」「どれくらい時間がかかるの?」と聞かれたら、雨や川の水に運ばれた砂や泥が積み重なり、何億年、何万年という時間を経て固まることを話してみましょう。
化石のでき方については、インターネット上で分かりやすい図解が見つかります。また、遠方まで出かけなくても、地域の博物館に展示があるかもしれません。まずは親子で調べ、小さな疑問から地球の歴史へと学びを広げられたら良いですね。
命と時間を伝えるヒント
化石は、命がつないできた何億年もの年月を子どもに伝えるヒントになります。地球が誕生したのは約46億年前。その後、約38億年前には海で生命が生まれ、長いあいだ原始的な生物の時代が続きました。
およそ4億年前に植物が陸上へ進出し、やがて脊椎動物も上陸します。約2億5200万年前から6600万年前までは恐竜が繁栄し、その後に哺乳類や鳥類が広がりました。生きものはこれまでに5回の大絶滅を経験しながらも命をつないできたのです。
人類の祖先が現れたのは数十万年前にすぎません。46メートルのロープを地球46億年の歴史にたとえると、人類の歩みはわずか数ミリともいわれます。
このあたりを易しく説明してくれている絵本が、バージニア・リー・バートン作で石井桃子訳の「せいめいのれきし」です。2015年に、真鍋真監修で改訂版が出版されています。
何億年もの生物の歴史が積み重なった上に、今の私たちの暮らしがあると考えると、世界や自然へのまなざしも少し変わってくるのではないでしょうか。
関東で親子が体験できる化石探し・発掘スポット

関東には、親子で化石探しや発掘体験ができる場所があります。ここでは、実際の体験につなげられるスポットを紹介します。
施設で本格的に発掘できる場所から、河原で観察できるエリアまで、選択肢はさまざまです。年齢や季節、目的に合わせて行き先を選び、無理のない形で一歩を踏み出してみましょう。
東松山化石と自然の体験館(埼玉県)
関東で子どもと本格的な化石体験ができる場所の一つが、東松山化石と自然の体験館です。約1,500万年前の海の生きものを含む礫岩の地層を保存しており、主にサメの歯や貝類などが見つかります。
予約制で化石発掘体験ができ、小学生以上が対象。ハンマーで岩を割ったり、ふるいを使ったりと、実際の調査に近い方法で挑戦できます。
丁寧に探すとサメの歯は比較的高い確率で見つかり、発見の喜びを味わえるはずです。哺乳類の歯や骨、メガロドン(巨大なサメ)の歯など、レアな化石を見つけられれば、周りから賞賛の拍手が湧くことも。
研究に必要なものを除き、発掘した化石を持ち帰れる点も魅力です。展示室にある、メガロドンの復元顎の実物大パネルやパレオパラドキシア(哺乳類)の模型は見ごたえがありますよ。
神竜町恐竜センター(群馬県)
恐竜の化石を体感できる神流町恐竜センターは、1985年にこの地で日本初の恐竜の足跡が発見されたことをきっかけに開館しました。
周辺には約1億3千万年前(白亜紀前期)の地層があり、植物や貝などの化石が多く見つかっています。館内には地元で発掘された恐竜化石のほか、海外産の全身骨格標本も展示され、コンパクトな施設ながら充実した展示内容です。
ライブシアターにて、30分ごとに臨場感あふれる解説が上映され、子どももわかりやすく学べます。中にはリアルすぎて、怖がってしまう子も。
隣接する体験地では、指導員の案内のもとハンマーで化石を探す発掘体験が可能です。冬季は体験はお休みですが、3月は実施が予定されています。
掘り出した化石は、手のひらサイズ1つまでは持ち帰ることが可能。なお不定期開催なので公式サイトを確認し、事前予約が必要です。
多摩川・秋川・北浅川(東京都)

多摩川・秋川・北浅川の河原も、化石を探せる身近な場所の一つです。年中チャンスはありますが、夏には水流の下に隠れている地層も、水位が下がる秋から冬にかけて川底に現れることがあります。
多摩川では約280万〜50万年前に海底にたまった地層が見られ、とくに約140万年前の浅い海の層からは海の貝の化石が多く見つかります。
貝の姿がきれいに出てくると「本当に化石?」と迷いますが、淡水ではなく海にすむ貝の種類であれば化石に違いありません。さらに、過去には哺乳類ステラーカイギュウの最古級の化石が見つかったことも。
秋川が流れる五日市周辺は約1500万年前の地層が分布し、植物や貝、ウニなどや、さらに哺乳類であるパレオパラドキシアの化石も産出されています。川遊びやバーベキューのイメージが強い秋川ですが、河原で石とにらめっこという楽しみ方も。
北浅川には230万年前のメタセコイアの化石林が残り、今も河原に露出した株の化石を観察できます。なお、これらの化石は採取しないよう、八王子市により案内されているため、その場でじっくり観察するだけにしましょう。
河原での化石採取には、管理者や所有者(国土交通省や東京都)への確認が必要です。アクセスしやすいルートや化石を見つけやすい場所を教えてもらうためにも、博物館の行事や地元の自然ガイドの同行で体験するのが安心でしょう。
参照:
多摩川で大海牛の全身骨格化石を掘る -世界最古のステラーダイカイギュウの発掘調査- | 国立科学博物館
生きている植物化石 メタセコイア|八王子市
知って守ろうあきる野の自然|あきる野市
リーブノートレイスで楽しむ化石体験

化石体験は、自然の遺産を未来へ残すという視点をもってこそ、親子のエシカルなアウトドアになります。化石を含む地層や岩などは一見頑丈に見えても、実はとても脆いことがあります。
次に訪れる人も同じ景色と学びを得られるよう、必要以上に削ったり持ち帰ったりせず、観察を基本にしましょう。国立公園や保護地区では、土石の採取が法律で禁じられている場合もあるので注意が必要です。
ゴミになるものはなるべく持ち込まない、見つけた場所を荒らさないなど、Leave No Trace(リーブノートレイス)の原則も意識したいところ。化石は限りある自然の記録であることを、子どもにも伝えましょう。
参考:
LNT7原則 | LNTJ-Leave No Trace Japan
ライター
曽我部倫子
東京都在住。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、小さなお子さんや保護者を対象に、自然に直接触れる体験を提供している。
子ども × 環境教育の活動経歴は20年ほど。谷津田の保全に関わり、生きもの探しが大好き。また、Webライターとして環境問題やSDGs、GXなどをテーマに執筆している。三姉妹の母。